野島孝一の試写室ぶうらぶら シネフィル版 第6回:シネフィル新連載

第6回
「ターナー 光に愛を求めて」
「モンキーマジック 孫悟空誕生」「ストレイヤーズ クロニクル」「Zアイランド」「愛の小さな歴史」「鏡の中の笑顔たち」

「ターナー 光に愛を求めて」イギリスのマイク・リー監督作

「ターナー 光に愛を求めて」は、カンヌ国際映画祭でティモシー・スポールが主演男優賞のほか芸術貢献賞も受賞した。
イギリスのマイク・リー監督作。実在した画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)の伝記映画。

映画『ターナー、光に愛を求めて』予告編

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ゴッホ、モジリアニ、フェルメール、北斎など画家の映画は多い。強烈な個性の芸術家たちだ。

ターナーは、彼らほどのすさまじい生き方をしたわけではない。
しかし結婚をせず、女たちは家政婦、未亡人など手近ですませた形跡がある。
そんな苦虫をかみつぶしたような画家の生涯を、ティモシー・スポールが味わい深く演じている。

若い娼婦を買い、泣きながらデッサンをするへんなおっさんだ。
彼は海と船の絵を好んで描いた。

名画「戦艦テメレール号」「奴隷船」などを描いたエピソードが出てくる。
嵐の日に自分の体を船の帆柱に縛り付けたなどの奇人であったが、大金で絵を買う話を断ったりしている。
やはり、映画にするに足りる逸材だったのだろう。

アルバトロス、セテラ配給。6月20日からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開中。

「モンキーマジック 孫悟空誕生」ソイ・チョン監督、中国=香港映画

「モンキーマジック 孫悟空誕生」はソイ・チョン監督の中国=香港映画。
おなじみ孫悟空が三蔵法師に付いて聖域に向かう前の話だ。

「イップ・マン葉問」などの大スター、ドニー・イエンが孫悟空、チョウ・ユンファが玉帝、アーロン・クォックが牛魔王という豪華版。

【映画 予告編】モンキー・マジック 孫悟空誕生

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ドニー・イエンが5時間かけてメークした孫悟空の表情が生き生きしている。
特撮のスケール感もあり、子供から大人まで西遊記のファンを満足させてくれよう。

ツイン配給。5月16日シネマート六本木ほか全国順次公開中。

「ストレイヤーズ クロニクル」瀬々敬久監督

「ストレイヤーズ クロニクル」は瀬々敬久監督による日本映画。
原作は本多孝好の小説。1990年代、秘密機関によって進化した特殊能力を持つ子供たちが計画的に作られた。その子たちは成長したが、若くして死ぬ運命にあった。

映画『ストレイヤーズ・クロニクル』予告編

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3秒先の動きが見える昴(岡田将生)、耳が聞こえる能力が高い沙耶(成海璃子)、腕力の強い亘(白石隼也)、記憶力抜群の良介(清水尋也)、瞬間移動できる隆三(瀬戸利樹)らだ。
彼らは大物政治家(伊原剛志)に使われている。一方、同じように特殊能力を持って生み出された<アゲハ>と呼ばれるグループがあり、両者は対決に追い込まれる。

<アゲハ>は染谷将太、松岡茉優、高月彩良、黒島結菜など。
超能力者同士の対決が何度も組まれており、VFXを駆使した素早い動きが楽しめる。

動きの速さは「るろうに剣心」に匹敵する。
岡田将生が一段と成長を見せ、染谷将太のキャラクターも独自の個性。
「ヘヴンズストーリー」の瀬々敬久監督らしく、深みがある作品だ。

ワーナー・ブラザース配給。6月27日新宿ピカデリーほか、全国順次公開中。

映画『ストレイヤーズ・クロニクル』本予告【HD】2015年6月27日公開

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Zアイランド」品川ヒロシ監督

「Zアイランド」は品川ヒロシ監督らしい、笑いと才気あふれる作品だ。
すっかり手あかがついた感じのゾンビ映画だが、品川監督は逆に笑い飛ばして見せてくれる。

まるでタランティーノ監督の作品のように、見せ場が次々に現れる。
哀川翔の30本記念映画で、哀川は元やくざ。
足を洗って堅気になったが、元子分の鶴見辰吾が出所してきたのに、その娘が家出した。

家出先は孤島。その島ではやくざの宮川大輔が怪しげな薬を売りつけたため、島民がゾンビ化してしまった、かつて哀川翔の組と敵対していた木村祐一らのグループも、薬を取り戻すために島へ。
ゾンビ島民との死闘が始まる。

品川ヒロシらしいスピーディーな展開。
とくに、風間俊介のへぼ医者や、窪塚洋介の警官などが爆笑をさそう。
タランティーノが見たら喜ぶと思う。

KADOKAWA配給。5月16日から、全国順次公開中。

「愛の小さな歴史」中川龍太郎監督・脚本・原作

「愛の小さな歴史」は中川龍太郎監督・脚本・原作。
昨年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュで上映された。

夏希(中村映莉子)は弁当の配達をしている。
ある日、青年(池松壮亮)に父(光石研)のことを知らされる。
夏希にとって父は自分たちを捨てた憎い男だった。

一方、借金の取り立てをしている夏生(沖渡崇史)は、覚せい剤漬けになった妹(高橋愛実)のもとに強引に押しかけ、面倒をみる。

憎しみ合うが、絆が断ち切れない親子、兄妹の縁がテーマの映画。
一応観られる作品ではあるが、どうもギクシャクしている。
監督が若いからなのか。

Tokyo New Cinema配給。5月9日ユーロスペースほか全国順次公開中。

「鏡の中の笑顔たち」

「鏡の中の笑顔たち」は美容師の世界を扱った作品。

札幌でコンクール入賞を果たし、意気揚々と東京でカリスマ美容師となった井上遼(白石隼也)。
タレント女性のご機嫌を損ね、クビになってしまう。

札幌に戻り、臨時の仕事を引き受けるうちに、訪問美容の重要さに目覚めていく。

喜多一郎監督。ミッキー・カーチス、松原智恵子、松下奈緒など、ベテランが共演しているだけに、落ち着いて観ていられる。

ピーズ・インターナショナル配給。5月30日より、全国順次公開中。

野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。

野島孝一@シネフィル編集部

アニープラネットWEBサイト
http://www.annieplanet.co.jp/