芥川龍之介の全小説を通読してみた
映画『また逢いましょう』とは、直接関係のない話だが、断続的に読み続けていた「芥川龍之介全集」(ちくま文庫)を6巻まで読んだ。ここまでで芥川の小説をすべて読んだことになる。1人の作家の全集を通して読むのは初めてで、それはなかなか面白いことだった。
芥川の場合、明らかに短編作家であり、あっても中編で、長編を書こうとしては挫折したりしている。師匠である夏目漱石の作品を模したような恋愛小説もあるが、失敗して途中でやめてしまっている。ここで芥川龍之介小説ベストテンなるものを考えてみる。
1 地獄変
2 偸盗
3 蜘蛛の糸
4 二つの手紙
5 河童
6 犬と笛
7 桃太郎
8 三つの宝
9 蜜柑
10 歯車
作品個々について触れるのは別の機会に譲ることにするが、気がつかれる方もおられると思うが、われわれが教科書で読んだものが思ったよりも多い。それだけ名作が教科書で選ばれていた訳で、それは悪いことではない。
芥川の小説を書かれた順番に読んでいくと、キリスト教もの、王朝もの、身辺手記ものなど、決まったジャンルものが頻繁に書かれているが、正直なところ玉石混交で、面白いものは少ない。ご存知のように、自死を選んだ作家であるので、最終巻に近づくほど死についての記述が増えていき、読んでいて辛くなる。それでも読むことを止めることがなかったのは、その文体の面白さ、その教養に溢れている深さであろう。
芥川の小説の豊かさに触れて良かったと思う。
西田宣善監督 「また逢いましょう」
製作・監督西田宣善
脚本梶原阿貴
原案伊藤芳宏
音楽鈴木治行
出演 大西礼芳 中島ひろ子 カトウシンスケ 伊藤洋三郎 梅沢昌代 田中要次 田山涼成 筒井真理子ほか