ピカソやダリとともに、20世紀スペインの3大巨匠として知られるジュアン・ミロ(1893~1983)。太陽や星、月など自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた詩情あふれるファンタジーの世界は、日本でも高い人気を誇ります。 ミロの作品には、潜在意識や「子供のような精神」、故郷への愛着が反映され、明るく楽しげな反面、政治的分断や戦争に対する強い反発や抵抗が感じられます。

没後40年を迎えた今、世界的に再評価が高まり、テート・モダンやパリのグラン・パレ、ニューヨーク近代美術館など、世界の名だたる美術館でミロの回顧展が開かれています。 ミロ作品と次世代の芸術の研究拠点として彼自身がバルセロナに創設したミロ財団も、その遺志を継いで活動を続け、2025年に50周年を迎えます。

このたび、東京都美術館において、ミロ芸術の真髄を体感できる過去最大級の回顧展が、開催されます。ミロの生涯を振り返る大規模展が日本で開催されるのは、画家が存命中、1966年に開催されて以来となります。

本展では、〈星座〉シリーズをはじめ、初期から晩年までの各時代を彩る絵画や陶芸、彫刻により、90歳まで新しい表現へ挑戦し続けたミロの芸術が包括的に紹介されています。 世界中から集った選りすぐりの傑作の数々を是非、ご堪能ください。 それではシネフィルでも展覧会構成に従って作品を観ていきましょう。

第1章 若きミロ:芸術への決意

1893年、バルセロナで生まれたミロは、1910年に会計の仕事に就いたものの病気になり、カタルーニャ州南部のモンロッチで療養した後、画家としての道を歩みはじめます。
1912年から美術学校に通って学びながら、国際的な前衛芸術運動に共鳴し、セザンヌやキュビスム、フォーヴィスム、ダダイズムなどの影響を受けて制作に励みます。

画像1: 第1章 若きミロ:芸術への決意

1918年の夏にモンロッチで自然と親しむことで生まれた細密画的な風景画のひとつです。風景を緻密に描写する作風は1922年頃まで続きますが、その幕開けを告げる重要な節目の作品です。

画像2: 第1章 若きミロ:芸術への決意

赤いシャツはイタリアの統一運動の指揮者が着ていたもののようで、独自の文化を持つカタルーニャの独立を願うミロの願いが込められているようです。
ミロは、フランスに出てすぐにピカソを訪問して親しくなり、ピカソが本作を入手しました。

第2章 モンロッチ – パリ

1920年、ミロは初めてパリを訪れ、翌年にアトリエを構え、シュルレアリスムの画家や詩人たちと交流を持つようになります。以後、ミロはパリとモンロッチを行き来して、故郷カタルーニャの大地の中で、シュルレアリスムに影響を受けた詩的な表現を確立しました。 1925年から「夢の絵画」と呼ばれる作品群を描くなど、シュルレアリスムの画家として名声を得たのです。

画像: 第2章 モンロッチ – パリ

本作はミロが旅行中にオランダ絵画の影響を受け、17世紀オランダの画家ヘンドリック・ソルフの絵画を基にして描いた作品。原作の自然主義的な立体感や遠近法を拒絶し、楽器のリュートと男性の頭部、フリルの襟を強調して描いています。

第3章 逃避と詩情:戦争の時代を背景に

1936年にスペイン内戦が勃発し、ミロはバルセロナからパリへ逃れます。不穏な現実から目を背けるように、ミロの作品は自身の内面を探求するような詩的なものへと変化していきます。1939年に第二次世界大戦が勃発した翌年、ミロは滞在していたフランスの小村ヴァランジュヴィル=シュル=メールで〈星座〉シリーズを描き始めます。

画像1: 第3章 逃避と詩情:戦争の時代を背景に

シュルレアリスムの時代から、詩や文字を画面に描くのがミロの特徴になりました。
本作では、カタツムリ、女、花、墨の4つの単語が書かれています。

画像2: 第3章 逃避と詩情:戦争の時代を背景に

この〈星座〉シリーズは、ミロが戦争という苦しい現実から逃避し、詩や音楽に触発されて制作されたもので、紙に水彩とグアッシュで23点が描かれました。
細い線で描くことで浮遊感が高まっています。

画像3: 第3章 逃避と詩情:戦争の時代を背景に

簡略化された音楽的な線を持つ儚い画面には、夜空に着想を得た神話的な世界と、その中の女性や鳥、星、梯子が描かれます。これらのモティーフは、ミロの絵画の象徴となり、以後の作品で繰り返し登場することになります。

第4章 夢のアトリエ:内省を重ねて新たな創造へ

1947年にミロは初めてアメリカを訪れ、依頼された壁画の制作に取り組みました。そこで旧友たちと再会したほか、アメリカの若い画家とも交流して刺激を受けます。以後、ミロの評価はアメリカでも高まっていきます。

画像: 第4章 夢のアトリエ:内省を重ねて新たな創造へ

1947年ミロは米国のホテルの壁画を制作し、以降大画面の制作に取り組んでいきます。
本作は孫のために描かれた作品ですが、横幅は3メートル近くあります。
シュルレアリスム時代以来の青色の背景や〈星座〉シリーズにも似た細い線や星、怪物的なモティーフが描かれています。抽象表現主義者たちにも影響を与え、20世紀美術の中心的存在となったいきます。

第5章 絵画の本質へ向かって

1960年代には、アメリカの若い芸術家たちに影響を受け、より大画面の作品を制作するようになります。技法的にも伝統的な絵画技法に抗い、バケツや壺から絵の具をこぼす、カンヴァスに火をつける、あるいはナイフで切り取るといった手法を使うようになります。

画像: 第5章 絵画の本質へ向かって

80代とは思えない斬新な作品。完成した絵画のカンヴァスにガソリンを染みこませて火を放った5点のうちのひとつで、絵画を投機の対象とする価値観への反発を示しています。

ポスター ミロの文化的、社会的、政治的な取り組み

画像: ポスター ミロの文化的、社会的、政治的な取り組み

FCバルセロナは1899年にバルセロナに設立されたサッカークラブで、スペイン一部リーグに所属する世界屈指の強豪チームです。地元の人々から熱狂的な支持を受けるFCバルセロナは、フランコ政権下で「カタルーニャ民族主義の象徴」として様々に抑圧されました。圧政が終わりつつあった1974年、FCバルセロナはクラブが尊重する自由と不屈の精神を体現するカタルーニャの画家として、ミロに創立75周年ポスターの制作を依頼しました。

故郷カタルーニャで、シュルレアリスムに影響を受け、詩情あふれる〈星座〉シリーズに代表される独自の画風を築き、シュルレアリスムの画家として名を馳せたミロ。1928年頃からはコラージュ作品を制作し、伝統的な絵画表現への反抗を試み、新たな世界を創り出しました。         スペイン内戦と第二次世界大戦により、政治的分断や戦争による困難の中でも、独自の芸術を追求し続けたミロは、戦後、アメリカで高く評価され、世界中で個展が開かれるなど巨匠としての地位を確立したのです。 90歳で亡くなるまで、新しい表現を模索し、純粋で普遍的な芸術を追求し続けたミロの情熱に感動させられます。是非、ご覧ください!

開催概要

会期│2025年3月1日(土)~7月6日(日)
会場│東京都美術館(東京・上野公園)
休室日│月曜日、5月7日(水) ※ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開室
開室時間│9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
お問い合わせ│050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト│https://miro2025.exhibit.jp/

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「ミロ展」@東京都美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年3月3日 月曜日 24:00
記載内容
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