実の兄弟が長じて法律の両側に位置することになるというアクション映画にありがちな設定の作品。骨肉の争いは少年時代から始まり、今では倒すか倒されるかというギリギリのところまで来ている。互いに敵意をむき出しにしながら、やはり肉親の情がほのみえるといった、べたなメロドラマをてらいもなく織り込んで、観客の心理を盛り上げようとするあたり、韓国映画らしいショウマン・シップである。見るべきは、その語り口と格闘描写のうまさといったところか。ちなみに題名のヒョンジェとは兄弟の意味だ。

画像1: ©️2018 CION Pictures All rights reserved

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 事故で両親を亡くして養護施設で育ったデジュとテソンの兄弟。
双子だが二卵性なので顔は似ておらず、性格も生き方も正反対だった。二人はともに施設長の娘チャンミに恋していた。テジュは優等生タイプで施設長のお気に入りだったが、テソンは悪い連中とつるんで暴力沙汰が絶えず、施設長に折檻されても反省するどころか、施設を飛び出してしまう。

 20年後、テジュはソウルの警官となり、テソンは釜山最大の密輸組織マリカーンの幹部となり、チャンミと同棲していた。釜山で遺物密輸事件が起き、テジュが捜査に協力するため釜山に出向してくる。マリカーンは賭博センター建設用地にただ一つ残る養護施設の地上げをすすめ、テソンはなんとか施設の存続の道をさぐるのだが、施設長は問答無用で彼をはねつける。ボスの座をテソンとサンドゥが激しく争い、そのうえ、テソンはデジュとも決着をつけなければならなかった。

 日本に最も近い韓国南部の大都市釜山を舞台に展開し、日本のやくざも登場するところもあって、その描写、台詞回しの珍妙さには苦笑するほかない。後半に入ってテジュが殺人犯として警察から追われ、テソンとサンドゥの争いがエスカレートしてくると、兄弟の絆、親子の絆、そして兄貴分と舎弟との絆が強調されるようになる。アクション映画の定跡にのっとった作法といえる。

画像2: ©️2018 CION Pictures All rights reserved

©️2018 CION Pictures All rights reserved  

 監督は2001年にSFアクション「HEAVEN ヘブン」(日本ではDVD公開)を手掛けたパク・ヒジュン。テジュに「オオカミの誘惑」のチョ・ハンソン、テソンに「じれったいロマンス」のソンフン、チャンミに「ガラスの城」のユン・ソイが扮している。

エンドタイトルにかぶさってチョー・ヨンピルの「釜山港へ帰れ」が流れ、今風のアクション映画の余韻に浸っていたら、80年代の辛気臭い人情アクションの世界にひっぱられたような印象を受けた。監督は「『釜山港へ帰れ』は、男女の切ない愛を描いた歌です。この歌に出てくる切ない愛のような、兄弟間の愛と失われた純粋な感情を見せたかった」と語っている。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

『ヒョンジェ〜釜山港の兄弟〜』予告編

画像: 映画『ヒョンジェ〜釜山港の兄弟〜』予告編 警官とマフィア、異なる運命をたどる双子の哀しい運命 youtu.be

映画『ヒョンジェ〜釜山港の兄弟〜』予告編 警官とマフィア、異なる運命をたどる双子の哀しい運命

youtu.be

監 督:パク・ヒジュン

キャスト:
ソンフン(「じれったいロマンス」「高潔な君」「アイドルマスター.KR」)、チョ・ハンソン(「これが人生!ケ・セラ・セラ」「3度結婚する女」)、ユン・ソイ、パク・チョルミン、コン・ジョンファン、ソン・ビョンホ、イ・イクジュン、シン・セフィ、

2017年/韓国/114分/カラー/原題:Brothers in heaven/

配給:ブロードウェイ

7/26(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他全国順次ロードショー

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