前作『溶ける』で卓越した演出力と表現力が評価され、第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオンに正式出品されるなど、国内外で注目を集めている新鋭・井樫彩による初長編作品『真っ赤な星』が2018年12月よりテアトル新宿ほか全国順次公開いたします。

この度、シネフィルで公開直前に井樫彩 監督の演出方法にフォーカスしたインタビューをいたしました。以下、インタビューとなります。

井樫彩監督インタビュー

Q.井樫監督の作品は俳優がみな生き生きとしていますが、俳優への演出はどのようにされているのですか?

演出は毎回その役者によって変えています。私は役者が演じているのではなく、その役に入り込み、役そのものになってほしいので、そうなるようにうまく誘導しつつ、基本的には役者に任せて、好きにやってくださいというタイプです。例えば、『溶ける』と『真っ赤な星』ではアプローチの仕方はまったく違います。『溶ける』のときは主役の子の側にいて、相手に向かってボールを投げるような感じです。「これはこういうシーンだから、こう思ってるよね。そしたら、こうだよね」というように、側でボールを投げてあげるように伝える。相手がそれを満たしてくれるなら、後は好きにやっていいよ、というスタンスです。

画像1: 井樫彩監督

井樫彩監督

Q.では、例えばリハーサルを何度も繰り返したり、動作を細かく指示したりというようなことはされない?

そうですね。『真っ赤な星』に関してはまったくしていません。それは弥生と陽という二人の関係性がとても重要だったからです。事前に弥生役の桜井ユキさんともお話ししたのですが、二人を密に関わらせすぎずに、つかず離れずのような関係にしたかった。14歳の女の子が27歳の女性の一挙一動にドキドキしてしまうというやりとりをリハーサルで重ねすぎると、新鮮味がなくなってしまい、ドキドキしなくなる。こちらとしてはそのドキドキを捉えたいから、現場で初めてキスをしたり、初めて触れる瞬間などを大切にしました。

Q.演出についてうかがいたいと思います。井樫監督の作品にはいわゆる「劇伴」がとても少ない印象を受けますが、何か意図があるのでしょうか。

そもそも映画における音楽という要素が難しすぎて、まだ私の手に負えないというのもあります。音楽をつけることで、人物の感情に上乗せもできるし、観ている人を泣かせることもできてしまう。それはとても怖いことです。作り手に意図があるならいいのですが、無駄な上乗せはしたくない。それに気持ちをはやらせるような音楽がついた「過剰な演出」というのがあまり好きではありません。だから『真っ赤な星』では、物語の導入部や本筋に関わってこない部分に「味付け」のようなかたちで音楽を入れています。

Q.次に撮影や映像についてうかがいます。『溶ける』や『真っ赤な星』ではロングショットを多用されているのが印象的です。画面のなかでぽつんと佇む小さな人影は言いようのない孤独や寂しさを感じさせますし、周りに広がる風景や世界の大きさは、まるで彼らとは無関係に存在しているような印象を与えるように思います。

好みの問題もありますが、私は溝口健二監督のカット割りがすごく好きなので、基本的にはワンシーン・ワンカットで撮りたいんです。人物の感情を途切らせずに繋げていきたい。1枚の「画」として綺麗なものが好きですね。左右が非対称な画面だとイライラします。実際には時間的な問題など、様々な事情があってできませんが、本当は全カット「画」として美しいものにしたいですし、そこに流れる空気感も含めて画面のなかに収めたいというのもあります。

画像2: 井樫彩監督

井樫彩監督

Q.撮影前に画コンテを描かれたりはしないのですか。

一応、撮影が難しいシーンなどは描くのですが、結局いらないワンカット、ということになるので、ほぼないですね(笑)。観客にとっては不親切ですが、役者の芝居などを見ていると、カットを割りたくなくなるんです。ワンシーンの撮影だったら、そのワンシーンすべてを通せる芝居を組むので、この画に収まるのであればこのままで良いと思ってしまいます。父親が風景画家で、いつも絵に囲まれた環境に置かれていたせいか、『真っ赤な星』の録音部の柳田さんに「井樫さんは画が絵画的だよね」と言われたことを思い出しました。これからもっと勉強しようと思っています。

(取材・構成:野本幸孝)

■『真っ赤な星』オンライン販売スタート!

11/24(土)19:00~上映時間20分前まで販売。
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/event/

□立見券の販売は劇場窓口のみとなります。
□前売鑑賞券は劇場窓口のみでの対応となります。
□オンラインチケット予約販売はクレジットカード決済のみとなります。
劇場窓口は11/25(日)劇場オープン時より販売致します。

井樫彩監督長編デビュー作『真っ赤な星』本予告

画像: 井樫彩監督長編デビュー作『真っ赤な星』本予告 youtu.be

井樫彩監督長編デビュー作『真っ赤な星』本予告

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■あらすじ

片田舎の病院に怪我をして入院した14歳の陽(小松未来)。彼女はいつも優しく接してくれていた看護師の弥生(桜井ユキ)に対し、特別な感情を抱き始めていた。だが退院の日、弥生が突然看護師を辞めたことを知る。
1年後、陽は買い物の帰り道で偶然弥生と再会する。
そこにいたのは、過去の優しい面影はなく、男たちに身体を売ることで生計を立てている弥生だった。再会後、学校にも家にも居場所がない陽は、吸い寄せられるように弥生に近づく。一方、弥生には誰にも言えない悲しい過去があった。満たされない現実を冷めた目で見つめ、互いに孤独を抱えるふたりは、弥生のアパートで心の空白を埋める生活を始めていく——。

■キャスト:
小松未来・桜井ユキ/毎熊克哉・大原由暉/小林竜樹・菊沢将憲・西山真来/湯舟すぴか・山谷武志・若林瑠海 
大重わたる(夜ふかしの会)久保山智夏・高田彩花・長野こうへい/中田クルミ(声の出演) PANTA(頭脳警察)

【脚本・監督】井樫彩

■スタッフ:
【エグゼクティブ・プロデューサー】松坂喜浩
【プロデューサー】菅原澪、島野道春
【アソシエイト・プロデューサー】髭野純、夏原健
【撮影】萩原脩【照明】仁藤咲【録音・整音】柳田耕佑【衣装】藤山晃子【ヘアメイク】藤原玲子 【美術】内田紫織【助監督】満岡克弥【編集】小林美優【カラリスト】川村尚寛【音楽】鷹尾まさき【スチール】北島元朗、大塚健太郎【デザイン】田中進

2018/日本/カラー/3.1ch/16:9/101分 
製作・配給:映画「真っ赤な星」製作委員会
配給協力:SDP
©「真っ赤な星」製作委員会

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12月1日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

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