世界一のパーティアイランドとして知られる地中海に浮かぶ世界遺産イビサ島。夏場はヨーロッパの有名ナイトクラブが店を開け、世界中からスターDJ が集まる。しかし、イギリスから移住した DJ ジョン・サ・トリンサは、島の最南端サリナスビーチで 25 年間、パーティサウンドとは異なる音楽を紡いでいる。あまりにも自由で垣根のない生き方をする彼の生きざまを息をのむような映像とバレリアックな音楽にのせて描き出した『太陽と踊らせて』が、8月 27日 (土)より9月 1日 (木)まで、代官山シアターギルドにて東京再上映されます。

画像1: © Pure in the Moon

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監督は、世界を股にかけて活躍する映像作家リリー・リナエ監督。日本に育った監督が、海外へ飛び出しキャリアを重ねていく中で、衝撃的に出会ったことから生まれた今作は、昨年2021年夏公開後も反響を呼び、現在も全国各地で上映が重ねられています。
今回ジョン・サ・トリンサ氏の来日が決定し、再度東京上映が行われることとなりました。
この度、シネフィルではリリー・リナエ監督に『太陽と踊らせて』についてさまざまなことをお答えいただきました。

リリー・リナエ監督に聞く

・まずは自己紹介お願いします。
台湾生まれ、歌舞伎町育ち。NY・ブルックリンに映像プロダクションPure in the Moon.LLCを設立し世界各国で映像を制作。スペイン・イビサ島が舞台の音楽ドキュメンタリー映画『太陽と踊らせて(原題:Born Balearic)』(2021)はヨーロッパ・アメリカの映画祭計15カ所で正式上映、スペイン・マドリードで最優秀撮影賞、アメリカ・メンフィスにて最優秀音響賞受賞。日本では沖縄映画祭招待作品、全国35の劇場で上映。短編映画『慎みたまえ、口』(2020)はスペイン・ビルバオの映画祭にて奇抜作品に贈られるBizarro大賞受賞。他NHK『Switchインタビュー』、米国フジサンケイ『Hangout NYC』ディレクターなど。これまでにインタビューした数はおよそ100人。最近日本で映像プロダクションSummer of Love.LLCを立ち上げたばかり。

・そして、なぜ映像の世界に進んだのでしょうか?
漂流する自分が探し求めていた“壁のない”世界を作りたくて。台湾で生まれ、歌舞伎町で育った私は、自分のアイデンティティは何か、いつも葛藤しながら生きてきました。その後、中国北京アメリカなど様々な国で暮らす中、壁ばかりの社会に失望を繰り返す日々、映像表現だけが自分が作れる唯一の自由な世界だったからです。

・若いとき、影響を受けたのは、音楽?映画?(他の分野でも構いません)
影響を受けたのはペドロ・アルモドバル監督とケミカルブラザーズのMV。特にミシェル・ゴンドリー監督のStar GuiterのMVを観た時に映像と音を合わせる時に起こる核反応に感銘を受けて、自分も監督になろうと志しました。今でもその時の稲妻は忘れません。
私にとって映像は、音と画の編み物です。

・NYに長く入られたみたいですが、何をなさっていたのですか?
映像会社を制作して、映像プロダクションを機能させていました。
主にテレビ番組で、アメリカの面白い起業家を紹介したり、ブルックリンの最先端をいくブルワリーやビーガンチョコレートの特集など。エピソード形式で30本くらいあるんじゃないかな。
インタビューものでは、杉本博司さん、三池崇史さんなどNYにいたからこそ撮影できた映像もあります。アメリカのFCIというテレビ局が、『太陽と踊らせて』をインディペンデントで制作している私を応援する形で、イビサの特集を組んでくれた御恩は忘れません。そのおかげで一部制作費がカバーできました。基本NYでの収入は全て『太陽と踊らせて』の製作費に回していました。

