吉祥の象徴でもある松が一面に降り積もった真っ白な雪に覆われ、清々しい朝の光を受けて輝く冬の情景を描いた国宝「雪松図屏風」。円山派の祖であり、江戸時代中期に活躍した円山応挙(まるやま・おうきょ、1733~1795)の作で、応挙の作品で唯一の国宝となっているものです。常に写生帖を忍ばせるほど写生を重視した応挙の優れた技術と余白などの空間意識を見事に表現した珠玉の作品です。
十一家ある三井家のうち、応挙と特に深く交わった惣領家・北三井家の注文品とされ、幕末維新・震災・大戦の戦禍と幾多の困難を潜り抜けて、今日まで同家において守り継がれてきました。
このたび開催される「唐ごのみ ―国宝 雪松図と中国の書画―」では、この「雪松図屏風」の公開と並行して、同作品とともに三井家で守り伝えられた、中国絵画や書・拓本の数々が展示されます。
近世以来、茶の湯に親しんだ北三井家においては、中国の宋~元代の作と伝わる書画が歴代にわたって珍重されました。また、近代の新町三井家においては、九代当主・高堅が中国の古拓本の名品を盛んに収集しました。この展覧会では、そうした「唐(から)」の文物への憧れを「唐(から)ごのみ」と称し、作品とその付属品を通じて、受容と賞玩の歴史を探ります。
古拓本とその収集家
現在三井記念美術館に所蔵されている拓本はほぼ、新町三井家9 代・三井高堅(たかかた)(1867-1945)の旧蔵品からなります。高堅は三井銀行の取締役社長等、関連会社の重役を歴任する傍で、古書画、とりわけ宋拓(そうたく)や唐拓(とうたく)といった古拓本の収集に力を注ぎました。それらは今日、高堅の号を冠して「聴氷閣本(ていひょうかくぼん)」と呼ばれ、世界屈指の拓本コレクションとして知られています。
石鼓文(せっこぶん)は、太鼓型の石の側面に刻まれた銘文で、篆書の一書体「大篆」を学ぶうえでの基本とされています。かつて本帖を手に入れた安国(あんこく)は明代を代表する書画コレクターで、とりわけ「石鼓文」の収集に執心した人物。十種の石鼓文を20年近くにわたって収集したことにちなみ、書斎を「十鼓斎(じっこさい)」と名付けるほどでした。中でも最多字本である本帖は、安国のお気に入りの逸品です。子孫へ宛てた跋文(ばつぶん)には、本帖を末永く守り伝えるよう記されています。
北三井家旧蔵の書画
本章では雪松図屏風を中心に、同作と共に北三井家へ伝わった中国絵画・書が紹介されています。
雪の部分を塗り残すことで、紙の白と水墨の黒のみで雪を被った松を描いています。円山応挙の名品です。本作に用いられた継ぎ目のない大判の紙は当時、非常に貴重であり、それがこうした美麗な状態で現在まで伝えられているという事実は、雪松図が三井家にとって特別な作品であったという事が想像されます。
表具を含めると縦2メートル以上にも及ぶ大幅な作品。長寿を象徴する鶴や桃といったモチーフを中心に構成され、吉祥性への意識が垣間見えます。
藤、芍薬とみられる花の下、ぶち猫が他方を見つめています。足元には数輪のタンポポも見られ、5月頃の春の陽気が感じられます。沈南蘋(しんなんぴん)(沈銓)(しんせん)は清時代の画家で、迫真性の高い画風を日本へ伝えました。本幅は19世紀初めまでに、北三井家へ11幅対として伝わりました。
鋭いトラの眼光、毛皮の描写に特徴があります。水墨で描かれた竹によって、強風が吹きすさぶ様子がよく表現されています。
元時代の画家・顔輝(がんき)の作と伝わっていますが、画絹や作風の特徴から朝鮮絵画の可能性も考えられるようです。「竹虎図」は東アジア全体でメジャーな画題であり、日本でも狩野探幽や尾形光琳、伊藤若冲などの有名画家によっても描かれています。
名物絵画の世界
古代から中世において、天皇家や将軍家で所有された器物のうち、特に優れたものは「名物(めいぶつ)」として他の器物と区別されていました。この「名物」という言葉は、時代が下ると、それに匹敵する鑑賞性・市場価値を備えた茶道具や刀剣にも用いられ始め、「千家名物」など所有者の名を冠して呼ばれるようにもなります。
本章では館蔵品の中から、松平不昧(まつだいらふまい)の旧贓品である「雲州名物(うんしゅうめいぶつ)」と、徳川幕府の旧蔵品である「柳営御物(りゅうえいごもつ)」が付属資料とともに展示されています。
南宋の水墨画家・梁楷(りょうかい)の作とされ、禅宗第六祖の慧能(えのう)が描かれています。悟りへの道は言葉で表せない、という禅の立場を、経典を破る姿で描いたものです。
足利義満の鑑蔵印「道有」が右下に捺され、のち足利義政、豊臣秀吉、東本願寺と伝わり、江戸後期には出雲国松江藩の10代藩主で、大名茶人として知られる松平不昧が所蔵しています。当初は、「六祖截竹図」(重要文化財、東京国立博物館蔵)と対幅をなし、梁楷の水墨画の優品として共に尊ばれてきました。
大輪の牡丹がボリューム豊かに描かれています。伝称筆者の黄筌は、五代十国時代の画家ですが、本幅を入手した三井高堅は宋時代の絵と捉えていたようで、箱書には「宋人」とあります。東山御物のような名物絵画をイメージして、牡丹文づくしの豪華な表具で仕立てられています。
今回出品される一部の作品には、江戸時代に記された鑑定書など、付属する資料が併せて展示されています。作品の美しさと同時に、その作品がどのように受容されたかという「鑑賞の歴史」をも含め、この時期恒例の「雪松図屏風」とともに守り伝えられた背景にも思いを馳せ、連綿と受け継がれる美の系譜をご鑑賞ください。
展覧会概要
会期 2024年11月23日(土・祝)~2025年1月19日(日)
会場 三井記念美術館
詳細は、展覧会公式サイトをご覧ください。
こちらをクリックしていただきますと、展覧会公式サイトがご覧いただけます。
TEL 050–5541–8600(ハローダイヤル)
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「唐ごのみ —国宝 雪松図と中国の書画—」
@三井記念美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2024年12月23日 月曜日 24:00
記載内容
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