子供時代に母親の男から虐待されて育ち、夢も希望もなく暮らす男が空き巣に入った家で出会ったのは、同じく母親の男から虐待され、育児放棄されている小学生の女の子だった。

初めて守るべきものができた男は、少女の母親も、親の愛を受けずに育ったと気づき…

映画『ひとくず』は、3歳まで戸籍がなく、実の父親が母親に日常的に手をあげているのを見て育った、「居場所のなさ」「弱者」を身をもって知っている監督・脚本・編集・プロデューサーの上西雄大が、30年以上児童相談所に勤務している児童精神科医師の楠部知子先生から「虐待してしまう大人もまた傷ついている」という実態を耳にし、傷ついた子供だけでなく、虐待をしてしまう大人にも眼を向けてあげてほしいと制作した感動のエンターテイメント。

映画ライターの壬生智裕に、“監督・主演を務める上西雄大の存在感は、まるで『竜二』の金子正次のようであり、『息もできない』のヤン・イクチュンのようであり。つまりはそういう映画だ。”と評された本作。
堀田眞三、飯島大介、田中要次、木下ほうからベテラン俳優が脇を固めており、シネフィル必見の1作となっている。

2月15日に閉幕したロンドン国際映画祭では、外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀主演男優賞(上西雄大)を受賞。
本作は、3月14日(土)より公開の渋谷・ユーロスペースを皮切りに、3月28日(土)より名古屋・シネマスコーレ、4月17日(金)より大阪・テアトル梅田にてほか、横浜シネマ・ジャック&ベティ、京都みなみ会館。神戸・元町映画館などで全国順次公開されることが決定している。

海外映画祭でも絶賛!
虐待する側・される側の双方を描く上西雄大監督・主演『ひとくず』予告

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海外映画祭でも絶賛!虐待する側・される側の双方を描く上西雄大監督・主演『ひとくず』予告

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この度、主演・監督・脚本・編集・プロデューサーの上西雄大のオフィシャルインタビューが届いた。

『ひとくず』
主演・監督・脚本・編集・プロデューサー
上西雄大 インタビュー

Q.『ひとくず』を製作したきっかけをお教えください。

児童相談所の嘱託医をされていた楠部知子先生に虐待のことをお聞きして、あまりに心が痛くなり、その日の夜に脚本を書いて、自分の中で気持ちの整理をつけようとして生まれた作品です。これを世に出すことが役者の僕らの仕事かなと思って、この映画を撮りました。

Q. 30年以上児童相談所に勤務しているという児童精神科医師の楠部先生を取材して、ショッキングだったことをお教えください。

この映画の中にも出てきますけれど、アイロンで火傷の跡をつけられた子供がたくさんいるということです。本当に何人もそういう子供を見たと聞きました。この映画の中では描ききれなかったですが、性的なひどい話もありました。本当に人間がやることではないなと思って、どういうことになればそういうことが起こるんだろうと思いました。

Q. 家庭内暴力は、上西さんにとって身近な存在と聞きましたが、どう身近なのですか?

うちの父親は毎晩のように母親を殴って蹴って、僕は母親をかばって父親と闘っていたという環境にありました。父親は僕には暴力は振るわなかったですが、家の中に暴力があるというのは自分の中にも子供の時からありました。その時は人に言わないし、学校の先生にも言わないけれど、そういうことが毎日夜になれば起こる。今思うと、子供ながらに恥ずかしいという想いを抱えていました。

Q. 脚本を執筆する上で注意した点はどこですか?

描きたかったのは人間の心の中にある良心で、それで負の連鎖を断ち切って、それが救いになるという希望を描きたかったです。おぞましい虐待の実態を描こうとしたのではなく、救いに歩いていける人間がどういう道を辿れるかということを人間ドラマにしたかったです。

Q.上西さんは子供時代に虐待されて育った空き巣の金田かねまさ役で主演し、昨年5月に行われたニース国際映画祭で主演男優賞を受賞されていますが、かねまさ役を演じる上で工夫したところはどこですか?

怯えている人間を描きたかったんです。教養がないことと、虐待に遭ったことで自分の中に大きな傷があることを人に見抜かれたくないということに怯えて、虚勢を張って、人に暴言を吐いて生きている、可哀想な人間をしっかりやろうとしました。ただ暴言を吐くだけの人間、ただのダメな人間をやれば、そこに深みも出ないし、救いに向かう人間の気持ちの揺れも生まれてこないだろうから、常に怯えているものを心の中に置いてカネマサを演じました。

画像: ©上西雄大

©上西雄大

Q.本作には、鞠(まり)を育児放棄する母親・凜と、自分の恋人が息子に暴力を振るうことを黙認する主人公の母親・佳代の二人の母親が出てきますね?

この作品で僕はあえて二人の母親を描きたかったんです。今は時代の中で浮かび上がってきている虐待もありますけれど、時代によって埋もれていた虐待もあります。時代が違う環境にあっても、虐待は同じように存在していたということがあるので、その中心にいる母親はどういう心境かというのを、二人の母親の姿で描こうとしました。あえて回想シーンを多く作って同時進行のように構成したのは、昭和の中にいる母親のスタンスをきちんと表現したいからでした。

Q.金田の「アイス食えば、嫌なことも忘れられるんだ」というセリフが印象的でしたが、実体験からきたのでしょうか?

そうです。父親が暴れて、母親がボロボロになって、精神的なストレスで寝たきりになったんです。父親が散々暴れて、飲みに行くのか女性のところかどこかに行ったと思うんですけれど、その後泣く母親を布団に連れて行き、アイスクリームとかお菓子とかを食べて、嫌な気持ちに区切りをつけるみたいなところは子供の時に何度もありました。

Q.刑事が金田について、「あいつは、あんな風にひねくれて生きて当たり前だ」と理解を示しているのが、ステレオタイプの刑事でなく素敵でしたが、刑事との関係性を描くにあたって、こだわったところはありますか?

