愛娘を描いた「麗子像」で有名な岸田劉生(1891-1929)。
わずか38年の短い生涯にもかかわらず、多くの傑作を描き、日本の近代美術史に大きな功績を残しました。
劉生は、愛娘を描いた肖像画だけでなく、静物画、風景画といった多彩なジャンルで独創性豊かな作品を描きました。
劉生は西洋の美術に影響を受けたのち、東洋の美術にも目覚め、独自の写実絵画の道を築き、新しい美術を模索する若い画家たちを中心に当時の洋画壇に強い影響を与えました。

没後 90 年を記念して開催する本展には、初期の西洋の印象派に影響を受けた水彩画から 代表作《麗子微笑》(重要文化財)などの肖像画、38 歳で急逝する直前に描かれた風景画まで、劉生の絵画の変遷を辿る珠玉の作品 約150 点が一堂に会しています。
この機会に是非、劉生芸術の魅力をご堪能ください。
※重要文化財《麗子微笑》の展示は 1 月 8 日(水)~2 月 16 日(日)です。
それでは展覧会の構成に従って紹介いたします。

第1章 「第二の誕生」まで:1907-1913

独学で制作した水彩による風景画《緑》からはじまって、フランス印象派に影響を受けた「外光主義」と呼ばれる画風で描いた作品《銀座数寄屋橋》までが、劉生の学習時代の作品とされています。
ゴッホら後期印象派(ポスト印象派)の画家たちに衝撃を受け、1912 年に結成したヒュウザン会(フュウザン会)の展覧会などで発表した、 激しいタッチと鮮烈な色彩による作品が、劉生の画家としての出発点となりました。

画像: 《銀座と数寄屋橋畔》 1910-11 年頃 油彩/板 31.0×23.2cm 郡山市立美術館

《銀座と数寄屋橋畔》 1910-11 年頃 油彩/板 31.0×23.2cm
郡山市立美術館

第2章 「近代的傾向・・・離れ」から「クラシックの感化」まで:1913-1915

1913年には、後期印象派風の表現に違和感を覚え、「近代的傾向・・・離れ」をすることで、独自の写実を探究し始めます。
《B.L.の肖像(バーナード・リーチ像)》をはじめとする「劉生の首狩り」と称される人物画や、自画像を連作するのがこの頃です。
また、結婚や愛娘の誕生によって、主題がキリスト教的な人間像となっていき、ミケランジェロやデューラーといった西洋古典絵画の「クラシックの感化」が見受けられます。           

画像: 《黒き帽子の自画像》 1914 年 3 月 6 日 油彩/板 51.3×39.2cm 個人蔵

《黒き帽子の自画像》 1914 年 3 月 6 日 油彩/板 51.3×39.2cm
個人蔵

第3章「実在の神秘」を超えて:1915-1918

劉生は、開地が進む東京・代々木に転居したこともあり、人間と自然の葛藤を問うような風景画を制作するようになります。同時に、人物画においても、人間への探究がより深くなっていきます。
また、結核の診断(後に誤診と判明)を受けて、戸外での制作を禁止されたことで初めて取り組んだ静物画で、人間の存在意義を問いかける絵画《壺の上に林檎が載って在る》を制作します。
この絵画によるこの絵画による存在論とも 言える作品が、愛娘を描いた《麗子肖像(麗子五歳之像)》(名古屋会場での展示はありません)です。

画像: 《壺の上に林檎が載って在る》 1916 年 11 月 3 日 油彩/板 40.0×29.5cm 東京国立近代美術館

《壺の上に林檎が載って在る》 1916 年 11 月 3 日 油彩/板 40.0×29.5cm
東京国立近代美術館

第4章「東洋の美」への目覚め:1919-1921

以降、麗子は劉生にとって最も重要な主題となります。着物姿や洋装を描いた作品や、鵠沼の風景の中に麗子を描いた《麦二三寸》、そして最も有名な《麗子微笑》(重要文化財)など、劉生は毎年、油彩で「麗子像」を制作します。
また、水彩画や素描でも麗子像や村娘を描きますが、細密に描きこんだ油彩画とは対照的な直截な表現から、「内なる美」と「写実の欠除」の重要な関係性を見いだすことができます。

