アジアを中心に世界の映画作家の個性あふれる作品を上映する「第16回東京フィルメックス」が2015年11月21日スタートしました。29日まで、東京・有楽町の朝日ホールなどで開催されます。

オープニング作品は『ラブ&ピース』『新宿スワン』など話題作が次ぐ鬼才・園子温監督が、自ら設立したシオンプロダクションの第一作目となるモノクロSF作品『ひそひそ星』。「希望の国」(2012年公開)に引き続き福島で撮影されています。ワールドプレミア上映した第40回トロント映画祭では、優れたアジア映画をたたえるNETPAC賞を受賞しました。

主演のアンドロイド:鈴木洋子-マシンナンバー722を務めるのは園監督の公私にわたるパートナー、そして『みんな!エスパーだよ!』「警視庁捜査一課9係」(テレビ朝日)などにも出演していた神楽坂恵さん。今回はプロデューサーも務めています。

Q&Aのシーン。左から園子温監督、神楽坂恵。

上映後のQ&Aで園子温監督と神楽坂恵さんが思いを語ってくれました。監督は「最近では自分が感覚的な人間だと分かって、あまり理詰めで語らないようにしている。」と言いながら、質問に丁寧に答えていました。

「ひそひそ星」は元々25年前、1990年に書いた台本で、自主映画で製作しようとしたけれども当時は予算がなく断念したそうです。ちなみに代わりに出来たのが、あの「THE ROOM」だったそうです。

さらに「ひそひそ星」で主演のアンドロイド:鈴木洋子-マシンナンバー722(演じるのは神楽坂恵)が淡々と語る様子は1997年の「桂子ですけど」を彷彿させます。「桂子ですけどは」カラーで「ひそひそ星」はモノクロでもあり、スクリーンで見る質感に違いはありますが、リズムや雰囲気は園子温作品そのものです。

絵コンテの数がものすごく多く、引越しの度に運んでいたので、映画が出来上がった時に神楽坂さんは「ああ、こうなったんだ」と感慨深かったそうです。監督自身も25年前の自分を「ああ、あの頃はこう思っていたんだ。」と尊重しながら製作したと話していました。当時のアイデアのままのところもあれば、ロケ地が福島であるなど変更した部分もあるとのことです。

また、この映画では「日常」を撮ろうとしたそうです。「日常」は特殊でもあり、繰り返しで永遠でもある。」そんな思いからか、影絵で表現されるシーンは印象的です。さらに、「今の福島を記録しておこうと思った。どんどんブルドーザーが入って変わってしまう景色を記録しておきたかった。」と話していました。ロケ地の福島県に対する思いは深く、ロケ地で出会った人々に出演してもらったことや、「音」を重要視しているのが、実はベルリン映画祭で見たアレクサンダー・ソクーロフ監督の作品に影響されていることなど、様々なエピソードが語られました。

最後にサプライズで、2016年5月にシネマカリテ(東京)で公開が決まったことが発表されました。
園子温ファンでなくても必見です!

「ひそひそ星」海外版予告編

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