ダメなやつで誰もが見放した奴にも、どこかに一人位は理解者がいて、その人間のことを違う角度から見てくれる人がいるといいなと僕は思うんです。違う角度から金田を俯瞰で見てやって、刑事としては三流だと思うんですが、あの刑事は人間味があって、実在していたように思います。

Q.田中要次さんの「俺にもよう、人に言えねぇ前があるんだ。だけど、いつまでもいじけてちゃ、余計暗い道を歩かなきゃいけなくなっちまう」というセリフもぐっときましたが、田中要次さんとは役柄について、何か話をされましたか?

演じていただく前に、脚本を読み込んで頂いていたので、全てわかって頂いていたんですが、確認という意味で、「こいつも何かやったんだろうな。でも頑張ってそれを乗り越えてやってるんだよな?そういう人いっぱいいるもんね」という話はしました。

Q. 木下ほうかさんとは役柄について、何か話をされましたか?

ほうかさんがプロだなと思ったのは、脚本をお渡しして現場に来て頂いた時に、僕がどういうタイプの人間をやってほしいかということを明確に確認されました。ご自分で「こうでないとダメだからこう」とかいうのではなく、監督の僕がこういうタイプの人間をここに置いたという作り手の意図を確認して、演じられていました。

Q. 本作は、最近の日本映画では珍しい男臭さがありますが、どのような映画から影響を受けていますか?

やはり子供の時映画を見て憧れた、高倉健さん、松田優作さん、原田芳雄さんです。そういった方のテイストは僕の中にずっと残っているので、無意識の内にそれがこの映画の中に埋まった気がします。

Q. 主題歌の吉村ビソーさんによる「Hitokuzu」の制作秘話を教えてください。

僕が作詞して、鼻歌で歌ってデータを吉村ビソーさんに送ったら、ビソーさんが「全部はまらないから、これをこのまま歌詞にはできません」とおっしゃって、結構話しながら歌詞をいじりながら仕上げました。ビソーさんはいつも弾き語りの、大阪の味をもったシンガーで、僕の作品は大阪で作っているので、彼とは今後もずっと一緒にやっていだたきたいと思っています。
挿入歌「ひとくずの詩」は、僕の歌詞をそのまま梁原三さんが歌にしてくれました。

Q. 各国の映画祭でご覧になった方たちからは、どのような感想がありましたか?

マドリードでは全員が立ち上がってスタンディングオベーションをして頂いたということですし、外国の方でも同じ所で笑うし、悲しみも十分理解して頂いて、最後に感動してみなさん泣いていらっしゃいます。外国の方でもリアクションは同じで、人間は心は同じなんだなと思っています。

Q.本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?

カネマサは虐待の被害者で可哀想な男で、当然鞠も虐待の被害者の中心にいますけれど、この作品の中で柱として通っているのは、二人の母親のその心と存在と痛みなので、そこにカネマサと鞠を同じように置いて見て頂けたらと思います。

Q. 読者の方にメッセージをお願いします。

虐待を扱っている暗く重い映画だと思われるかもしれませんが、決してそんな映画ではなくて、人間のドラマを描き、むしろ温かい人の心を語りたいと思って作っている映画なので、暗く重い気持ちで劇場を後にすることはありません。安心してぜひ劇場にお越し頂けたらと思います。

画像: 上西雄大さん

上西雄大さん

【STORY】 
生まれてからずっと虐待される日々が続く少女・鞠。食べる物もなく、電気もガスも止められている家に置き去りにされた鞠のもとへ、犯罪を重ねる破綻者の男・金田が空巣に入る。
幼い頃に虐待を受けていた金田は、鞠の姿に、自分を重ね、社会からは外れた方法で彼女を救おうと動き出す。そして、鞠の母である凜の恋人から鞠が虐待を受けていることを知る。
虐待されつつも母親を愛する鞠。鞠が虐待されていると確信した担任教諭は、児童相談所職員を連れてやって来るが、鞠は母の元を離れようとせず、保護する事ができずにいた。
金田は鞠を救うため虐待をする凜の恋人を殺してしまう。凜を力ずくで、母親にさせようとする金田。しかし、凜もまた、虐待の過去を持ち、子供の愛し方が分からないでいた。そんな3人が不器用ながらも共に暮らし、「家族」の温かさを感じ本物の「家族」へと近付いていくが、、、

上西雄大 小南希良梨 古川藍 徳竹未夏
城明男 税所篤彦 川合敏之 椿鮒子 空田浩志
中里ひろみ 谷しげる 星川桂 美咲 西川莉子 中谷昌代 上村ゆきえ
工藤俊作 堀田眞三 飯島大介 田中要次 木下ほうか

監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大

エグゼクティブ・プロデューサー:平野剛 中田徹  
監修:楠部知子

撮影・照明:前田智広 川路哲也
録音:仁山裕斗 中谷昌代  
音楽プロデューサー:Na Seung Chul

主題歌:吉村ビソー「Hitokuzu」
制作:テンアンツ
配給・宣伝:渋谷プロダクション

協賛:㈱リゾートライフ ドリームクロス㈱ 串カツだるま カンサイ建装工業㈱ 高橋鋭一
平野マタニティクリニック ㈱エフアンドエム ㈱中島食品 ALEMO㈱ ㈱USK ㈱ラフト

2019/STEREO/JAPAN/DCP/117min

2020年3月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

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