名優エミリオ・エステベス監督の最新作『パブリック 図書館の奇跡』を7/17(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開となります!

画像: © EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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図書館という、誰もが利用したことのある身近で物静かな空間を舞台にした“あっと驚く”ヒューマン・ドラマが誕生。記録的な大寒波の到来により、緊急シェルターがいっぱいで行き場がないホームレスの集団が図書館のワンフロアを占拠。突如勃発した大騒動に巻き込まれたひとりの図書館員の奮闘を軸に、予測不可能にして笑いと涙たっぷりのストーリーが展開していく。
ある公共図書館の元副理事がロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイにインスピレーションを得て、完成までに11年を費やし監督したのは名優、エミリオ・エステベス。

この度、本作の問いかけをきっかけに、コロナ禍でより露わになった、日本の図書館、美術館、駅、公園など公共性を持つ空間の、現在抱える問題やその未来について、日本各地の“公共”のエキスパートの方たちを繋いでともに考えるオンライン座談会を2夜連続配信いたしました。

『パブリック 図書館の奇跡』公開記念
映画を通し考える、日本の公共性を持つ空間のあり方と未来

第1夜 7/7(火)18:00〜19:30

画像: 第1夜 7/7(火)18:00〜19:30

・司会:岡本真(アカデミック・リソース・ガイド*株式会社 (arg)代表、著書『未来の図書館、はじめます』)
--*実空間・情報空間の融合、実践的なデザインプロセス、徹底したリサーチを軸とした公共・商業施設及び地域のプロデュース事業や、ウェブ技術を中心とした産官学民連携のコーディネート事業を行う。--

・登壇:
福島幸宏(東京大学大学院 情報学環 特任准教授)
嶋田学(奈良大学 文学部 文化財学科 教授・司書課程)
谷合佳代子(公益財団法人大阪社会運動協会・エル・ライブラリー:市民ボランティアと寄付で支えられている労働専門図書館)
岡野裕行(皇學館大学文学部国文学科准教授)
桂まに子(京都女子大学図書館司書課程講師)

画像: 【第1夜 7/7(火)】映画『パブリック 図書館の奇跡』から考える、日本の《公共性を持つ空間》のあり方と未来 youtu.be

【第1夜 7/7(火)】映画『パブリック 図書館の奇跡』から考える、日本の《公共性を持つ空間》のあり方と未来

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第2夜 7/8(水)19:00〜20:30

画像: 第2夜 7/8(水)19:00〜20:30

・司会:岡本真

・登壇:
田中元子(株式会社グランドレベル代表取締役社長、喫茶ランドリー*オーナー)「どんなひとにも自由なくつろぎ」という理念のフランチャイズにより、それぞれの居心地の良い空間、美味しい食事、小さなやりたいを実現している「店舗・スペース」
平賀研也(前県立長野図書館長)
川上翔(NPO法人ビッグイシュー基金 プログラム・コーディネーター)

画像: 【第2夜 7/8(水)】映画『パブリック 図書館の奇跡』から考える、日本の《公共性を持つ空間》のあり方と未来 youtu.be

【第2夜 7/8(水)】映画『パブリック 図書館の奇跡』から考える、日本の《公共性を持つ空間》のあり方と未来

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第1夜は、主に関西圏の図書館にまつわるエキスパートたちが集合。「エンターテインメントとして良質で、とても面白かった!」という興奮で盛り上がりつつも、まずは、「図書館って何?」というテーマでスタート。
本を貸してくれる場所という一般的なイメージにとどまらず、「図書館は、流れゆく日常に、ちょっとした波紋を作る『私』自身の行為を生み出してくれる場所」(嶋田さん) 「人々と情報・アイディアの中継地、夢や目標に向かって行動する人を後押しできる」(桂さん)、また、「居場所、集客など、最近は色々な図書館がありながらも、その中心には必ず“資料”がある」(谷合さん)という広い捉え方をする言葉が並ぶ。さらに、図書館員のあり方についても話がおよび、「この映画では、受け身なばかりでなく、地域に出て行って具体的にニーズをつかむような積極策をとる図書館員の姿も描かれている」(岡野さん)、「2004年の映画『デイ・アフター・トゥモロー』では図書館員は貴重なグーテンベルク聖書の初版本を守る姿が描かれたが、『パブリック』では、もっと他のものも守っている。
それを映画を観た方にはぜひ考えて欲しい」(谷合さん)と、“民主主義の砦”という異名にふさわしく、広い役割を担っているのだという話が展開された。