画像: 《麗子微笑》 重要文化財 1921 年 10 月 15 日 油彩/麻布 44.2×36.4cm 東京国立博物館 Image : TNM Image Archives ※ 展示期間: 1 月 8 日(水)~2 月 16 日(日)

《麗子微笑》 重要文化財 1921 年 10 月 15 日 油彩/麻布 44.2×36.4cm
東京国立博物館 Image : TNM Image Archives
※ 展示期間: 1 月 8 日(水)~2 月 16 日(日)

第5章 「卑近美」と「写実の欠除」を巡って:1922-1926

日本の美術文化への関心が深まるなか、関東大震災での罹災により、京都に移住してからは、歌舞伎や浮世絵のなかに見出した、東洋美術独自の写実表現である「卑近美」を、油彩画の麗子像《二人麗子図(童女飾髪図)》《童女舞姿》などにも反映させています。

画像: 《二人麗子図(童女飾髪図)》 1922 年 3 月 21 日 油彩/麻布 100.3×80.3cm 泉屋博古館分館

《二人麗子図(童女飾髪図)》 1922 年 3 月 21 日 油彩/麻布 100.3×80.3cm
泉屋博古館分館

第6章 「新しい余の道」へ:1926-1929

日本画(宋元院体画風と南画風)と油彩画の表現を会得した劉生は、「新しい道」を歩み始めます。南満州鉄道株式会社の招聘により満洲に出かけ、新しい風景と出会い、《路傍秋晴》をはじめとする初心にかえったような光と色彩に溢れた風景画を制作しますが、帰国直後大変残念なことに急逝してしまい、劉生芸術の世界は幕を下ろします。

画像: 《路傍秋晴》 1929 年 11 月 油彩/麻布 59.5×71.5cm 吉野石膏株式会社

《路傍秋晴》 1929 年 11 月 油彩/麻布 59.5×71.5cm
吉野石膏株式会社

展覧会概要

展覧会名:「没後 90 年記念 岸田劉生展」
会 期:開催中~3 月 1 日(日)     
開館時間:午前 9 時 30 分~午後 5 時、金曜日は午後 8 時まで
いずれも入場は閉館 30 分前まで               
休 館 日:月曜日(2 月 24 日は除く)、2 月 25 日(火) 
観 覧 料:一般:1,400 円(1,200 円)、高大生:900 円(700 円)、中学生以下:無料 ※カッコ内は 20 人以上の団体及び前売料金
会 場:名古屋市美術館 〒460-0008 名古屋市中区栄 2-17-25
〔芸術と科学の杜・白川公園内〕
TEL:052-212-0001  FAX:052-212-0005                     
主 催:名古屋市美術館、中日新聞社、日本経済新聞社、テレビ愛知
後 援:愛知県・岐阜県各教育委員会、名古屋市立小中学校 PTA 協議会
協 賛:大日本印刷、トヨタ自動車、損保ジャパン日本興亜
特別協力:東京国立近代美術館
協 力:名古屋市交通局、JR 東海、近畿日本鉄道
展覧会公式サイト: https://kishida-riusei.com/
巡回先:2019 年 8 月 31 日(土)~10 月 20 日(日) 東京ステーションギャラリー
    2019 年 11 月 2 日(土)~12 月 22 日(日) 山口県立美術館 
※いずれも終了しています。

「没 後 90 年 記 念 岸 田 劉 生 展」cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「没 後 90 年 記 念 岸 田 劉 生 展」@名古屋cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。この招待券は非売品です。転売、オークションへの出品などを固く禁じます。

応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
応募締め切り    2020年2月17日(月)24:00

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