京都の伝統的な「友禅」が現代のモダンな「デザイン」と交差し、新しい世界が生まれました。
京都国立近代美術館では、10月13日(火)から12月6日(日)まで、「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン―交差する自由へのまなざし」が開催されています。
森口邦彦は友禅の技法で、平成13年に紫綬褒章を受章、平成19年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、今年度は文化功労者に選出されました。
本展では、友禅とデザイン、伝統と現代、東洋と西洋などが様々に交差して生まれる森口邦彦の創作活動の全貌を紹介致します。

森口はパリで学んだグラフィック・デザインの思考と幾何学文様を大胆に組み合わせることで、伝統工芸の「友禅」に留まらない新しい創作の可能性を拓いてきました。
着物制作から三越のショッピングバッグに代表されるデザインワークまで、森口の創作は、歴史的に積み重ねられてきた技と感性を出発点に社会に友禅・デザインを還元させるための実践であるといえます。

これまであまり公開されなかった草稿から、2020年に制作された最新の作品まで、古典的な美しさと、センスあふれる斬新な美を兼ね備えた森口邦彦の世界をご堪能ください。

画像: 森口邦彦 《友禅着物「千花」》 1969年

森口邦彦 《友禅着物「千花」》 1969年

第一章 着物/草稿

1967年に父・華弘の工房で友禅に従事しはじめて以降、森口邦彦は、「着物」という形式にこだわって創作活動を続けてきました。
着物は人の体に巻かれることで着られるもので、模様や形態は、二次元から四次元まで自在に変化する特殊な立体物です。
森口はこの着物の特性に気づき、水平や垂直、斜めからなる幾何学的抽象性を有した模様を、裾から袖にかけて徐々に変化させることで、女性の身体を美しくみせることのできる着物を生み出してきました。
ここにはフランスで学んだグラフィック・デザインやオプ・アートの手法が応用されています。
また、森口は、着物制作に先立って膨大な量の草稿を描いています。
これまで森口の草稿は、展覧会ではあまり紹介されることはありませんでしたが、草稿上の変化は、森口が創作において重視する要点が直接に表れています。

画像: 森口邦彦 《友禅着物「白雨」》 1970年 群馬県立近代美術館蔵

森口邦彦 《友禅着物「白雨」》 1970年 群馬県立近代美術館蔵

画像: 森口邦彦 《友禅着物 持合鱗漸層文様訪問着「花間」》 1970年

森口邦彦 《友禅着物 持合鱗漸層文様訪問着「花間」》 1970年

第二章 京都/パリ 習作の時代

森口邦彦は、友禅作家である華弘の次男として生まれます。
同志社高等学校時代は日本画家で東丘社塾生の市川洋に師事し、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)では上村松篁、榊原紫峰、秋野不矩ら近現代日本を代表する日本画家のもとで日本画を学んでいます。
大学卒業後は、フランス政府給費留学生として渡仏し、約三年間をパリの国立高等装飾美術学校に学んでいます。
森口は京都で日本画の写生と線や面で対象を描き出す技術を、フランスでは、アカデミックな教育の中で対象を正確につかむための技術と応用力、デザインの技術や構成力、さらにグラフィック・アートやオプ・アートの手法を身につけています。
これら様々な美術や技術を学んだ上で、森口は父の工房で友禅制作に従事しました。

画像: 森口邦彦 《友禅着物 楔形漸層文「新雪」》 1986年 広島県立美術館蔵 後期展示

森口邦彦 《友禅着物 楔形漸層文「新雪」》 1986年 広島県立美術館蔵 後期展示

第三章 友禅 × デザイン

森口邦彦は、着物の制作を創作活動の主体に置いていますが、一方で平面作品の連作も定期的に発表してきました。
それらの作品は《線の截り方》や《コバルト》からもわかるように、友禅の糸目糊置き技法を用いつつ、線の長さや密度によってある図形を浮かび上がらせるもの、あるいは《キュー
ビック・マジック》や《シャドウ・マジック》、《緑の研究》、《二十四節気》のように友禅法を用いながら純粋に図形の展開の面白さをパターンの中で追求するものなどがあります。特に連作の中で図形が様々に変転していく様は、ある法則性を根底に持ちながらも、図形自らが法則性を破っていこうとするような自律する意志をも感じることができます。
風炉先屏風も含めたこれら平面性の強い作品は、身体と模様との関係を念頭に置いて制作が行われる着物とは異なり、構想したアイデアをそのまま平面的に表現できるという点で森口のグラフィック力が直接に表れたものだといえます。

