映画『ソロモンの偽証 後篇・裁判』

直木賞他多数の文学賞を受賞するベストセラー作家の宮部みゆきが「小説新潮」で9年間にわたり連載したミステリー巨編「ソロモンの偽証」を『八日目の蝉』『孤高のメス』などの成島出監督が映画化した2部作の後編。
男子生徒の転落死により動揺が広がる中学校内で、生徒たちが自主的に行う校内裁判の様子を臨場感たっぷりに映し出す。

前編同様成島出監督がメガホンを取り、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華といった実力派キャストが集結。
物語の中心となる12人をはじめとした中学生キャストは1万人の応募があったオーディションで選出。藤野涼子役の新人女優・藤野涼子は本作での役名をそのまま芸名に女優デビューを飾った。

裁判によって明らかになるショッキングな真相に言葉を失う。
うーん、中学2年(14歳)という多感で半端な年代を繊細に力強く描いていて、彼ら中学生が行う裁判の青臭さというか、未熟さが魅力なんだろうな。
腐ったミカンの方程式的なオトナたちの論理とは対照的に中学生らしい感受性と正義感、純粋な心で真実を求め続け、それを乗り越えて生きていこうとする姿が眩しい。
この頃にしかない、考え方や話し方、物事との向き合い方など観ているだけでなんか気持ち良かったよ。

前篇は謎が謎を呼んで緊張感たっぷりだったが、後篇は謎解き、種明かしということと人の心を描いてて別の緊張感に包まれた。でもボクの集中力が続かなかったり(?)、伏線が種明かしになってたり、心理描写が浅く唐突に感じることもあったり、モヤモヤすることもチラホラ…。台詞ばかりの裁判シーンがメインだけれど、台詞がすごく生きていて、子供たちひとりひとりが抱える闇やそれぞれの罪などが明らかになっていく展開にグイグイ引き込まれた。いろいろと原作とは違うが良くできていると思う。

鏡越しの会話や背中との会話など目線や目力を引き出す撮影・演出は良かった。長回しの多用も効果的で、制作者たちの想いは良く出ていたような。
そして何といっても藤野涼子の圧倒的な存在感。
表情から気持ちが読み取れない(る?)ギリギリの感じというか…凛とした感じが素晴らしい。事件(?)裁判を通して子供たちの顔付きが変化して成長していくのも面白い。みんな礼儀正しいしね。子供たち全員に拍手。
エンディングのU2『With or Without You』はどうなのかしら? 本編前に「前編のあらすじ」があって親切だと思ったけど、そのあとに「映画泥棒」が入る演出(?)には驚いた…(笑)

シネフィル編集部 あまぴぃ

ソロモンの偽証 予告篇 第二弾

youtu.be

作品名:「ソロモンの偽証」
原作:宮部みゆき(新潮文庫刊)
監督:成島出
出演:
藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈 清水尋也 富田望生 前田航基 望月歩
佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美 黒木華 田畑智子 松重豊 小日向文世 尾野真千子
配給:松竹
公式HP: http://solomon-movie.jp