映画『ブリッジ・オブ・スパイ(原題: Bridge of Spies)』

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、ジョエル&イーサン・コーエン脚本と、いずれもアカデミー賞受賞歴のあるハリウッド最高峰の才能が結集し、1950~60年代の米ソ冷戦下で起こった、ソ連によるアメリカ偵察機撃墜事件“U-2撃墜事件”の舞台裏を描いたサスペンスドラマ大作。

一介の弁護士が挑む実現不可能と思われた作戦で、思いがけないアプローチを試みる姿に意表を突かれる。さすがスピルバーグ監督だねぇ。
ボクはただただ静かだけれどドキドキな物語に身を任せていただけだよ。素晴らしい‼︎ 研ぎ澄まされてるっていうの? 見惚れちゃうっていうの? 良いの観たなあっていう満足感に包まれる。言っちゃえば、捕虜を交換するだけという地味な話なんだよね。でもね、冷戦時代の硬直した雰囲気や緊張感がたっぷりのブルーグレーな画面と、とにかく濃密で濃厚なドラマとサスペンスに142分間一瞬たりとも目が離せなかった。

もうね、冒頭の初老の男が自画像描いてるシーンからすごい。男、鏡の中の男、紙の上の男と、同じ男が3つ映るところに諜報員のなんたるかや諜報員としての忠実さ、真面目さが画面だけで描かれててさ。うまいなあと。しかもこの男を演じるマーク・ライランスが素晴らしい。とにかく素晴らしい。何と言っても素晴らしい。飄々とした中に憂いをにじませててね。徹底的に無駄を削ぎ落とした演技とでも言うの? 逆説的な存在感アピールとでもいうの? 何かしら賞を獲るだろうね。最初からグイッと引き込まれたなあ。
そしてマーク・ライランス演じる諜報員と陰影的に絶妙なバランスのもう一方、弁護士を演じるトム・ハンクス。もう米国の“良心”と言っていいよね(笑)。ものすごい熱演なんだろうけど、いつも通り演技してる感じが全然しないの。この弁護士はきっと本当にこういう人だったんだろうなあと思わせられるんだ。
政治的なショウに過ぎない裁判や捕虜の交換を真面目に遂行する中で諜報員と弁護士という対極にいる2人なんだけれど、国や自身の正義、信念、良心に対する忠実さ(職業倫理も)によって深い部分で信頼という絆で結ばれていくところに胸が熱くなった。熱い想いを持って熱く仕事する2人に少し妬けたけど…。

一方でボクはそこに監督たちの強烈な反戦メッセージを感じたな。カメラワーク、画面の作り方や音の使い方など演出もさすがのスピルバーグの円熟味がこれでもかって。
いつもと少し違うのは音楽がジョン・ウィリアムズではなくトーマス・ニューマンだからか。
音楽が物語にちゃんと寄り添ってて素晴らしいけれど。あとは脚本がコーエン兄弟ってことかしらね。ユーモアやアイロニーも交えつつ、人間描写がすこぶる深い。
長〜い余韻に包まれるラストも感動。自身の信念や職業観なども改めて考えたいと思える、今年最初に観るにふさわしい見応えたっぷりの作品。賞を獲ると思う。

シネフィル編集部 あまぴぃ

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(トム・ハンクス×スピルバーグ監督コメント付き)

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