次に、ここ数年図書館業界の中で注目されているフレーズだという「つながる図書館」というテーマへ。社会の中での図書館のあり方を問い直す言葉ではあるが、「本作を観て、図書館の持つ知と人々をいかに“つなげる”かという原点に立ち返った」(桂さん)、「映画に登場するホームレスたちは、ウォール・ストリートの占拠のことを知って、『自分たちも』と思った。情報を使って立ち上がる力を与えることが図書館にはできるんだ、と思った」(谷合さん)、「過去から蓄積されてきた情報と現在を、時間軸上で“つなげる”場所でもある」(福島さん)、といった、本作が含む図書館機能のエッセンスに触発された意見が並んだ。

次はもう一つ視点を上げて「パブリックとは?」というテーマへ。寄付や会費で運営される民間の施設でありながら、公共図書館として一般に開放している「エル・ライブラリー」の代表の谷合さんは、「公共領域が私的な空間に侵食されている現状だが、私立大学が公共に開かれているケースが増えているように、クロスオーバーが起きているのではないか?」(谷合さん)と語る。また、「“私”と“他者の私”が混じり合うところに公共がある。それには“想像力”も必要。どうやったら“公共”という言葉にふさわしいものが作れるかを、この映画は告発している。劇中では、公的機関である警察と、ホームレスへ支援物資を届ける市民の姿、このコントラストのハッキリした2つの“公共性の表れ”が共存していて興味深い。さらに観客自身の“私”を問いかけているのが胸に迫る」(嶋田さん)、 「《公共》はガバメントではない。そして、現在は公共空間がプライベートセクターに回収されつつあるという大きな流れがある。例えば京都市の小学校の土地は、明治初期にみんなが出し合った土地を、戦時中に市が回収して、今はプライベートセクターに流れている。良し悪しは別として、その中でどう《公共》を作っていくか考えなくてはいけない状況。僕は映画で言えばアンダーソン館長が好き。彼や主人公は《プライベート》な場所を《パブリック》に開こうとしている。新しい社会の可能性を垣間見る」(福島さん)

最後に、「私たちにできること」として、「『ひとたび読むことを学べば、永遠に自由となる』という言葉で知られるフレデリック・ダグラスの肖像が最後の方で映る。そういった、本や読むことへのメッセージがさりげなく出てくるのが本作の良さ。改めて、本をもっと読んでいきたいと思った」(岡野さん)「私も映画を観て、読書欲が湧き上がった。他者が書いた本の言葉や声が糧となり、問題に直面したときに自身の支えとなる。図書館員を目指す学生には、人にも関心を持ってもらいたい。声をかけられる関係性を公共の場で築けるように。」(桂さん) 「図書館の究極の目標は『次の戦争をさせないこと』だと思っている。たかが図書館、されど図書館で、目標とする社会を実現するためのインフラの部分を図書館は用意できる。エル・ライブラリーのように、歴史的な文書を保管する図書館は多い。いつでもわたしたちは過去に立ち返って足元を見直せる、何が間違っていたか、考えるヒントを図書館で探すことができる。」(谷合さん)と締めくくった。

第2夜は、図書館、まちづくり、ホームレスの人々の自立支援と、それぞれ違った立場から《公共》を考えるエキスパートたちが集った。映画の感想については、「ユーモアたっぷりなのがいい!ビッグイシューも大事にしていることです」(川上さん)、「アレック・ボールドウィンが懐かしい」(平賀さん)など、様々な見方で存分に本作を楽しんだ様子。