画像: 森口邦彦 《友禅着物 緋稜文》 2000年

森口邦彦 《友禅着物 緋稜文》 2000年

第四章 「実り」 デザインを日常へ

2014 年に、日本を代表する老舗百貨店の三越は、それまでのショッピングバッグのデザインを一新しました。
新たなデザインは森口邦彦によるもので、第 60 回日本伝統工芸展出品作《友禅着物 白地
位相割付文「実り」》から応用された模様をショッピングバッグの立体性に即して構成しなおしたものです。
この経験が、森口にとっての画期的であったと思われるのは、「実り」のショッピングバッ
グの発表に際して行われた対談の中で、自ら「ほら、今回は多くの人に向けて作れたよ」とある友人に向けた言葉を発しているからです。
この友人は、かつて森口の高価な着物がある特定の人にだけ向けられているのではないかという疑問を投げかけた人物であり、この問題提起が、長年、森口にとって自身と社会との関係を考える根底にありました。
その意味で、森口のデザインとは、自身の感性を介して社会とかかわり、社会に豊かさをもたらすことを目的とした伝統と現代、個人と社会との結束点だといえます。

画像: 森口邦彦 《友禅着物 白地位相割付文「実り」》 2013年 三越伊勢丹ホールディングス蔵

森口邦彦 《友禅着物 白地位相割付文「実り」》 2013年 三越伊勢丹ホールディングス蔵

第五章 クロス・トランスミッション:森口邦彦 × セーヴル

森口邦彦とフランスの国立陶磁器製作所であるセーヴルとの関係は、責任者のロマーヌ・サルファティが森口の着物をみて深い感銘を受けた2015年に始まります。
そして2016年に開始されたのがセーヴル・マニファクチャ―の職人と異文化/異分野の伝統の技を持つ創作者との間に対話の場を設け、お互いに学びあうことを目的とした「クロス・トランスミッション」というプロジェクトです。
共同作業の成果は、まず森口がデザインしたコーヒーセット「実り」として結実しました。対話と制作を進める中で凹状のソーサーの形状は平らなものに作り替えられ、その面に森口はセーヴル磁器の白地の美しさをいかした「実り」のデザインを配しました。
この過程において、職人たちが余白とモチーフの関係、平面と立体との関係を再発見したことで、現在、絵付け職人が自らの創造性を掘り起こし、長年の修練で身につけた技術とセーヴルの伝統、そして森口のアドヴァイスを介してデザインを展開させていく新たな段階に入っています。

画像: 森口邦彦 《カップ・アンド・ソーサー「実り」》 2016年

森口邦彦 《カップ・アンド・ソーサー「実り」》 2016年

本展開催期間中の京都国立近代美術館1階ロビーには、森口邦彦氏による三越のショッピングバッグを使ったインスタレーションが登場しています。(写真撮影可)
190枚のショッピングバッグを使用した本作は、“フィボナッチ数列による実りの木” と名づけられました。
大小さまざまなショッピングバッグが用いられ、上へ上へと伸びやかなインスタレーション作品です。
こちらのショッピングバッグ、実は各面で線の太さなど模様が異なっています。
インスタレーション作品も中心を軸に表面と裏面が一転し、より動きを伴った作品となっています。
京都国立近代美術館1階ミュージアムショップでは、本展のグッズや図録が販売されていて、図録を購入の際には、三越のショッピングバッグ「実り」に入れて頂けます。

是非、この機会に伝統的な日本の美「友禅」と近代的センス溢れる「デザイン」が織り成す「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン—交差する自由へのまなざし」にお運びください。

展覧会概要

展覧会名 「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン―交差する自由へのまなざし」
会期 2020年10月13日(火)~12月6日(日)
※会期中に一部展示替えがあります。
前期:10月13日~11月8日/ 後期:11月10日~12月6日
開館時間 午前9時30分~午後5時 ※ただし金曜日、土曜日は午後8時まで開館
※入館は各閉館時間の30分前まで
休館日 毎週月曜日、11月24日(火)※ただし11月23日(月・祝)は開館
観覧料 一般:1,000円(800円)
大学生:500円(400円)
※( )内は20名以上の団体および夜間割引(金、土曜 午後5時以降)
※ 高校生・18歳未満は無料*。
※ 心身に障がいのある方と付添者1名は無料*。
※ 母子家庭・父子家庭の世帯員の方は無料*。
*入館の際に証明できるものをご提示下さい
※ 本料金でコレクション展もご覧いただけます。
※ 前売り券は10月12日までの期間限定販売
※ チケット販売所:チケットぴあ(Pコード:685-381)、ローソンチケット(Lコード:52904)ほか主要プレイガイド、コンビニエンスストアなど (チケット購入時に手数料がかかる場合があります)
主 催 京都国立近代美術館、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、日本経済新聞社、京都新聞
特別協力 三越伊勢丹ホールディングス

「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン—交差する自由へのまなざし」@京都 シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項をご記入の上、「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン—交差する自由へのまなざし」@京都 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
チケットの転売は禁止です。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2020年11月23日 月曜日 24:00

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
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  当選無効となります。
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