いよいよあと二日!
京都文化博物館フィルムシアターで開催中の、脚本家・依田義賢の世界。
本日10月17日は、『武士道残酷物語』(1963)が上映されます。
南条範夫「残虐の系譜」が原作で、依田義賢と鈴木尚之が共同で脚本化されたものです。

島津香蘭@シネフィル編集部


七代それぞれに特徴ある時代であるが、その時代的同一性を何気なくストーリーに織り込むところに手練れの余裕を感じさせる。
関ヶ原の合戦以降、現代まで飯倉家七代にわたる数奇で残酷な運命を描く中で、封建的日本社会の歪みと、そんな中で培われてきた日本人の精神性を浮き彫りにする。

京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

‪#‎ミニシアター‬ http://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/

『武士道残酷物語』
1963(昭和38)年東映京都作品/123分・カラー
(C)京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

http://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/

『武士道残酷物語』
1963(昭和38)年東映京都作品/123分・カラー


製作:大川博 企画:辻野公晴、小川貴也、本田延三郎 原作:南條範夫(別冊文芸春秋所載「残虐の系譜」より 講談社刊) 監督:今井正 脚本:鈴木尚之、依田義賢 撮影:坪井誠 照明:和多田弘 美術:川島泰三 助監督:山下耕作

『武士道残酷物語』
1963(昭和38)年東映京都作品/123分・カラー
(C)京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

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『武士道残酷物語』
1963(昭和38)年東映京都作品/123分・カラー


※配役者の後の数字は、各エピソードへの出演を示す
出演:中村錦之助(飯倉次郎左衛門/左治衛門/久太郎/修蔵/進吾/修/進)、丘さとみ(ふじ)5、岸田今日子(萩の方)3、渡辺美佐子(やす)2、三田佳子(人見杏子)7、佐藤慶(近藤三郎兵衛)4、河原崎長一郎(村の若者)4、沢村精四郎(七三郎)3、山本圭(野田数馬)4、織田政雄(下僕・吾平)2、加藤嘉(堀高啓)5、西村晃(山岡)7、江原真二郎(紫式部少輔安高)4、東野英治郎(堀式部少輔)1・2、柳永二郎(静田権之進)4、木村功(井口広太郎)5、森雅之(堀丹波守宗昌)3、有馬稲子(飯倉まき)3 


日東建設の営業部員・飯倉進は婚約者・杏子が自殺を計ったと知らされ、眠っていた記憶が甦る。
それは、故郷の菩提寺で見つけた先祖の日誌に綴られた、世にも残酷な話であった。


1.【飯倉次郎左衛門の章】関ケ原の戦いの後、飯倉次郎左衛門は、小大名堀式部少輔に拾われた。寛永十五年、主君と共に島原の役に服した彼は、式部少輔の罪を被り・・・。


2.【飯倉佐治衛門の章】乱後三年、近習に取立てられた佐治衛門は病床の式部少輔に真心を込めて仕えたが、勘気に触れて閉門を命ぜられる。佐治衛門は、ほどなくして亡くなった式部少輔の後を追い・・・。

3.【飯倉久太郎の章】元禄時代、江戸遊学中の佐治衛門の孫・久太郎は、時の藩主丹波守宗昌の目に留まり、お手付小姓となったが側室の萩の方との仲を疑われ・・・。

4.【飯倉修蔵の章】 天明期、飯倉家当主・修蔵は奉納試合で秘剣「闇の太刀」を披露し藩主に褒美をもらう。娘と野田数馬の祝言も決まって幸福の絶頂期にあったが・・・。

5.【飯倉進吾の章】 明治時代、飯倉家当主・進吾は上京し、精神に異常をきたした藩主・高啓の世話をしていた。ある日、高啓は進吾の恋人ふじの身体を奪った・・・。

6.【飯倉修の章】 ふじの産んだ子、すなわち進の父である多津夫は満州事変で戦死し、進の兄・修も・・・。

7.【飯倉進の章】 時は現代、進が上司の山岡に杏子との仲人を頼むと、入札に際して、ライバル会社・飛鳥建設の情報を盗むよう言い渡された・・・。

(C)京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

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『武士道残酷物語』
1963(昭和38)年東映京都作品/123分・カラー


南条範夫が文芸春秋に発表した「残虐の系譜」を原作に、依田義賢と鈴木尚之が共同で脚本化。
七代それぞれに特徴ある時代であるが、その時代的同一性を何気なくストーリーに織り込むところに手練れの余裕を感じさせる。
監督は今井正、それまで人間性の豊かな部分を基調に情感的ディテールを緻密に描いた作品が多かったが、本作は、封建社会の歪みが引き起こす極限的状況、その非人間的運命を時代ごとに、たたみかけるように描き、今井作品の中でも異彩を放つ。

先祖のようには生きまいと思いながらも結局無惨な歴史を繰り返す飯倉家七代の悲劇を通じ、封建的日本社会の歪みと、そんな中で培われてきた日本人の精神性を浮き彫りにする。

関ヶ原の合戦以降、現代まで飯倉家七代にわたる数奇で残酷な運命を描いた作品で、七代の当主を中村錦之助がひとりで演じ、また実の妻の有馬稲子が四代目当主の妻役で出演している。
(キネマ旬報賞第5位作品)

(C)京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

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依田義賢氏スナップ(場所:大映京都撮影所)(C)京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

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 京都木屋町で生まれ、京都を拠点にして活躍し、140作品以上のシナリオを手がけた依田義賢(1909~1991)。『浪華悲歌』以来、20年近くに渡って溝口健二作品の脚本を担当し、その全盛期を支えた。

「溝口あっての依田」とされる一方、「依田あっての溝口」とも評価される。

一方、伊藤大輔、内田吐夢、今井正ら巨匠の作品から娯楽映画や左翼系映画にまで幅広く最高品質の脚本を提供している。
今回の特集では、映像学会関西支部での依田義賢回顧特集にあわせ、溝口以前からその後まで、幅広いジャンルで上質な脚本を練り上げた依田義賢の実績をふりかえる。

京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive

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10月14日(水)13:30~・18:30
16日(金)13:30~・18:30~
『恋や恋なすな恋』
1962年東映京都作品(モノクロ・109分)/監督:内田吐夢/
出演:大川橋蔵、瑳峨三智子、宇佐美淳也


10月15日(木)13:30~・18:30
17日(土)13:30~・17:00~
武士道残酷物語
『武士道残酷物語』
1963年東映京都作品(カラー・123分)/監督:今井正/
出演:中村錦之助、東野英治郎、森雅之、有馬稲子


10月18日(日)17:00〜のみ
ある映画監督の生涯
『ある映画監督の生涯』
1975年近代映画協会作品(カラー・150分)/監督:新藤兼人/
出演:伊藤大輔、田中絹代、依田義賢



京都文化博物館 映像情報室 The Museum of Kyoto, Kyoto Film Archive