画像: NY時代の監督撮影シーン

NY時代の監督撮影シーン

映画『太陽と踊らせて』

・映画のエピローグ
太陽の島の吟遊詩人、DJジョン・サ・トリンサ今日も彼は、音楽を通して、枠に囚われない人生を紡いでいくスペインの東に浮かぶ島、イビサその最南端、太陽の光が砂浜を橙色に染め上げるサリナスビーチに真夏、世界各地から人々が彼の音楽を聴きにやってくるいつもの時間、いつもの場所で、25年朝日が昇れば大好きな音楽を流し、夕日が沈めばおやすみなさい
ジョンはひとりひとりの人生を祝福するかのように音の物語を作りだす
「踊ってる時はみんな恋に落ちている。僕はそれを眺めて次の曲を選ぶんだ。」
パーティアイランドの知られざる別の姿、バレアリック。それはイビサを代弁する
音楽。
ジョンのいる浜辺は、イビサの風土が生み出した純粋な蒸留物。
イビサは、音なしくなんて生きてられない、大人のアイランド。
バレアリックを地で生きる、主人公のあまりに自由で、垣根の無い生き様をカメラに。
この音に満ち溢れたありのままの記録にあなたはきっと恋をする。
バレアリック、これはあなたの人生のサントラ。
さあ、もっと自由に生きよう。

これまでに感じたことのない幸福感で満たされる音の世界と国境も人種も言語も関係ないノーボーダーな天国の楽園と出会う!

・DJジョン・サ・トリンサの音楽とはどこで、出会ったのですか?そして本人とはどのように出会ったのですか?・なぜ映画にしようと思いたったのですか?

主人公ジョンの存在は、今から10年前ベルリンを旅していた時、そこで知り合った友人らに教えてもらいました。「ビーチでしかDJをしない、とてもスペシャルな人物がいる。その音楽は聴いたら即天国だ。」その言葉に不思議と魅了され、私は翌日イビサへ向かいました。

イビサの最南端にあるビーチ。灼熱の太陽がジリジリと肌を焦がす感覚を背負いながら、砂浜に足を捕らわれつつ汗まみれの歩く15分。たどり着いた場所は、サ・トリンサと書かれたレストランでした。掘立て小屋のような小さな海小屋が併設されていて、そこから音楽が流れていました。ヨガマット1枚引いたら窮屈になってしまいそうな狭いその小屋にいたのが、その後私の人生を大きく変えたジョンです。その日から、ガンガンと音が鳴り響かせる深夜のクラブDJではなく、サンサンと光が降り注ぐ浜辺でDJをする人物に、そしてバレアリックミュージックというものに、私は心を奪われました。

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ジョンはクラシックからロック、レゲエ、ジャズ、ヒップホップ、ハウスやテクノ、ファンク、民族音楽など、様々なジャンルをスムーズに繋ぎ、聴く人が自然と笑顔になる空間を作っていました。Spotifyとは違います。彼の選曲は物語に溢れ、まるで世界中を旅するかのような、目の前が映画のワンシーンとなるようなサウンドトラックのような、これまでに感じたことのない幸福感で満たされる音の世界に導いてくれたのです。そこには、国境も人種も言語も関係ないノーボーダーな天国の楽園が広がっていました。

どうすれば世界はあらゆる壁を越え、繋がっていけるのか漠然と彷徨っていた20代、私は1日中DJをするちょっとシャイで笑顔がチャーミングなおじさんに出会ってしまったのです。人々はジョンの流す音楽に身を委ね、大好きな人と抱き合っていたり、気ままに踊ったり、砂の上でうたた寝したり。太陽と海、砂浜、そしてジョンにより生み出されるこの空間は、朝日が昇れば太陽の輝きを、夕日が沈めば波が溶けていくのを全身全霊で感じられました。センスオブワンダーのスイッチがここにあったのです。その光景を目の当たりにした時、盲目的に問いかけ続けてきた自分への答えがようやく見つかりかけた気がしました。そして彼の映画化に移ります。

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バレアリックミュージックとは!

・イビサは、長いことある意味クラブ音楽などの聖地のように、思われていますが、実際リリー監督にとってはどのような場所として捉えたのでしょうか?

