悠久の時を超え、守り継がれてきた「国宝」は、我が国が世界に誇る「日本の美」です。
私たちが教科書でも見た様々な日本美術の名品、荘厳なる仏像彫刻や、日本の四季折々の花鳥風月が描かれた優雅で絢爛豪華なる絵画、超絶技巧を凝らした美術工芸品など、これらは、すべて最初から国宝だったのではなく、何百年あるいは何千年もの時を越えて奇跡的に今に伝わり、国の至宝となったのです。芸術家たちのたゆまぬ努力と情熱の結集です。素晴らしい芸術は私たちに感動をあたえてくれます。そして、これからもこの大切な日本の至宝は、未来に向けて受け継がれていきます。
このたび、大阪・関西万博開催と大阪市立美術館のリニューアルを記念し、2025年4月26日より6月15日まで、「日本国宝展」が開催されます。
1970年以来、大阪で二度目となる万博が開催されることに加え、大阪市立美術館が1936年の開館後、初めて、2年半の大規模改修を経て、リニューアルオープンすることを祝う特別展です。
展覧会では、約 130 件もの国宝が一堂に集まります。また、初めて大阪で開かれる国宝展であることから、大阪ゆかりの国宝もまとめて紹介されています。
生み出された時代を表す鏡でもある美術工芸品、そしてその頂点とも言うべき「国宝」を通して、感動とともに、日本の「美」の歴史をたどりましょう。

国宝『桜図』長谷川久蔵筆 桃山時代・天正20年(1592)頃 京都・智積院蔵
展示期間4月26日~5月11日
桃山時代を代表する絵師・長谷川等伯が『楓図』を、息子の久蔵が、『桜図』を担当しましたが、完成の翌年に久蔵が弱冠26歳で急逝してしまい、悲しくも最後の合作となりました。
華やかな金地に白い桜が映える見事な障壁画ですが、こころなしか儚さも感じられます。
意匠的に表現された無数の八重桜の花弁は、胡粉を分厚く盛り上げ下地を作って表現されています。父等伯の『楓図』は豪快華麗ですが、息子・久蔵の『桜図』は、可憐で初々しさが感じられます。

国宝『楓図』長谷川等伯筆 桃山時代・天正20年(1592)頃 京都・智積院蔵
展示期間5月13日~6月1日
『桜図』、『楓図』の障壁画は天正19年(1591)、豊臣秀吉が、わずか3歳で早世した鶴松のために創建した祥雲寺の内部を飾る障壁画の一部として描かれたものです。長谷川等伯とその一門が任されました。度重なる災禍を掻い潜って現在、智積院の国宝障壁画群として現存しています。

国宝『舟橋蒔絵硯箱』本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 "東京国立博物館蔵
画像提供:東京国立博物館 Image: TNM Image Archives"
展示期間4月26日~5月18日
本阿弥光悦(ほんあみこうえつ1558〜1637)は、安土桃山から江戸時代初期に、書、漆芸、陶芸、刀剣など多方面で活躍した芸術家です。2024年には、東京国立博物館にて特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が開催されました。
本作は素材の制約や常識を超えた大胆なフォルムが特徴です。
俵屋宗達(たわらやそうたつ)と共に、「琳派」と呼ばれる芸術を生み出しました。宗達との共作『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』『色紙貼付桜山吹図屏風』も有名です。

国宝『火焔型土器』縄文時代中期・約5400~4500年前 "新潟・十日町市(十日町市博物館保管)画像提供:十日町市博物館"
通期展示
火焔型土器(かえんがたどき)は、縄文時代中期を代表する土器で、日本各地で作られ、ほとんどが深鉢型。 縄文土器の中でも特に装飾性豊かな土器です。胴部は粘土紐を貼り付けて、S字状、渦巻き状などの模様が施されています。把手は複雑な形状で、粘土紐によって装飾され、把手以外の口縁部は鋸の歯状に形作られています。全体の形状が燃え上がる炎を象ったかのようなので「火焔型」土器と呼ばれています。
煮炊きに使われたと考えられる説もありますが、その形状から見て何らかの祭祀的な目的に使われることがあったという説もあります。

国宝 金印『漢委奴國王』弥生時代・1世紀 "福岡市博物館蔵 画像提供:福岡市博物館"
展示期間4月26日~5月7日

国宝 金印『漢委奴國王』弥生時代・1世紀 "福岡市博物館蔵 画像提供:福岡市博物館"
展示期間4月26日~5月7日
教科書にも載っている金印『漢委奴國王』。今からおよそ2000年前の弥生時代に中国の皇帝から与えられ、江戸時代に現在の福岡市で見つかったとされています。
金印の印面には、「漢」「委奴」「国王」という5文字が三行にわたって刻まれています。「かんのわのなのこくおう」と読みます。つまみのデザインは、蛇がとぐろを巻いて頭を印の中央部へ向ける姿。紐のようなものを通す孔が空いています。
縦、横、高さが約2.3センチという日本最小の国宝です。

