春の京都国立近代美術館で「チェコ・デザイン 100年の旅」が開催されます。
芸術家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)が生まれ、またフランス絵画から影響を受けたチェコ・キュビズムと呼ばれる独自の様式を生み出したチェコ。
さらにアニメやおもちゃに至るまで、20世紀のチェコは世界を魅了する数々のデザインを生み出した国として知られています。
しかし、その100 年を振り返れば、戦争や占領、そして政変といった刻々と変わる国家の情勢にデザイナーたちが翻弄された世紀でもありました。

本展では、チェコ・デザインの100年を家具やプロダクト、ポスターなど、チェコ国立プラハ工芸美術館所蔵の作品を中心とした約250点の作品により紹介しています。
チェコ・デザインのめざましい進化や発展を感じて頂けるでしょう。
是非この機会に、「チェコ・デザイン 100年の旅」をご覧ください。

画像: アルフォンス・ミュシャ 《ジスモンダ》 1894 年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

アルフォンス・ミュシャ 《ジスモンダ》 1894 年
チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

19世紀後半から20世紀初頭にかけて最も特徴的な装飾の様式といえば、ヨーロッパのアール・ヌーヴォー様式でしょう。生き生きとした自然界のイメージや仕組みを源泉とした様式で、建築と工芸に全く新しい局面をもたらしました。たびたび登場する繁栄、成長、開花のモチーフは、当時の若者の熱狂や、解放を求める動きと呼応して、さまざまな商品、建築インテリア、ファッション、本の装丁、広告に用いられていきました。

また新しい素材による視覚的効果を用いて、アール・ヌー ヴォーは美術工芸品だけでなく工場で作られる日用品に も見られるようになっていきます。なかでも、最も成功したの はアルフォンス・ミュシャ(ムハ)で、彼はアール・ヌーヴォー 様式の装飾を独自のコンセプトに作り替え、並外れた人気を博していきます。

画像: パヴェル・ヤナーク 《クリスタル(結晶)型小物入れ》 1911年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

パヴェル・ヤナーク 《クリスタル(結晶)型小物入れ》 1911年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

チェコではアール・ヌーヴォーの影響が長く続くなか、幾何学的な形に単純化した独自の様式も生み出していきます。この変化のきっかけとなったのが、1905年頃にはすでに存在感を発揮していたオーストリアの建築家オットー・ワーグナーの生徒によるウィーン分離派の幾何学的な作品と、ウィーン工房の影響を受けて制作された工芸品の存在でした。幾何学への志向が表われたのは、まず本の装丁とグラフィック・デザインにおいて でした。

これは、ある意味キュビスムの前兆として捉えられており、応用芸術や建築の形にまで 影響を及ぼしたチェコ・キュビズムと呼ばれ、ヨーロッパでは他に類を見ない様式を生み出します。このような芸術的な発展は第一次世界大戦によって中断されたものの、キュビスムの遺産は、ロンド(円弧の)・キュビスムの装飾様式や、グラフィック・デザインや本の装丁などに受け継がれていきました。

画像: ラジスラフ・ストナル 《耐熱ガラスのティーセット》 1931年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ラジスラフ・ストナル 《耐熱ガラスのティーセット》 1931年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

機能主義の理念は、1920年代に徐々に広がりを見せはじめます。少量生産である手工芸品にとって代わり標準化された工業製品が普及しました。流行の変化によって製品寿命を短くする装飾から解放された機能的な形が求められ、それとともにデザインと素材の品質、そして人間工学および衛生的要求の充足が図られはじめます。
チェコスロヴァキアの実用品のデザインにおいて、機能主義の原則を実現する起点となったのは、住居に関する啓蒙活動や生産販売を行っていた組織「美しい部屋」(クラースナー・イズバ)でした。この組織が注力した工業生産の方向づけを行ったのは 1929年以降「美しい部屋」のアートディレクターを務めた中心デザイナーの一人、ラジスラフ・ストナルです。このようなデザイナーと産業との結びつきと素材の革新により、 食卓を洗練されたものにする多様な食器セットなどが作られていきます。

画像: イジー・シュハーイェク 《花瓶<四季>シリーズより》 1999年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

イジー・シュハーイェク 《花瓶<四季>シリーズより》 1999年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

国境を開いた1989年のビロード革命はチェコスロヴァキアに自由と民主主義をもたら しました。中央集権的組織は徐々に閉鎖され、国営企業は民営化されます。しかし、民営化は多くの場合、破綻を導く結果ともなりました。今まで東側の市場向けだった 輸出商品は、西側でも新しく競争力をもたなければならなくなったのです。
1990年代前半には新たな民主主義体制を代表する様式として、ポストモダンが新たな役割を獲得していきました。ポストモダンは次第にネオモダニズム(または新機能主義)に置き換えられていきましたが、そこにはチェコ・デザインの特異性と栄光、そして1930年代の機能主義の応用美術との結びつきの再現が見られます。

1999年以降、最先端のデザインを俯瞰するイベントとして毎年開催されている「デザインブロック」や、2006 年に始まった、それぞれの分野の制作者に贈られる年間賞である 「チェコ・グランドデザイン」な ど、チェコにおけるデザ インの社会的意義が 見直されています。

画像: ヴァーツラフ・シュパーラ 《小箱《悪魔》》 1921 年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ヴァーツラフ・シュパーラ 《小箱《悪魔》》 1921 年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

チェコのおもちゃ作りの伝統は古く、元来は一般民衆の手作り品を起源とし、19世紀 に木材加工の副産物として発展していきました。20世紀に入ってもなお、おもちゃの生産は続けられますが、社会の変化に応じて変化を遂げ、モダニズムの運動により写実的であることよりも、抽象的な傾向がみられるようになります。
チェコにおける「おもちゃ」作りにおいて、何よりも重要だったのは、子どもの空想を支え、それにより子どもの創造性も支えるということでした。

アール・ヌーヴォー様式の美しい装飾美術から、チェコ・キュビスムの幾何学的なモダンな様式、さらに洗練されたモダンで実用的な様式など、様々な変遷を経て、チェコの芸術は美術作品だけでなく、日常生活における食器や家具、ポスター、アクセサリーやおもちゃなど様々なものに影響を与えていました。
洗練された美しいデザイン、色彩、素材、フォルムなど、「チェコ・デザイン 100年の旅」を是非、お愉しみください。

展覧会概要

会期:2020年3月6日[金]–5月10日 [日] ※3月6日(金)~臨時休館
※3月17日(火)以降の予定についてはホームページをご確認ください。
京都国立近代美術館ホームページ: https://www.momak.go.jp/
 
会場:京都国立近代美術館[岡崎公園内]
開館時間:9時30分–17時(金曜、土曜は20時まで)ただし、入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(ただし5月4日 [月・祝]は開館)
観覧料:一般1,400(1,200)円、大学生1,000(800)円、高校生500(300)円
*( )内は、20名以上の団体料金
*中学生以下、心身に障がいがある方とその付添者 1名は無料(要証明)
*本展の観覧券でコレクション展もご覧いただけます
お問い合わせ:075-761-4111
京都国立近代美術館ホームページ: https://www.momak.go.jp/
主催:京都国立近代美術館、読売新聞社、チェコ国立プラハ工芸美術館
後援:駐日チェコ共和国大使館、チェコセンター東京
協賛:ルフトハンザ カーゴ AG
企画協力:株式会社イデッフ

「チェコ・デザイン 100年の旅」@京都シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項をご記入の上、コートールド美術館展 魅惑の印象派@神戸 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
チケットの転売は禁止です。
☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2020年4月13日  月曜日 24:00
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
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