「北島博士のおもしろ映画講座」がスタートします!
この、連載は映画にかかわる一寸したトリビアや
コメントを付け加えつつ、ご紹介していこうと思ってます。

第1回『レフト・ビハインド』

© LEFT BEHIND INVESTMENTS

 「レフト・ビハインド」は、ティム・ラヘイの原案を元にジェリー・B・ジェンキンスが小説化したものを映画化したもの。レフト・ビハインドとは、あとに残されたといった意味だが、ここでは「ヨハネの黙示録」の予言が実現し、信仰深い人々が突然姿を消し、信仰に乏しい人たちが残され、これからの人生をいかにすごすかということが主題になっている。

 原著は1995年に出版されて話題を呼び、以後、シリーズ化されて、反キリスト者の陰謀とそれに対抗する組織との対立を織り込んで、現在までに16冊(他にキッズ・シリーズ、ミリタリー・シリーズもある)、トータルで6300万部という驚異的な売り上げを誇っている(キリスト教関係フィクションでは第一位とか)。ゲーム、グラフィック・ノベル、オーディオブックと多角的なメディア展開をはかり、日本ではいのちのことば社から翻訳出版している。

© LEFT BEHIND INVESTMENTS

 突然、人が消え、後には衣服が残されているだけ。理由、原因がわからず、残された人々はパニック状態となり、とまどい、悲しむ。世界規模の疫病、災害、文明の崩壊がすすみ、新たな社会体制が生まれていく。ストーリーはパイロットとその娘、ジャーナリスト、牧師なのにあとに残された人物、反キリストの正体を隠した政治家たちを中心に展開していく。

 原作に関してはここまでとして、肝心の映画版について紹介しよう。ニューヨーク発ロンドン行き航空機が高度3万フィートを飛行中に乗員乗客が消えてしまい、地上でも世界規模で同じようなことがおきていた。無線連絡も途絶えているので、情報が入らず、機内はパニック状態になる。妻が信仰に目覚めて以来溝ができて、CAとの浮気に踏み切ろうとしているパイロット、暴力夫から逃れている母子、ギャンブラー、UFOおたく、敏腕ジャーナリスト……、そして地上ではパイロットの娘の行動を中心に描かれ、最後はトラブルを抱えた飛行機が無事に地上に戻れるかというハラハラドキドキ場面で締めくくっている。

 

© LEFT BEHIND INVESTMENTS

SF的設定に航空サスペンス要素と信仰を織り込んだ構成になっていて、娯楽映画のつぼを心得たつくりになっている。監督はヴィク・アームストロング もともとはアクション演出専門で「ボンド映画」シリーズ、「スパイダーマン」「インディ・ジョーンズ迷宮の伝説」などを手がけ、ドルフ・ラングレン主演の1992年作「バニシング・レッド」で本編の監督に昇格。今回はアクションよりも人間ドラマに重点を置いている。

 パイロット役は芸術映画からアクションまで幅広いジャンルをこなし、ヒーローを演じるかと思えば、極悪人も得意としているニコラス・ケイジ。妻役は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロレイン役で知られるリー・トンプソン。全米では昨年の10月に公開されている。

© LEFT BEHIND INVESTMENTS

 製作したクラウド・テンは、1990年代なかばから宗教啓蒙映画の製作・配給を専門に手がけている会社だ。実は「レフト・ビハインド」を映画化したのはこれが初めてではなく、2000年に「人間消失」としてビデオ化されている。最初にビデオで公開して口コミで話題を盛り上げて数ヵ月後に劇場公開された。アメリカではビデオ・DVDで300万を売り上げ、"インディ作品ベスト・セリング作品"に認定された。2002年に「人間消失 トリビュレーション・フォース」、2005年に「人間消失 ファイナル・ウォー」と三部作が日米ともにビデオ/DVDで公開されている。クラウド・テンのような特定の観客層だけを狙った会社でもビジネスとして成立するというところが、キリスト教信者の多いアメリカらしい。

6月27日より新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給 クロック ワークス

6/27(土)公開 映画『レフト・ビハインド』予告篇

youtu.be

【キャスト】
ニコラス・ケイジ、チャド・マイケル・マーレイ、キャシー・トムソン

【スタッフ】
監督:ヴィク・アームストロング
原作:ティム・ラヘイ/ジェリー・ジェンキンズ著「­レフトビハインド」
(いのちのことば社フォレストブックス刊)

北島明弘

長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。
大好きなSF、ミステリー関係の映画について、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。