『愚行録』『蜜蜂と遠雷』で国内外より注目される石川慶監督の待望の新作映画であり、『累-かさね-』と『散り椿』で日本アカ デミー賞新人俳優賞を受賞し、最新作『ファーストラヴ』では、その憑依したような熱演に堤幸彦監督から“涙の魔術師”と絶賛された 主演・芳根京子が一人の女性の17歳から100歳以上を生き抜くという、キャリア史上最難関の役どころを繊細かつ大胆に演じる、人類にとって全てが初めてとなる不老不死の世界を描いた、驚愕と不思議(=センスオブワンダー)に彩られた壮大なるエンターテイメント作品『Arcアーク』が6月25日(金)より全国ロードショーいたします。

画像1: (c)2021映画『Arc』製作委員会

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この度、本作を手掛けた石川慶監督と、映画科学ライターのJoshuaによるスペシャルトークイベントを実施いたしました。東北大学で物理学を専攻し、卒業後はポーランドの名門で映画を学んだ経歴を持つ石川と、東京大学で宇宙物理学 の研究に従事する科学映画ライターJoshuaという超理系同士の対談で、普段のイベントとは少し違った視点で語られ る、映画『Arcアーク』の世界が垣間見れました!

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<『Arcアーク』スペシャルトークイベント 概要>
■日時:6 月 13 日(日) 16:10~16:50
■場所:スペース FS 汐留  (東京都東新橋 1-1-16 汐留 FS ビル 3F)
■登壇:石川慶(監督)、Joshua(科学映画ライター) 敬称略

本イベントは、長編作品では『愚行録』(17)『蜜蜂と遠雷』(19)に続いてまだ3本目でありながら、日本映画界で唯一無二の存在感を示す石川慶監督と東京大学大学院宇宙線研究所で宇宙物理学を専門に研究をしながら、映画を科学的な切り口で解説するブログが映画ファンの間で人気・科学映画ライターのJoshua(ジョシュア)による、公開に先駆けて映画を“見たばかり”の熱を帯びたお客様の前で行うスペシャルトークイベント。

上映直後の興奮収まらない観客たちに大きな拍手で迎えられた石川から、最初に「本日は本当にありがとうございます。コロナ拡大する中で撮り終えて仕上げて...なんとか公開できる運びになりました。今日は科学映画ライターのJoshuaさんと科学の深い話ができると聞いて楽しみにしていました」と短い挨拶を終えると、Joshuaからも「ケン・リュウ原作の「円弧」(アーク)が日本で映画化されると聞いてまず驚いて、映画を見てみたら瀬戸内海が出ていて『(あの原作から)これを想像するのか!?』とさらに驚いて、非常に面白いと思いました。この作品は<不老不死>というテーマを 描きながらも決してディストピア的に語るわけでなく、かと言ってユートピアでもない。作品全体に通底するバランス感覚がリアリティを彷彿させるところが気に入っています」と石川独特のオリジナリティを絶賛。

本作に関するインタビューでも度々<ディストピアに描きたくない>と語っていた石川は「実はそうはいっても最初はディストピア調ではありました」と裏話を明かす。この方向転換の影には「一度出来上がった脚本を、原作を手掛けたケン・リュウに送った時に『不老化技術のような新しいテクノロジーはこれから開発されるかもしれないけど、それを今の時点で<良い・悪い>というジャッジはしたくない。それは人間の強い部分も弱い部分もさらけ出すかもしれないけど、将来的には良いものになっていくと信じてフィクションを書いている』というアドバイスがあり、この考え方は自分の科学への姿勢と共感する部分でもあったので、この作品の大きな柱になりました」と東北大学で物理学を学んだ経歴を持つ石川と、プログラマーとしても働いた経験がある理系作家のケン・リュウの共通の価値観について語った。

17歳から100歳以上まで生きる主人公・リナを演じた芳根京子について話が及ぶと、石川は「芳根さんは最初『30歳の自分もイメージできないのに100歳以上は、無理です』と至極全うなことを仰ってたんですけど、芳根さんは共演する相手でガラリと変わる人。そう考えると、この時はこうだと決めるのではなく、分からないからこそ作れるものがあるんじゃないかとお話させていただきました」そのリナを演じた芳根の“心の支え”になったという岡田将生については、「岡田さんは実際に会ってみると本当に美しい容姿をされていて、この世のものじゃないような雰囲気をまとっている。 それなのに話すととても人間味溢れる方で、(天才科学者である)天音にぴったりだと思いました」と石川が語ると、Joshuaからも「サイエンティストあるあるですね(笑)研究所にはああいう好きなことを一心不乱にやっている人がいっ ぱいいるんです」と岡田のキャスティングに太鼓判。

また、本作は近年の日本映画には珍しく、物語後半はモノクロ映像を中心に描かれる。観客にとってはサプライズ溢れるこの演出について聞かれると石川は「カラーグレーディング(色の補正作業)はポーランドでやりました。カラー リストは『COLD WAR あの歌、2つの心』(18)や『イーダ』(13)をやっている方で、『蜜蜂と遠雷』の時に仕上げをどういう風にやっているのか見せてもらったんです。そしたらモノクロなのにカラーで撮影していて、しかもグリーンバッ クを立てて結構ヘビーなCGで作られていて。ちょうどその年に『ROMA』(18)がアカデミー賞にノミネートされていて、 デジタルで作る<モノクロ>を使って細かいディティールを表現することが結構SF的だと思ったんです。それが今回の 『Arc アーク』を作る時に自然に浮かびました」とポーランドで映画製作を学んだ石川ならではのアイディアを披露。 「カラーで見るとロケ地は小豆島なんですけど、モノクロにすると、“いつでもない”異国観溢れる風景に変わって、 これはうまく行きますよ、とプロデューサーを説得しました(笑)」とアメリカが舞台に描かれた原作を日本で映画化するにあたっての挑戦を明かした。

