映画『グローリー 明日への行進(原題: Selma)』
アメリカ公民権運動が盛り上がりを見せる中、アラバマ州セルマで起きた血の日曜日事件を題材に描いた歴史ドラマであり感動作。
ノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キング・Jr.のリーダーシップでデモに集まった人々が警官の投入によって鎮圧されたのをきっかけに世論が大きく動いていく様を描く。
俳優のブラッド・ピットや人気トーク番組で有名なオプラ・ウィンフリーらが製作を担当。
主人公となるキング牧師を演じたデビッド・オイェロウォ他、トム・ウィルキンソン、ティム・ ロス、キューバ・グッディング・Jr.らが共演。
監督はインディーズの新進気鋭の黒人女性エヴァ・デュヴァネイだ。主題歌「Glory」が第87回(2015年)アカデミー賞で主題歌賞を受賞。
史実を基に描かれる、激動の近代史に心動かされる。
ドキュメンタリかよっ!!とツッコミたくなるほどのザラザラした映像や演出が迫真に満ちている。
エンタメ色が極力排除されてるというか…それがかえって良いんだけどさ。
「I have a dream」の演説は有名だけれど、その生涯がこれまで映画化されてなかったことが不思議…。オバマ就任以来この人種差別問題という黒歴史に斬り込む作品が増えたよね。良いゾ、アメリカ!!
キング牧師を聖人化せず、欠点や悩みなど人間的な脆さを抱えながらも闘志を持つ1人の人間として描いてるところが何よりも素晴らしい。
キング牧師を演じたデビッド・オイェロウォは体型や髪型で独特の風貌を再現して見事だね。脇を固める役者たちの演技も存在感も忘れられない。ロバート・デ・ニーロがオーディションに落ちていたことも興味深いよね…。
128分間と若干長めながらも、ありきたりな伝記物と違って、1963年の教会爆破事件から1965年の投票権法成立までに限定して、丁寧に複数のエピソードを重ねながら、当時の社会やキング牧師の苦悩や葛藤などを浮き彫りにしていく構成や演出も見事で、だからこそ演説とその言葉のリアリティが圧倒的に心に響いてくるんだ。
もう神懸かり的だよ。陰影のはっきりした撮影や画面作りも素晴らしい。
ラスト、主題歌「Glory」の重みがしみじみと…。静かだけれど骨太な作品。
シネフィル編集部 あまぴぃ
そして、この曲!!!
監督:エヴァ・デュヴァネイ
主題歌:「Glory」コモン&ジョン・レジェンド
出演:デヴィッド・オイェロウォ『大統領の執事の涙』/トム・ウィルキンソン『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』/
ティム・ロス『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』/オプラ・ウィンフリー『大統領の執事の涙』