そして本日のテーマも、 「図書館って何?」からスタート。
東京都墨田区で営む「喫茶ランドリー」の裏テーマは「私設公民館」だという田中元子さんは、「図書という口実を持つ公共空間。勉強しに行く、ぼーっとする、目的にバリエーションがあり、誰でも来ていい場所」、ビッグイシュー基金の川上さんは「映画を観て、いろんな人が借りに来ている、というのが大事なんだと。“知のインフラ”という言い方をよくされるが、“知のセーフティーネット”という役割もあるのかも」。 県立長野図書館長を長年務めた平賀さんは、「長野には大小様々な街があり、図書館は一様じゃないし、来る人も多様。また、人とコミュケーショションしたいという欲求をうまく紛らわせてくれる居場所でもある。映画はホームレスのことを描いているが、引退したおじいさんや、働くお母さんなど、自分自身を投影して観てみて欲しい。」 また、日本各地に図書館を作るコンサルティングの仕事をしてきた岡本さんは、「図書館に行く目的はなくてもいい。知や情報の拠点だという大義はあるが、コロナ禍のように“不要不急”なんて言い出されたら、生きること自体がそうなってしまう。様々な人が様々なものを必要としていて、私たちはそれを勝手に排除する権利はない。図書館に来ている人がただ寝ているとか、本を手にとっていないとか、それもオッケー。図書館のあり方の原型はそこだと思う。」。

さらに、視聴者からの問いをきっかけに、話題はホームレスについて移る。「日本には、道ですれ違ってもわからないほど身なりは綺麗だけど、実は家がなくネットカフェやファストフード店で夜を過ごしている方がたくさんいる。見えないからといって存在しないと思ってはいけないんです」(川上さん)「“サラリーマン”という属性で個人を括れないのと同じように、“ホームレス”にも様々な人がいます」(田中さん)

「街中にベンチを作ろうと呼びかけているが、『ホームレスが寝たらどうするのか?』と言われる。何か問題でも? 『ホームレスなんかに』という、自分の権利を奪われているような被害者意識、さもしさは、公共を語る上で興味があるところ。」(田中さん) 「図書館は“無料”だという誤解が生まれやすいが、私たちは“税負担”という先払いをしている。だからこそホームレスの問題と深く根ざしていて、『住民税を払っていないホームレスは利用する権利があるのか?』という問いが出てきてしまう。しかし、過去には税負担していた時期があるはず。『社会のセーフティーネットとは?』という話に大きく関わる。」(岡本さん)「映画の中には『自己責任でしょ』という言葉が出てこなかった。日本で台風被害が出たときにホームレスの人が避難所利用を断られた出来事で、ネットニュースのコメント欄などで広がった大きな主張が、『税金を払っていないのに』というものだった。でも、払っていた時期があるし、消費税も払っているし、これから税金の担い手になるかもしれない。そういった想像力が必要なのでは」(川上さん)「我々も、いつホームレスにならないとは限らない。コロナ禍で家を失った人だって沢山いる。」(田中さん)「図書館で意に沿わないサービスをされると『税金泥棒だ』と言ってくる人がいる。あなたの払った税金はあなたのために使っているのではないんです!みんなを支えるために使っているんです!と言いたい。」(平賀さん)「例えば、図書館でホームレスの人の臭いが問題になった場合、今の日本では“一斉排除”なので議論すらされない。そこが不健全だと思う。」(田中さん)「ホームレスの人々も、周りにどう見られているか気にしているし、行政の人に話しかけづらいと感じている。だから、『こんにちは』から始まるウェルカムの姿勢が必要だと思う」(川上さん)

さらに、話題は自然と「パブリックってなに?」というテーマへ「《パブリック》というものがあまりに遠く離れていて、全ての人に平等だと期待している人が多すぎる。良くも悪くも幻想を抱きすぎ。」(田中さん) 「実は、《パブリック》の中に平等という意味は含まれない。《パブリック》という言葉を《公共》と訳したときにボタンの掛け違いがあって、日本国憲法の中でうたわれている『公共の福祉に』という言葉は本来“Common Wealth”であり、『わたしたちにとって良きこと』、つまり決して制度や権力や社会全体という話ではない。この映画のタイトルもそのように捉えてはいけないと思う。」(平賀さん)、「《パブリック》な場であることを理由に排除する動きがある。同時に、社会と接点を持てる場も《パブリック》である。映画の中にもその両方が出てくるが、後者のあり方を目指していかなくてはいけないと思う。」(川上さん)、「最近、《パブリック》の“パブ”の語源はラテン語の“陰毛”だと聞いて示唆的だった。大人は、生きるだけで必死の子どもと違い、他人をおもんぱかることができる。《パブリック》に完成形はなく、植物のように手をかけてみんなで育てていくもの。」(田中さん)「監督は、劇中でホームレスの人々を均一的に描くのは暴力的だからやめようと意図したそう。みなさんが理想とするパブリックって何ですか?という問いかけですよね」(川上さん)