ここで話は劇中で描かれる<ストップエイジングによる不老不死>が、実際の世界でどこまで現実的なのかについて。 科学映画ライターであるJoshuaの解説によると「生命が誕生した数十億年前に遡ると、最初の生物は単細胞生物で、細胞分裂しても1つが2つになるだけで『老化』や『死』という概念自体がなかった。これが進化の過程で多細胞生物になって、酸素濃度が必要になり、体格も大きくなって、性も獲得した。その過程の中で人間は『死』という概念を途中で獲得したんです」という驚きの事実が説明される。さらに作中でも描かれる<テロメア>という細胞については「人間は細胞分裂するたびに<テロメア>という“回数券”のようなものが減っていくんです。最終的に<テロメア>がなくなると細胞は自死する。このプロセスが人間の身体全体で起こると『老化』し、生物は死にます」と簡潔に解説。

さらになぜ生物は死ぬ必要があるか?という普遍的な問いに対しては「<多様性>という仮説があります。オスとメスが存在することで有性生殖としてより複雑な個体を生み出すことができる。例えば新型コロナのウイルスは一瞬で進化していくけど、生物は<多様性>があるから一部分の人が死んでしまったとしても他は生き残ることができる」とまさに今人類が直面している脅威に対してもこの<多様性>が効果を発揮していると語る。この解説を聴いた石川による と、「実は劇中で天音(岡田将生)にもこの話をしてもらったんです。長い台詞でやむなく本編ではカットになりましたが、岡田さんに一生懸命読んでもらったのが、いまJoshuaが話してくれた内容です」と劇中にも取り入れられた概念だと理系監督ならではの視点で作品の解説を補足。

そして実際に「<テロメア>を再生して細胞が若返らせることで、老化を遅らせる技術は実際に既に現実世界で行われていて、『Arc アーク』の世界はそんなに遠い未来の話ではないです」とJoshuaが付け加えると、石川も「劇中で天音が作る“ピンクの液体”は「テロメア初期化細胞」をイメージして作った細胞です」と裏設定を語り、石川の細かなリサーチが映画に取り入れられていることが明かされた。石川は、そのリサーチの過程でさらに“目からウロコだった” こととして「いままで『死』は『生』の対極の概念だと思ってきたのですが、生物は進化の過程で、昔は生きることし かできなかったのに、死ぬことを“選択できるようになった”ということでした。死を選択することによって、実は種としてはもっと強く生きることができる、それが生物だ、という基本的な概念に触れた時に<不老不死>の定義がガラっと変わった感覚がありました」と劇中で描かれる『死』と『生』の考え方と、実際に生物が得てきた過程の深い関係性について語った。

さらにMCから<ストップエイジング>によって若くあり続けることの意味を問われると、石川は「今回老いとは何なのか、と考えました。すでに『老いは病気』だと言っているお医者さんもいて。その結果、普段自分たちが言ってる “老い”は“身体の老い”を意味しているだけじゃないかと気づいて。果たして身体が若いままだったら、精神は老いていくのか?芳根さんと最終的に答えらしきものが出たのは、人間は身体が老いなければ、精神は“老いていく”のではなく、“成熟していく”のではないかということでした」と実際にリナとして長い人生を生きた芳根とともに作り上 げていった部分だと語る。

この見た目ではわからないまま歳を重ねていく表現について、Joshuaは「昨今のSFブームでは、今まで映像技術が追いついていなくて作品化できなかったものを作品化しようという流れがあって、莫大な予算をかけて、それはそれで面白いんですが、この『Arc アーク』のように個人の精神世界という宇宙の変革を描くというものがSFの真骨頂だと思います」と日本で製作されたこの唯一無二であるSF作品の挑戦に最大級の賛辞送った。

イベントの最後には石川から「やっと公開できるようになりました。意図したわけではないですが、コロナの状況とも重なって見える映画になったなと実感しています。映画館もやっと通常に戻ってきた時期でもあるので、ぜひ周りの方に広めていただけましたら嬉しいです!」とアピールし、イベント締めくくった。

画像: <『Arcアーク』スペシャルトークイベント 概要> ■日時:6 月 13 日(日) 16:10~16:50 ■場所:スペース FS 汐留  (東京都東新橋 1-1-16 汐留 FS ビル 3F) ■登壇:石川慶(監督)、Joshua(科学映画ライター) 敬称略

映画『Arc アーク』本予告

画像: 映画『Arc アーク』本予告 2021年6月25日(金)公開 youtu.be

映画『Arc アーク』本予告 2021年6月25日(金)公開

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【STORY】舞台はそう遠くない未来。17
歳で人生に自由を求め、生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送っていたリナは、19歳で師となるエマと出会い、彼女の下で<ボディワークス>を作るという仕事に就く。それは最愛の存在を亡くした人々のために、 遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事であった。エマの弟・天音はこの技術を発展させ、遂にストップエイジングによる「不老不死」を完成させる。リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになるが・・・。

キャスト:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫

原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊『もののあはれ ケン・リュウ短編傑作集2』より)
脚本:石川慶 澤井香織
音楽:世武裕子

監督・編集:石川慶

製作:2021映画『Arc』製作委員会 製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2021映画『Arc』製作委員会
2021年/日本/127分/スコープサイズ/5.1ch
Twitter:@Arc_movie0625 #Arc アーク

6 月 25 日(金) 全国ロードショー!

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