日常生活に音楽が紐づいている島。人々の暮らしの中にアートや音楽が溶け込んでいる。とはいえ、イビサがパーティアイランドなのも事実、でもその乱痴気騒ぎは夏の間だけ。音楽を通して島の2面性が説明でき、私はバレアリックミュージックの方にフォーカスしました。

画像: バレアリックミュージックとは!

・そして、実際映画として制作なさったわけですが、何が一番大変だったでしょうか?キリがないです・・・。
資金面では苦労しました、最初300万は自己資金、そこからクラウドファンディングやスポンサーの資金も獲得して制作に取り組みましたが、やはり人様のお金なので、節約、節約、節約して制作しました。総製作費をいうと、映像関係者は目を見張るように驚きます。
それくらいの根気で、宿、レンタカー、ロケーションなどほとんどのものをディスカウントしてもらいました。あとは、プレッシャーから腰痛がひどく、1年間ほぼ立ってた時期があります。
編集でトイレを我慢し、膀胱炎になり、さらに編集してたら、腎盂腎炎になり5日間ブルックリンの囚人が隣で鎖に繋がれているような病院で過ごしました。低所得すぎて、入院費かかりませんでした。

・完成してどのような反響があったのでしょうか?
世界各国のジョンのファンから「よくやった!」「ジョンの物語にしてくれてありがとう!」と連絡きました。100通くらい届いてるんじゃないかなぁ。その度に、ファンの方と、あのミックスいいよねとか、このミックスおすすめとか音源交換しあったり。私もただのジョンのファンなので。
イビサ島の映画館でも上映され、招待されました。途中でとあるスペイン人にタバコの煙を吐きかけられる厳しい洗練も浴びましたが、劇場には300人ほどのイビサンコ(イビサの住人を差す言葉)が訪れてくれて、嬉しかった。スペイン語字幕が優秀だったせいか、会場は爆笑のタイミングが何個かありました。

画像: リリー・リナエ監督(メイキング写真)

リリー・リナエ監督(メイキング写真)

画像: リリー・リナエ監督とジョン・サ・トリンサ(メイキング写真)

リリー・リナエ監督とジョン・サ・トリンサ(メイキング写真)

・今後、どのような活動を考えていますか?(次の作品の予定とか)
今3つの映画が進行しています。早くて来年秋には全国の劇場で流れる作品が1つ。
続いてLAが舞台のドキュメンタリーが1つ。
最後は、またまた自己資金で撮ってる東京アングラフェティッシュのドキュメンタリーです。
イビサのおじさんDJ以上のマニアックな作品を制作予定で、世界で『太陽と踊らせて』以上に賞を取る自信があります。協力してくれる方いたら連絡ください、いつでもスタッフ探してます。(アングラに抵抗ない方のみ)

・今回、また東京での1年ぶりの再上映が決定しましたが、まだみていない方々に一言お願いします。
映画の公開期間はセミの命のように儚いもの。劇場公開は永遠でないから美しい。
主人公ジョンの音楽と詩の中で過ごす71分。汗と涙噴き出る真夏の太陽の下で撮影した、あの時の私には最大限を出し切った作品です。限られた期間ですが劇場で音を、波を、聴きにお越しいただければ幸いです。劇場でお待ちしています!

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DJジョン・サ・トリンサ
ホセ・パディーヤやアルフレッドなど世界に名をとどろかせるクラブDJとは一線を画す、イビサの伝説的なローカルDJ。ヨーロッパを中心に世界中に多くの熱狂的なファンをもつ。1987年ロンドンでDJキャリアをスタート、1994年イビサ島へ移住。サリナスビーチにあるサ・トリンサというレストランに併設された小さなチリンギート(海小屋)で正午から夕日が沈むまでの8時間あまりDJをして、ジョンの音楽を求めてやってくる世界中の人々に極上の体験を届けている。

