映画『完全なるチェックメイト(原題: Pawn Sacrifice)』
『マイ・ブラザー』『スパイダーマン』シリーズなどのトビー・マグワイアが実在の天才チェスプレイヤー、故ボビー・フィッシャーを怪演した白熱の心理ドラマ。
米ソ冷戦時代、盤上での代理戦争を死にものぐるいで戦ったアメリカの奇才対ソ連チャンピオンの手に汗握る対戦を活写する。監督は『ラストサムライ』の名匠エドワード・ズウィック、脚本は『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』『イースタン・プロミス』のスティーブン・ナイトが手掛けた。貫録ある世紀のライバルを『ラスト・デイズ・オン・マーズ』などのリーヴ・シュレイバーが熱演。他に『17歳の肖像』などのピーター・サースガードらが共演。
変わり者の奇才の波瀾万丈の人生と緊張感溢れる頭脳戦に手に汗握る。うーん、“天才”っていうのは紙一重なんだなあ。とにかく劇的で破滅的な人生なんだよね…。
トビー・マグワイアの演技が素晴らしい。鬼気迫る熱演というのかしら。特にクライマックスでの米ソ大統領も応援するチェスの世界一決定戦という盤上の代理戦争に臨む極限状態での狂気や神経質な雰囲気の演技は圧巻。
強烈な自負心とものすごい不安がごちゃ混ぜになった視線など狂気の域の心理描写がヒシヒシと伝わってものすごくスリリング。チェスを操っているというよりもチェスの神様(?)か悪魔(?)かに憑依されてるんじゃないかという圧倒的な演技なんだよね。
トビー・マグワイアは精神を病んだ人を演じさせたら抜群に上手だね。画面の質感、うーん、ザラッとしたフィルムっぽい感じもあったりして印象的かな。どんどん狂気を帯びていくのに、音楽はゴキゲンなナンバーというのも面白い。チェスファンには不満かもしれないけれど、棋譜があまり出てこないのも良かったのかなぁ。
ボビー・フィッシャーは晩年に日本にも住んでたこともあるみたいでその謎めいた晩年も気になるんだよね。一方で晩年の米国の対応に痛烈な皮肉が込められてる。チェスがわからなくても115分間全然飽きることなくドキドキの連続。
シネフィル編集部 あまぴぃ