今回の記事では、”映画祭”について書かせて頂こうと思います。
前回と同様に、映画の分野に興味のあるフィルムスクール学生~今まさに映画製作に取り組んでいる人達へ贈ります。

映画祭とは

映画祭とはまさに字の通り映画のお祭りです。世界各国から映画を集め、それらを紹介(上映)し、表彰する場になります。また合わせてマーケットと呼ばれる商談の場も用意され、各国の映画のセラー(売り手)とバイヤー(買い手)が集まり、売買されます。扱われる映画は、映画祭で上映される作品は勿論ですが、映画祭というイベントで世界各国の業界関係者が一堂に会する場を利用して各々が映画祭とは関係ない作品も多く売買しています。

映画上映における観客は2つに分かれ、映画の買い付け等を目的とした業界関係者と、一般の鑑賞客(その多くは開催地近郊に住む)になります。決して業界関係者の為だけに開催されているものではなくて、誰でも広くチケットを買い求められて鑑賞できるというのがポイントです。

古い参照元ではありますが、2012年の文化庁月報で東京国際映画祭のディレクター矢田部吉彦氏が執筆した下記記事は、映画祭運営側の考える映画祭、という観点で素晴らしいものだったので紹介致します。

映画祭が映画の作り手にもたらすもの

映画祭とはどういうもので、どういう役割をもっているか、ご紹介しました。
続いて、映画祭が如何に映画監督にとってキャリアを紡ぐ足掛かりになるか、お話したいと思います。

映画祭は、映画の作り手である映画監督にとってのショーケースです。監督のセンスと力量を対外的に知らしめ、それにより、次に監督が撮りたい作品に出資したいという人が現れるかも知れませんし、この企画を監督に撮って欲しいという人が現れるかも知れません。

映画は、それを見せる場所と観る人がいなければ認知されません。映画祭は、そうした機会の提供の場と言えます。カンヌやヴェネツィア、ベルリンといった映画祭であればその分世界的な大きな反応が得られます。

映画祭での評価はフラットです。日本で製作された映画が日本国内の興行において当たる壁である、誰が作ったか、誰が出演しているか等は一切関係ありません。商業/非商業、監督やキャストの有名/無名といった作品の出自を問わず、観客の心を動かす作品は評価されます。

日本の映画監督も、毎年世界の様々な映画祭で作品を紹介されています。映画祭での選出又は受賞によりその後の監督のキャリアに大きな影響を与えるという事が、世界各地で起こっています。それはとてもドラマチックな事で、全ての映画監督が目指すべきとは言いませんが、多くの映画監督が意識して良い事だと思います。
(全ての映画監督が目指すべきとは言わない、とは、映画祭の多くがアート系の作品を紹介する場である事に起因します。メジャー志向、エンターテイメント志向の映画監督はまた違ったキャリアの築き方があると思います。)

映画祭が映画監督に何をもたらすか。実際の例を見て頂くのが分かりやすいでしょう。
2019年のベルリン国際映画祭で映画祭史上初となる2冠(「パノラマ観客賞」「国際アートシネマ連盟(CICAE)賞」)を受賞した映画『37セカンズ』のHIKARI監督に関する記事を紹介させて頂きます。

映画祭へのアプローチ

映画祭という場が映画監督に何をもたらすのか、HIKARI監督のインタビューからも窺い知る事ができたと思います。映画祭が万能で必ず良い方向に連れて行ってくれるという訳ではありませんが、映画祭という場がどのような可能性を秘めているのか、感じて頂けたのではないでしょうか。

続いて、どうやって映画祭に選ばれるのか、という点についてお話します。

映画祭は、それぞれのサイトで作品の応募を受け付けています。サイトからエントリー手続きする、というのが基本的な方法です。

それとは別途、映画を選定する映画祭のプログラマーやディレクターと呼ばれる人へ、個別にアピールするやり方が存在します。コネクションの無い人には実現性の低い話になってしまいますが、こういう世界があると知っておけると、コネクションのある人の協力を得られる時に考え方や立ち回りが変わってきます。

日本国内の話で言うと、世界の主要な映画祭関係者の中には、定期的に日本に来日する人がいます。実態として、その際に直接作品をアピールしたり、中にはその人の為の試写を組んでスクリーンで作品を見せたりといった事も行われているのです。

その一つの例示として、川喜多記念映画文化財団という、日本映画を世界に紹介する事に尽力されている財団があります。世界各国の映画祭関係者は、来日の際にはここに立ち寄り、作品の紹介を受けたり試写を観るといった事が行われています。

以前私も、この財団にある試写室※で自身のプロデュース作をロッテルダム国際映画祭のプログラマーに試写した事がありました。その時は残念ながら選出には至りませんでしたが、とても良い機会になりました。(※厳密には東宝東和の試写室だそうです)

この財団の存在も、映画祭への出品を目指す映画監督は知っておいて損はないでしょう。

映画祭エントリーサイト

映画祭へのアナログなアプローチの存在を紹介しましたが、近年はオンラインでの映画祭エントリーサイトなるものも発達してきました。

英語の障壁は少なからずありますが、世界各国の映画祭に簡単にエントリーできる仕組みになっていてかつ対象映画祭も多いので、これから映画祭を目指すという人は入り口として利用してみても良いかと思います。私もこのサイト経由で多くの映画祭との縁を頂いています。

東京国際映画祭が開催中

日本にもいくつかの映画祭がありますが、その中でも一番大きい規模で開催されているのが東京国際映画祭といって良いでしょう。フランス・パリに本部を構える映画製作者団体の国際組織、La Fédération Internationale des Associations de Producteurs deFilms(The International Federation of Film Producers Associations)、通称FIAPFの日本唯一となる公認映画祭です。

今年の東京国際映画祭から、来年のAtemo配給作「君は永遠にそいつらより若い」をTOKYOプレミア2020部門にご招待頂きました。

今年は世界各国の映画祭がコロナの影響で開催中止や延期、オンラインでの開催を余儀なくされていますが、東京国際映画祭はリアルに映画館での上映を行っています。
本作は会期中に2回の上映があったのですが、それぞれ上映後にQAの時間が設けられ、監督・キャストと観客の方々との間で交流を持つ事ができました。通常の興行とはまた違った映画体験になっているところも、映画祭の醍醐味だと感じています。

画像: 東京国際映画祭での「君は永遠にそいつらより若い」ワールドプレミア舞台挨拶にて

東京国際映画祭での「君は永遠にそいつらより若い」ワールドプレミア舞台挨拶にて

今年の東京国際映画祭の開催は11月9日(月)まで。「君は永遠にそいつらより若い」の上映は既に終了しましたが、新たな映画に出会う為、私はまたこれから会場へ向かいたいと思います。

和田有啓
1983年神奈川県横浜市生まれ。
スポーツ取材の会社からキャリアをスタートさせ、その後、松竹芸能、電通、DLEを経て2017年に独立。フリーランスとして複数の企業と提携し映画の企画/プロデュース/配給/宣伝を行った後、2019年に自身の会社となる株式会社Atemoを設立。2020年春から日本初の会員制映画製作マッチングサイト「Green-light」を運営。

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