2015年6月24日にスタートした本展覧会は、昭和から平成に元号が変わり、手塚治虫が亡くなった1989年以降に制作されたマンガ、アニメ、ゲームの三分野を横断的に捉えて、その相互関係を明らかにするようなものとなっています。

1989年以降の約25年間に、日本のマンガ、アニメ、ゲームの世界が文化としてどう展開してきたのか、三者を一体にして扱うというのは、あまり前例のない興味深い企画です。
また、海外に現代日本文化を宣伝する素晴らしい媒体となっています。平安時代の「鳥獣人物戯画」もマンガと理解するなら、新しくもあり歴史もある文化です。

展覧会キービジュアル イラスト アラキマリ

展覧会と同時に「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989」という書籍出版も企画され、この展覧会スタートとともに手に取ることが出来ます。これがまた、展覧会以上の作品数を扱う貴重な資料集となっています。本展示ではアニメやゲームといった動画資料が多いので、本当のところはDVDなども同封されていると嬉しいところです。

国立新美術館のWebから、130点に上る全作品のリストがダウンロード出来ます。

「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989」表紙 ©cinefil.asia 

展覧会全体はマンガ、アニメ、ゲーム作品について作品と作品の関連性、同時代の社会やテクノロジーと作品との関係を外観するために、8つの章で構成されています。
会場構成は、各作品の個性を損なわないよう、そして全体感も阻害しないよう素直に計画されています。動画が多いので、見入ってしまう作品も少なくないです。また原画も多くあり、作者の息づかいが伝わる貴重な時間を体験できます。

[ 第1章 現代のヒーロー&ヒロイン ] は展覧会のプロローグとして、1989年以降に誕生したヒーロー&ヒロイン達を紹介しながら「王道」の作品群を密度高く見せています。
16本の三角柱に1作品づつ映像と解説があり、[NARUTO-ナルト]や[美少女戦士セーラームーン]などを見つけた鑑賞者からは、「あ〜っ」とか「お〜っ」という歓声が上がっていました。
下記写真右手の[スーパーマリオブラザーズ30周年]の年表では、進化の過程も確かめられます。

第1章、左手16本の三角柱と、右手の[スーパーマリオブラザーズ30周年]の年表 ©cinefil.asia

様々なヒロイン・ヒーローが待っている第1章。左手奥の赤い衣装をまとった像は、第2章[イノセンス]に登場する“ハダリ” ©cinefil.asia 

[ 第2章 テクノロジーが描く「リアリティー」―作品世界と視覚表現 ] では、IT技術やインターネットの広がりにより、私達のコミュニケーションの形が変化し始めたこと、またデジタル映像技術の進歩が、新たな表現の可能性を提示したことを伝えてくれます。
仮想現実や拡張現実、ロボットやアンドロイドといった、テクノロジーとネットワーク社会を背景とした作品群が紹介されます。

ここのトップバッターはやはり[GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊]です。原作漫画は1989年初出です。押井守監督により劇場版アニメ化されたのが1995年で、つい先日、6作品目の「攻殻機動隊 新劇場版」が封切りになりました。

後半に、アニメ化がエポックメイキングな[青の6号]と[APPLESEED]が並んでいるのは、嬉しいです。展示されている絵コンテと映像の内容が、合っていように見えています。

ちなみに、マンガ・アニメ・ゲームに関して商業的に、またサブカルチャーを理解する上で重要なエロ・グロな要素はほとんど排除されています。これらについては、いずれ別の展示が企画されることを期待します。[イノセンス]のところにガイノイド(女性型アンドロイド)の“ハダリ”が展示されているのが、何かを暗示しているのでしょうか。

第2章、左手は[APPLESEED]、右手は[青の6号] ©cinefil.asia

第4章[太鼓の達人]コーナー ©cinefil.asia

[第3章 ネット社会が生み出したもの] では、作品の共有性から作品を紹介していて、[ひぐらしのなく頃に]などの同人ゲームを体験することも出来ます。

[第4章 出会う、集まる―「場」としてのゲーム] では「コミュニケーションの場」としてのゲーム作品を紹介しています。多数のゲームが実際にプレイ出来る体験型の展示にもなっていて、[太鼓の達人]は2人でもプレイ出来るため、人気でした。

[第5章 キャラクターが生きる=「世界」] では、[初音ミク]に代表されるキャラクター達が生きる「世界」を表現する作品が展示されています。

第5章、左手に[初音ミク]、右手は[THE IDOLM@STER] ©cinefil.asia

第5章、左手に[けいおん!]、右手に[艦隊これくしょん-艦これ-] ©cinefil.asia

[第6章 交差する「日常」と「非日常」] では、物語の中の非日常性と共に描かれている日常的な生活や風景が、見る者と作品世界との距離を縮め、ある種のリアリティーを与える様子を見せています。また、日常的な描写の中に織り込まれた非日常性が、私たちの現実世界と物語世界の一体性を問うてきます。最初に目に入る作品は[新世紀エヴァンゲリオン]で、TVアニメ全26話を26台のモニターで同時に映す、という大きな壁が鑑賞者を囲みます。
この作品は「第3次アニメ革命」とも呼ばれ、またコンテンツ業界では原作を小説、漫画、アニメ、ゲーム、音楽、映画、キャラクターグッズなど多数のメディアと組合せて展開する「メディアミックアス」の潮流を確立した一つでもあるといえるでしょう。

第6章、左手に[涼宮ハルヒの憂鬱]、右手に[新世紀エヴァンゲリオン] ©cinefil.asia

一番作品数の多い第7章(ここに見えるのが半分弱)。41作品が並びます ©cinefil.asia

[第7章 現実とのリンク] では、現実の社会から強く影響を受けた作品を取り上げています。特に何回か経験した震災に、マンガは素早く反応していました。

[ 第8章 作り手の「手業」 ] では、視覚・映像表現の妙を伝える作品を紹介しています。単なるITや映像技術の進化が漫画やアニメ、ゲームの魅力を強めて来たのではなく、「作り手」のこだわりや思い、技が込められていることを重視して、作品を紹介します。

[「板野一郎と「マクロスプラス」]では「板野サーカス」が、動画と静止画の両方で楽しめます。なんと、5秒間のカットに119コマ費やした壮絶なミサイル発射シーンです。

左手[奥浩哉と[GANTZ」]、右手[板野一郎と「マクロスプラス」] ©cinefil.asia

2015年9月19日(土)-11月23日(月・祝)には兵庫県立美術館、その後、ミャンマー国立博物館、香港文化博物館での巡回が予定されています。また、出来ればドイツやフランスなどヨーロッパも巡り、2020年の東京オリンピックに合わせて凱旋展を開催して、スポーツだけでなく文化もアピールする機会としたい、と青木保国立新美術館長が話されていました。

館内にある4つのレストラン&カフェでは、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展の開催を記念して、特別メニューを用意しています。
こちらも、ぜひ。-cinefil art review

齋藤繁一@シネフィル編集部

会期
2015年6月24日(水)~8月31日(月)
毎週火曜日休館

開館時間
10:00~18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)

会場
国立新美術館 企画展示室1E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

主催
国立新美術館

企画
メディア・アート国際化推進委員会(国立新美術館、兵庫県立美術館、CG-ARTS協会)

※本展覧会の計画は文化庁「平成26年地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」の補助金により実施されました。

巡回情報
2015年9月19日(土)~11月23日(月・祝)  兵庫県立美術館

お問合せ
ハローダイヤル 03-5777-8600

http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/magj/index.html