映画『フリーダ・カーロの遺品 - 石内都、織るように』


近代メキシコを代表するシュルレアリスム女性画家フリーダ・カーロの遺品の数々を、日本人としては3人目となるハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど世界的に活躍する写真家・石内都が撮影する過程を収めたドキュメンタリ作品。

フリーダ・カーロの死から58年の時を経た2012年、彼女の遺品がようやく封印を解かれた。
メキシコ人のキュレーターの発案によりカーロの遺品を撮影するプロジェクトが立ち上がり、石内が撮影の依頼を受ける。
メキシコシティにあるフリーダ・カーロ博物館を訪れた石内の前に並べられたのは、カーロのアイデンティティを支えた伝統衣装やアクセサリー、17歳の時に瀕死の重傷を負ったバス事故の後遺症からの身体の痛みを想起させるコルセットや医薬品など膨大な数の遺品だった。

カーロの記憶をも内包するそれらの遺品を石内が写真として切り取っていく。
監督は『ドキュメンタリ映画 100万回生きたねこ』の小谷忠典。写真家と画家という2人のアーティストの魂が時空を超えて結び付く瞬間に息をのむ。実に美しく、素晴らしい作品だ。

“生”と“死”が繋がってるんだなあということを感じた。
カーロがいつも着ていた美しい民族衣装を撮影するのではなく、小児麻痺の身体を支えたコルセットや左右の脚の長さに合わせられた靴、モルヒネの小瓶などを撮影していくんだけれど、様々なエピソードを聴いていくにつれて、写真の質感が明らかに変わっていくのには驚いた。
そしてそのシャッター音の向こう側、カーロの人生を通して、メキシコの刺繍、死者の日などのメキシコの伝統行事、メキシコ人の精神などが見えてくる。

写真を撮ることがまさに死者や歴史と対話しているかのようだ。
この辺が監督の狙いなのかな。素晴らしいドキュメンタリだと思う。
“死”についてゆっくり考えたことなんてないけれど、“生”からの解放や魂の安らぎといった考え方も垣間見え、メキシコの人々にとって死が遠い存在ではない、死は無になることではないということがよくわかった。
写真家・石内都の“仕事”をきっちりと映像化した素晴らしい作品。

シネフィル編集部 あまぴぃ

『フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように』予告編

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