「42nd ストリート」は1933年のWBミュージカル映画「四十二番街」を基にしたブロードウェイ・ミュージカルを映像におさめた作品で、松竹が展開している松竹ブロードウェイシネマの最新作となる。

画像1: ⓒBrinkhoff/Mogenburg

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「四十二番街」はロイド・ベーコンが監督し、華麗なバズビー・バークリーの振り付けが取り入れられ、私の最も好きなミュージカルである。むろん、戦後っ子である私は封切り時には見ていない。
たしか1974年にニューヨークの映画館でリバイバル上映した時に見たのが最初だったと思う。好きが高じて、この作品のVHSビデオが出た時に、ライナーノートを書かせてもらったこともあった。

 ミュージカルと言うとMGM作品が有名だが、第二次世界大戦前のモノクロ映画時代はWB、RKOも優れた作品を作り出していた。特にWBは前述のバズビー・バークリーを擁して、人体をまるで装飾物や万華鏡のイメージのようにみせるショット、カメラが並んだショーガールの足の間をすり抜けていく移動ショットなど、華麗でセンジュアルなイメージで、観客を酔わせたものだった。
それに33年は大恐慌時代の真っただ中、劇中でも「ショーが失敗したら、職を失い生活費をどう稼ごう」と心配するダンサーがいたりと、当時の社会状況が織り込まれていた。

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 42nd ストリートとはマンハッタンを東西に走る道の中でも最も著名な通りで、タイムズ・スクエアとも接しており、人出の多い繁華街であり、劇場も少なくない。70年代には古い映画館がけっこうあり、「吸血鬼ドラキュラ」(58)といった旧作を二本立てで上映していたり、ポルノ専門になっていたところもある。内装はオペラ座かと思ったほど豪華絢爛で、昔の栄華がしのばれて、よけいに転落の悲哀が感じられたものだった。そうした猥雑な雰囲気はその後の再開発で消え去ってしまい、ちょっぴりさみしい。

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 ミュージカルは基本的に映画ストーリーを踏まえており、辣腕演出家ジュリアン・マーシュが再起を期して臨む新作ミュージカル「プリティ・レディ」の準備段階から上演されるまでの過程を描くバック・ステージものになっている。スポンサーの老富豪のお気に入りのドロシーを主役に据えて、ダンサーのオーディションが始まった。田舎から出てきた若いペギーは締め切り後なのに、ダンスを披露してなんとかその他大勢の一人として入れてもらい、最後にはけがをしたドロシーの代わりに主役に起用されるまでのサクセス・ストーリーでもある。

 俯瞰ショットによる人体の幾何学模様は映画ならではの振り付けであり、客席から舞台を見るミュージカルでは無理な部分だと思っていたら、なんと舞台の上部に大きな鏡を斜めに吊るして、ダンサーの踊りを反映させて、観客が見ることができるようにしており、びっくりするととも成程と感心させられた。

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 「42ndストリート」「ヤング・アンド・ヘルシー」「シャッフル・オフ・ツー・バッファロー」といったかずかずの名ナンバーがちりばめられているほか、バ−クリーの他の作品「ゴールド・ディガーズ」「ローマ太平記」「泥酔夢」のナンバーも入っているという増量版だ。
ペギー役にクレア・ハルス、ドロシー役にボニー・ラングフォード、ジュリアン役にトム・リスターが扮し、演出はマーク・ブランデルが手掛けている。舞台ならではの臨場感は、映画がよく出し得ないものだろう。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

42nd ストリート 予告編

画像: 42nd ストリート 予告編 (松竹ブロードウェイシネマ) youtu.be

42nd ストリート 予告編 (松竹ブロードウェイシネマ)

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【STORY】
今は心も体もボロボロに弱っているジュリアン・マーシュは、演出家として新作ミュージカルに全力投球していた。その最中、プレミア前日に、主演女優のドロシー・ブロックが怪我をしてしまう。その代役に選ばれたのは、群舞の中の一人である、ペギー・ソイヤーだった。厳しい世界で、果たしてジュリアンとペギーは成功出来るのであろうか……。

演出・共同脚本:マーク・ブランブル
共同脚本:マイケル・スチュワート
出演:クレア・ハルス、ボニー・ラングフォード、トム・リスター他

英国/2018/ビスタサイズ/135分/5.1ch
日本語字幕スーパー版

公式:
www.instagram.com/shochikucinema/
www.facebook.com/ShochikuBroadwayCinema

配給:松竹 (©BroadwayHD/松竹)

東劇(東京)先行限定公開・なんばパークスシネマ(大阪)・ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)ほか全国順次限定ロードショー中!

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