『リング、ワンダリング』

画像1: Ⓒ2021リング・ワンダリング製作委員会

Ⓒ2021リング・ワンダリング製作委員会

 過去と現在が一日だけつながって、出会った二人の不思議な縁。リングが円を描いて始まりの場所へ戻ってくるように七十年の時間を越えて完結するファンタスティック・ストーリー。

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 主人公は漫画家志望の間草介。昼間は建設現場で地面を掘ったり、残土を運び出したりのバイトをして、夜に狼の漫画を描いているが、肝心の狼が描けなくて苦心している。地方にスケッチ旅行に行き、すすき野原で小型のフィルム・カメラを持った少年と出会う。彼の描いた狼の絵を見た少年は「違う」と断言し、「絶滅してるんだから」と答えると、「いや、まだ生きている。その証拠を撮ったら見せてやる」と言って去っていった。工事現場の地層から動物の頭蓋骨を掘り出し、それを狼の頭蓋骨写真と比べたりした。深夜、もっと掘ろうと現場へ行き、犬のシロを探していた若い女性ミドリとぶつかり、足をひねった彼女をおぶって、家まで送り届ける。古めかしい写真館で、両親に歓待され、「今日はめったに売ってない泥鰌が買えたので」と、泥鰌鍋をごちそうになる。供出とか疎開とか言った言葉から、ここが戦時中と分かるのだが、草介は気づかない。
 彼の描いている漫画は、明治時代の山村が舞台。猟師銀三は狼を追いかけ、狼を”お犬様”と崇める村人とはそりが合わない。それでも娘の梢がいい子だったので、村においてもらっていたが、梢が狼用の罠で死んだのに涙も見せない銀三にあきれた村人から追い払われた。良質の火薬を仕入れて銀三は山に入り、滝そばにいた狼と対峙し、銃を構える。 主人公の描いている漫画の世界が実写化されてドラマとなっているという二層構成。主人公は再び川内写真館を訪れるが、そこは現代の写真館で、店の女性はミドリの姪だという。彼女の父黄太は疎開していたので助かったが、ミドリと両親は大空襲で死亡したという。父というのは彼が信州で会った少年だった。

画像3: Ⓒ2021リング・ワンダリング製作委員会

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 タイム・スリップものと、絶命した狼をテーマにした劇画調ドラマをミックス。けっして大がかりではないが、郷愁とセンス・オブ・ワンダーを感じさせる好小品である。戦時中と現代。人間に追われて絶滅した狼と、社会の底辺で働く青年。二つの世界を連関させて、観る者に何かを感じさせる。そんな風にも見える映画になっている。

画像4: Ⓒ2021リング・ワンダリング製作委員会

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 草介に笠松将、ミドリと梢の二役を阿部純子。黄太少年に伊藤駿太、黄太老人に品川徹、両親に安田顕と片岡礼子、銀三に長谷川初範、行商人に田中要次が扮している。
 監督は六本の短編映画を撮った後の初長篇「アルビノの木」(2016)で注目された金子雅和。脚本は金子監督と吉村元希の共同。劇中漫画は、水で描線を描き、そこに墨を落とし、細かいところは爪楊枝を使うという独特のやり方をとる森泉岳土が描いている。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。 

映画『リング・ワンダリング』予告

画像: 映画『リング・ワンダリング』予告(2022年2月19日公開) www.youtube.com

映画『リング・ワンダリング』予告(2022年2月19日公開)

www.youtube.com

<ストーリー>
漫画家を目指す草介は、絶滅したニホンオオカミを題材に漫画を描いているが、肝心のオオカミをうまく形にできず前に進めない。そんなある日、バイト先の工事現場で、逃げ出した犬を探す不思議な娘・ミドリと出会う。転倒しケガをしたミドリを、彼女の家族が営む写真館まで送り届けるが、そこはいつも見る東京の風景とは違っていた…。

笠松将 阿部純子 片岡礼子 品川徹 田中要次 安田顕 長谷川初範 

監督:金子雅和 
脚本:金子雅和 吉村元希

配給:ムービー・アクト・プロジェクト

製作: リング・ワンダリング製作委員会

(2021年/日本/カラー/5.1ch/1:1.85 /DCP /103分) 映倫区分G

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2022年2月19日(土)より、
渋谷シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー

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