終演後、監督へ独占インタビュー!

シャウル・シュワルツ監督 イベントの様子

メキシコ麻薬戦争に焦点を当てたドキュメンタリー映画『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』シャウル・シュワルツ監督来日記念ティーチインが4日、渋谷区の青山学院アスタジオで行われた。シャウル・シュワルツ監督はケニア暴動の報道写真でアメリカ海外記者クラブによるロバート・キャパ賞を受けた戦場フォト・ジャーナリストである。ゲストにはライター・編集者の速水健朗氏を招いたトークセッションでは学生から直球の質問が投げかけられた。

この映画を鑑賞した学生の印象として「現実のこととは思えない」というものが挙がったことを原点として行われた本トークショーは、シャウル・シュワルツ監督の映画制作の手法やメッセージを浮き彫りにした。また、紙媒体を情報源とすることが少なくなり、インターネット媒体がそれを台頭する中で“ジャーナリズム”の精神とは何かというところに迫った。

本作の舞台は「世界で最も危険な街」とされるメキシコの都市シウダー・フアレス。主人公は地元警察官として殺人事件の現場で証拠品を集める男リチ・ソト、どナルコ・コリードという麻薬ギャングを礼賛する音楽ジャンルに特化した歌手であるエドワード。二人の人間とその周囲の状況について、しっかり描かれている作品だ。

この映画をつくったきっかけについて、シュワルツ監督は実際にナルコ・コリードを聞き、観客の熱狂を観たときに感じた怒りが根幹であるという。「何でそういったことができるのかとショックを受けるだけではなく、映画を通して彼らを理解しようとすることが大事だと思って、この映画を作った。」と語った。


以下、トークショー終演後のインタビューの内容である。

本イベントの感想をお聞かせいただきたいです。

貴重な機会になったと思う。違う国の、学生の意見を聞くことは大変刺激になったし、楽しむことができた。

写真家から映画監督へ転身された中で何かご自身で勉強されたことなど、若手作家への具体的なアドバイスをお願いします。

好奇心と諦めない心をもち、自分なりのアプローチやアングルを探すことを心掛けてほしい。小規模な作品から3億ドルほどの大規模な作品まで、多くの作品を観たが、どれもシンプルであることが重要であると思う。一本目の作品ないし、作品作りの初めから自分のやりたいことが見えるという監督は稀だ。好奇心をもって、簡単に諦めることなく、ドアを閉められても窓から入っていくような気持ちでいることが重要。作り手が興味がないということは簡単に観客にバレてしまうからね。

本作を撮ったことによってシャウル・シュワルツ監督ご自身に何か変化はありましたか。

現在新しい長編映画にとりかかっているんだけど、それがつくりやすい状況になった。実は、一度長編映画において失敗をしているんだ。撮影クルーや出資におけるスケールを大きくしすぎたのが原因だね。監督は空想家であり、堅実家でないといけない。1940年代の車が20台でてきて、それでいて雪景色だなんてシーンは撮れるわけがないだろう。(笑)映画はアートでもあると同時にビジネスであるということを忘れてはいけない。そして、これはどんな映画監督でも最初は同じだったはずなんだ。ただ、こういった失敗も、残念ではあるけれど本作に活かせたとは思うけどね。

これから『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』を観る日本の観客へ伝えたいことはありますか。

遠い日本でメキシコの麻薬戦争についてのストーリーを伝えるのは難しいけれど、観てもらえば僕が主人公二人に対して強い思い入れを持っていることがわかると思う。無力さや悲惨さにショックを受けるだけでなくて、何か自分で考えてみてほしい。それにたるストーリーだと思っている。アメリカとメキシコでは文化は近いが、日本との文化には大きな差があると考えていて、それでも観て評価してくださる方がいれば素晴らしいことであり、とても嬉しいよ。

映画『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』は4月11日よりシアター・イメージフォーラムにて公開。

公式ホームページより引用

ドキュメンタリー映画 『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』 2015年4月11日より全国公開

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(取材・編集 雨無麻友子)