シンプルでなめらかなフォルムの愛らしい《シロクマ》の彫刻が人気を集めているフランスの彫刻家、フランソワ・ポンポンの日本初となる回顧展が、京都市京セラ美術館で好評を博し、9 月 18 日(土)~11 月 14 日(日)までは、名古屋市美術館において開催されることになりました。

有名彫刻家たちの下彫り職人として長年キャリアを積んだポンポンは、20 世紀初頭に動物彫刻家として歩み始め、遅咲きながら、1922 年(当時 67 歳)に発表した等身大(長さ約2.5メートル)の《シロクマ》の彫刻で一躍脚光を浴びました。

動物を愛するポンポンは、身近な動物から、動物園で見られる珍しい動物まで、その形態や動きを観察し、彫刻に生命感を吹き込み、簡潔で洗練された美しいフォルムで表現しました。
モダンなポンポン作品の造形美は、現代においても色褪せることなく、近年ますます人気が高まっています。

本展は、ポンポンの最初期の人物彫刻から、形の洗練を極めた最晩年の動物彫刻まで、約 90 点の作品を通じて、彼の作風の変遷と生涯をたどります。
パリのオルセー美術館、ポンポンの出身地であるブルゴーニュ地方のディジョン美術館、ソーリューのフランソワ・ポンポン美術館から来日する作品をはじめ、国内でポンポンの彫刻と資料を多数所蔵する群馬県立館林美術館の作品によって構成されています。
動物彫刻を革新したフランソワ・ポンポンの魅力あふれる動物たちの世界をご堪能ください。
それではシネフィルでもいくつかの作品を紹介致します。

画像: 「鳩を抱くポンポン」写真(撮影年不詳) 群馬県立館林美術館蔵

「鳩を抱くポンポン」写真(撮影年不詳) 群馬県立館林美術館蔵

フランソワ・ポンポン(1855-1933)は、1855 年、フランス中部ブルゴーニュ地方の町ソーリューに生まれ、10 代の頃から木工家具職人の父や大理石職人のもとで見習いとして働き、20 歳でパリに出てからは、ロダンなど有力彫刻家たちの下彫り職人として働きながら、自作の人物彫刻を出品して、 彫刻家として大成することを目指しますが、評価が得られないまま時が過ぎました。

《コゼット》1888年 群馬県立館林美術館蔵

転機は 1906 年(当時 51 歳)動物彫刻を初めて公に発表した時に訪れました。
ポンポンは、動物の姿や動きの特徴を的確に掴み、細部を省略して表面を磨き上げ、簡潔で流麗な形状へと洗練を重ねていくことで独自のスタイルを築くと、1922 年(当時 67 歳)に発表した等身大の《シロクマ》の彫刻が「アール・デコ」の流行とも相まって、好評を博しました。

画像: 《シロクマ》1923-1933年 群馬県立館林美術館蔵

《シロクマ》1923-1933年 群馬県立館林美術館蔵

《シロクマ》の発表以降、世界のコレクターがポンポンの動物彫刻を買い求め、またリュクサンブール美術館やメトロポリタン美術館といった主要美術館も作品を購入しました。1925 年と 1933 年には国からレジオン・ドヌール勲章を授かり、ポンポンの名声は揺るぎのないものになったのです。
(※オルセー美術館所蔵の大型の《シロクマ》は、本展には出品されていませんが、群馬県立館林美術館蔵の《シロクマ》は、素材の異なる3種類の《シロクマ》が出品されています。)

《錦鶏》1933年 ディジョン美術館蔵(パリ、国立自然史博物館より寄託)
© Musée des Beaux-Arts de Dijon/François Jay

ポンポンの動物彫刻の魅力はその洗練された流麗な形状ですが、それに加え、素材の美しさがあります。同じ形でも石膏、ブロンズ、大理石など、素材の違う作品が存在します。
当時、装飾芸術としても注目されていたポンポンの彫刻は、ブロンズ像の表面の仕上げに注意が払われており、実物を間近に見ることで、写真ではわからない深みのある色彩や光沢を味わうことができます。

《雄鶏》1913-1927年 パリ、オルセー美術館蔵
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / A. Morin / Gallimard / distributed by AMF

ポンポンが 1906 年、初めて展覧会に出品した動物彫刻は、羽の表現が省略された鶏の彫刻で、従来の写実性を追求した動物彫刻とは一線を画しました。
彫刻の鋳造・販売を手がけるアドリアン・A・エブラールに注目され、後に、個人邸宅向けのブロンズ作品が制作されるようになります。ポンポンは粘土像や石膏像を削って磨き上げる工程に重点を置き、なめらかな美しいシルエットを追求しました。

《ペリカン》1924年 ディジョン美術館蔵(パリ、国立自然史博物館より寄託)
© Musée des Beaux-Arts de Dijon/François Jay

ポンポンが活動の拠点にしていたパリには、旧王立植物園内に併設された動物園がありました。ポンポンは若い頃からキリンやラクダなど様々な異国の動物たちが飼育されている動物園に通い、観察をもとに動物の骨格や筋肉の特徴を的確にとらえ、簡潔に表現する彫刻を制作しました。
ポンポンは大型の動物を実物大で作りたいという希望をもっていましたが、《ペリカン》や《カバ》など、いくつかの作品で実現されています。

《ワシミミズク》1927-1930年 パリ、オルセー美術館蔵
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / A. Morin / Gallimard / distributed by AMF

1922 年の《シロクマ》の成功から、亡くなる1933年までの間に、ポンポンは彫刻の表面の影を徹底的になくして、洗練化させました。同時代に流行したアール・デコ様式の装飾空間とも調和し、ポンポンの作品は装飾家からも高く評価されました。

《ボストン・テリヤ「トーイ」》1931年 ソーリュー、フランソワ・ポンポン美術館蔵(1982年収蔵)
© Musée Pompon Saulieu /KRISTOF

ポンポンは知人や動物愛好家からの注文に応え、彼らの愛する子どもたちやペットをモデルとした作品を作りました。ポンポン自身が飼っていた愛犬や鳩も、彫刻のモデルになっていて、動物に対する彼の温かな優しさが伝わってくるようです。
     (美学美術史学科専攻 米澤美也子)

展覧会概要

展 覧 会 名 : フランソワ・ポンポン展
会 期 : 2021 年 9 月 18 日(土)~11 月 14 日(日) 【50 日間】
開館時間:午前 9 時 30 分~午後 5 時、金曜日は午後 8 時まで
 いずれも入場は閉館 30 分前まで
休 館 日:月曜日(9 月 20 日(月・祝)は開館)、9 月 21 日(火)
会 場 : 名古屋市美術館
〒460-0008 名古屋市中区栄 2-17-25 〔芸術と科学の杜・白川公園内〕
TEL:052-212-0001
FAX:052-212-0005
主 催 : 名古屋市美術館、中京テレビ放送
後 援 : 名古屋市立小中学校長会
協 力 : 群馬県立館林美術館
企 画 協 力 : 美術デザイン研究所
観 覧 料 一般:1,600 円(1,400 円)、高大生:1,000 円(800 円)、中学生以下:無料
( )内は前売料金
※新型コロナウイルス感染拡大のため、展覧会公式ホームページをご確認の上、お出かけください。
名古屋市美術館展覧会公式ホームページ http://www.art-museum.city.nagoya.jp/

フランソワ・ポンポン展@名古屋 シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、フランソワ・ポンポン展@名古屋 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年10月4日 月曜日 24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
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また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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