リリー・リナエ監督

リリー・リナエ
台湾人の両親を持ち新宿歌舞伎町で育ったリリー・リナエ。TV局や大手広告代理店に勤めながらも日本社会での自らの立ち位置に窮屈さを感じ、20代の終わりとともにキャリアを捨ててNYに飛び立つ。映像作家としてやっと地歩を固めようとしたころ、旅で出会った、物語と色彩に溢れるDJジョン・サ・トリンサの音楽に衝撃を受け、居ても立っても居られずイビサとジョンの懐に飛び込む。ジョンの誠実で自由な生きざま、イビサの包み込むような風土、流れる色彩に満ちた音楽。20代の貯金と日米のクラウドファンディングで集めたお金、そして3年間の月日をつぎ込み、監督に変貌したリリー・リナエが、国際的なスタッフとともに全力を尽くして完成させた初めての長編ドキュメンタリー。映画での使用楽曲数73、監督自身が選曲し、清水天務仁・村上怜・伊藤圭一が仕上げたサウンドがバレアリックな音楽宇宙を現出する。

2020 年/日本/カラー/1.90:1/71 分/5,1ch/英語・スペイン語・日本語・フランス語
監督:リリー・リナエ 字幕:リリー・リナエ

配給:オンリー・ハーツ

後援:スペイン大使館/インスティトゥト・セルバンテス東京/スペイン政府観光局
協賛:KEY pro/Image Studio 109

応援:AlphaTheta 株式会社/株式会社アンド・コスメ/bar bonobo/HAVANA CLUB
/itoma CBD/PULPlism/Sea’ds mara/The Sunrise Shack Japan

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『Re : Born Balearic - Jon Sa Trinxa Japan Tour2022』

Title:Deus Parkside Social Club
Date:2022年9月3日(土)14時〜22時
Location:DEUS EX MACHINA ASAKUSA(浅草)
Price:入場無料
DJ: Jon Sa Trinxa, Toru Hashimoto(Free Soul / SUBURBIA), Shiba@FreedomSunset

名 称:Sunset The MARINA Vol.19 – Re : Born Balearic -
日 時:2022年9月4日(日)15時〜21時
会 場:MARINA & GRILL(東京・夢の島マリーナ)
料 金:早割3,000円、前売3,500円
DJ: Jon Sa Trinxa, Calm, Eita Godo

名 称:BORN SENDAI BALEARIC~定禅寺通りと踊らせて
日 時:2022年9月10日(土)15時〜21時
会 場:Balearic Coffee Roaster(仙台)
料 金:前売3,000円(1D)
DJ: Jon Sa Trinxa, Toru Suzuki

名 称:BALEARIC WEEKEND Flower Journey Okinawa 2022
日 時:2022年9月11日(日)21時〜26時
会 場:CHATANBAL VERONA(沖縄)料 金:2,500円
DJ: Jon Sa Trinxa, Chiaki, Ryuichi, Jun Kasuya
LIVE: Yanbarise

名 称:Born Balearic ~ Jon Sa Trinxa Japan Tour 2022
日 時:2022年9月17日(土)13時〜19時
会 場:Ace Hotel Kyoto(京都・新風館内)
料 金:入場無料
DJ: Jon Sa Trinxa

名 称:夕陽と海の音楽会 presented by FreedomSunset
日 時:2022年9月18日(日)15:00-19:00 雨天・強風中止
会 場:江の島シーキャンドルサンセットテラス(神奈川)
料 金:3,000円
DJ: Jon Sa Trinxa, Yuki Kawamura
LIVE: Auto&mst

名 称:PLAYA
日 時:9月18日(日)17時〜24時
会 場:OPPA-LA(江の島)
出 演:Jon Sa Trinxa and PLAYA crews (DRAMATICBOYS etc.)
料 金:2500円

主 催:Re : Born Balearic 実行委員会
特別協賛:CHILL OUT
協 賛:PioneerDJ/Deus Ex Machina /ニホンキカク(株)
後 援:スペイン大使館/インスティトゥト・セルバンテス東京
協 力:オンリー・ハーツ/ 合同会社Summer of Love

映画『太陽と踊らせて』
8月 27日 (土)より9月 1日 (木)まで、代官山シアターギルドにて東京再上映

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