「今ある慣習やシステムや善悪の基準って、私たちがこの手で作ってきたもの。あたかも、『誰かが作り上げたシステムの中に私たちはいて、私たちは無罪だ』というのではなく、『より良く変えていくためにはどうしたらいいのか』を自分たちで考えていきたい」(岡本さん)「この映画を見て、 “自治”(=自分たちで決めること)の多様さをどれだけ抱え込めるかということだと思った。“Voice”や“Noise”を上げて意思を示せば、自分たちのコミュニティを抱え込んでいる《パブリック》を変えられる。また、今までは一手に自治を担っていた公立の場も、図書館という空間を起点にして、様々なコミュニティを抱えられるようになってほしい。それと街のみんなが作る《パブリック》が繋がっていけば、本当に社会全体に色んな“自治”のコミュニティが広がると期待している」(平賀さん)

最後に、「私たちができること」として、「1ミリでも世の中をよくするための具体策は、挨拶!大切なのは、『大きな声』と、『諦めない』こと!一人一人違うことと、共感と。その両方を受け止めながら挨拶を交わしていきたい」(田中さん)「ユーモアをもって、声を伝えていくこと。また、先日息子が生まれまして…一生懸命育てること、それがパブリックのためにできることだとも思っている」(川上さん) 「最近、焚き火屋さんを始めた。自分で開いている場を作っていきたいという気持ちをもっている。また、図書館の方々に伝えたいとこととして、図書館で色んなコミュニティが生まれる、また、地域で困りごとを抱えた人たちが対話できる場をつくる、お手伝いをしてほしい」(平賀さん) 「福島県の須賀川市に震災復興として市民交流センターをつくるお手伝いをしたが、その後水害で被災されたとき、そこで市民活動が生まれていて感動した。個人としては、そういった自治が生まれる仕事を続けていきたい。また、皆さん、雑誌『ビッグイシュー日本版』を買ってみたり、この映画を劇場で観て語りあったり、ぜひ行動してみませんか」(岡本さん) と各々が語りかけ、座談会を締めくくった。

『パブリック 図書館の奇跡』本予告

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名優エミリオ・エステベスの監督最高傑作-“あっと驚く”ヒューマン・ドラマ『パブリック 図書館の奇跡』本予告

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<STORY>
米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート・グッドソン (エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられる。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由だった。約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、3階に立てこもった彼らと行動を共にし、出入り口を封鎖する。それは“代わりの避難場所”を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張やメディアのセンセーショナルな報道によって、スチュアートは心に問題を抱えた“アブない容疑者”に仕立てられてしまう。やがて警察の機動隊が出動し、追いつめられたスチュアートとホームレスたちが決断した驚愕の行動とは……。 

製作・監督・脚本・主演:
エミリオ・エステベス(『ボビー』『星の旅人たち』)

出演:
アレック・ボールドウィン(『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』)、テイラー・シリング(「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」)、クリスチャン・スレイター(『トゥルー・ロマンス』Mr.Robot/ミスター・ロボット」)、ジェフリー・ライト(『007
カジノ・ロワイヤル』)、ジェナ・マローン(『ネオン・デーモン』)、マイケル・ケネス・ウィリアムズ(『それでも夜は明ける』)、チェ・“ライムフェスト”・スミス

2018年/アメリカ/英語/119分/スコープ/5.1ch/原題:The Public/日本語字幕:髙内朝子    
提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド     

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#パブリック図書館の奇跡

7/17(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

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