国宝『孔雀明王像』平安時代・12世紀 "東京国立博物館蔵 画像提供:東京国立博物館 Image: TNM Image Archives"
展示期間 4月26日~5月18日
正面向きで孔雀の背に乗る異形の仏様が、雲をともない天空より舞い降りています。
これは、様々な災いを除く力があるとされる孔雀明王(くじゃくみょうおう)を描いた作品。明王は怒ることで人々を導くとされる仏様ですが、この孔雀明王は慈しみ、憐れむ慈悲の表情を浮かべています。
現存する孔雀明王像の中でも最高傑作と言われるこの作品は、華やかな彩色で、ハイライトや色のぼかしを巧みに加え、柔らかでふっくらとした印象を生み出しています。
また、金を使った装飾がなされています。衣には金箔を細く切って貼りつける截金(きりかね)という技法で文様が施され、孔雀の羽や蓮の葉脈などは、粉末状にした金を膠(にかわ)で溶いた金泥(きんでい)という絵具で、柔らかく描かれています。
煌びやかで、優美、繊細な平安仏画です。

国宝『伝源頼朝像』鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵
展示期間6月3日~6月15日
「いい国(1192年)、作ろう 源頼朝(みなもとのよりとも)」と暗記した、歴史の教科書に載っていた『伝源頼朝像』。
源頼朝は、鎌倉幕府の初代将軍。圧倒的なリーダーシップで「平家滅亡」を成し遂げ、政治の実権を平安朝廷から奪って武家政権を確立しました。
ほぼ等身大で、厳密に描かれた源頼朝は理想の武人としての彼の内面までも表現された肖像画の傑作です。

国宝『薬師如来坐像』平安時代・9世紀 "大阪・獅子窟寺蔵 撮影:佐々木香輔"
通期展示
大阪府交野市にある獅子窟寺(ししくつじ)は、高野山真言宗の寺院。奈良県の生駒山の山塊の普見山中に位置します。
本尊の薬師如来像は像高90センチあまりの坐像で、カヤの一木造。平安時代前期を代表する仏像です。衣の線が美しく、平安前期彫刻らしい翻波式衣文です。
薬師如来としては、変わった手の形で、右手は手のひらをこちらに向けた施無畏印。左手は手のひらを上に向けて体の前に構え、宝珠を持っています。

国宝『日月四季山水図屏風』右隻 室町時代・15~16世紀 大阪・金剛寺蔵
展示期間5月20日~6月15日

国宝『日月四季山水図屏風』左隻 室町時代・15~16世紀 大阪・金剛寺蔵
展示期間5月20日~6月15日
大阪の天野山(あまのさん)金剛寺が所蔵する、作者不明の重要文化財『日月山水図屏風(じつげつさんすいずびょうぶ)』。
やまと絵で描かれた六曲一双の屏風で四季の山水と日月が描かれ、密教の儀式に用いられたとされます。一隻が縦150センチ弱、横幅は3メートルを超える比較的大きな屏風。
右隻には海に囲まれてこんもりと盛り上がる、春夏の緑の山々が描かれ、山あいには金箔で太陽が表されています。左隻には、秋の山から続く松林の海岸と、遠景に雪山が描かれ、銀箔で月が表現されています。八百万の神が宿る日本の原風景。自然の生命の躍動が聞こえるようです。

国宝『青磁鳳凰耳花生』銘 万声 中国・南宋時代・13世紀
大阪・和泉市久保惣記念美術館蔵
展示期間5月20日~6月15日
鳳凰をかたどった耳が付けられた青磁の瓶で、日本では俗に「鳳凰耳花生」と呼ばれています。青磁釉が何層にも厚く掛けられ「粉青色」を呈しています。
また「砧青磁」とも呼ばれ、鎌倉・室町時代以降、龍泉窯青磁は日本に盛んにもたらされました。鳳凰耳花生には、和泉市久保惣記念美術館所蔵の国宝「万声」と陽明文庫所蔵の重要文化財「千声」が特に有名です。砧を打つ音を詠んだ詩から「万声」と名づけられました。
守り継がれてきた日本美術の名品の数々。伝統にはぐくまれた国宝を通して日本の「美」を再発見していただき、いにしえの芸術作品に眼福のひとときをお過ごしください。

大阪市立美術館 外観
展覧会概要
会期 2025年(令和7年)4月26日(土)~6月15日(日)
開館時間 午前9時30分~午後5時
※土曜日・5月4日・5日は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日
※ただし、4月28日、5月5日は開館
観覧料(税込)一般 2,400円(2,200円) 高大生 1,700円(1,500円)
小中生 500円( 300円)
展覧会公式サイト
お問い合わせ 06-4301-7285
(大阪市総合コールセンター なにわコール/8:00~21:00(年中無休))
展覧会詳細は公式サイトに触れて頂きますとご覧いただけます。
シネフィル展覧会グッズプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展「日本国宝展」@大阪市立美術館 シネフィル展覧会グッズプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5名様に「日本国宝展」でしか買えない記念のコラボグッズ(イラストレーター・中村祐介さんとのコラボ商品をはじめ、豊富にあります)をお送り致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年5月5日 月曜日 24:00
記載内容
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