18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、3人の俳優がそれぞれ1人2役に挑んだ異色のラブミステリー『ポル トの恋人たち〜時の記憶』が11月10日よりシネマート新宿・心斎橋ほかにて全国公開がスタートいたしました。

この度、公開に伴い柄本佑さん×中野裕太さんのスペシャルな対談インタビューをお届けします。

近年は主演映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』(’18)や『きみの鳥はうたえる』(’18)が公開され、今作で日本人奴隷とエリート会社員の2役に挑戦した柄本佑さんと、昨年は日本と台湾の合作映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』(’17)で主演を務め、今作では、日本人奴隷、そしてブラジルからの移民という2役を演じた中野裕太さん。

お二人にポルトガルでの撮影秘話などを中心に、お聞きしました。

映画作りの現場は世界共通なんだということを知れた

ーー今作は18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、柄本さんと中野さん、そしてアナ・モレイラさんが2役に挑戦した異色のラブミステリーですが、台本を最初に読んだ時はどんな感想を持ちましたか?

柄本:一方はほとんど台詞がない役でもう一方は日本語だけじゃなく英語まで話せるという役でしたし、更に時代も違うので二つの映画を同時に撮る感じに近いのかなと思いました。

中野:ちょっと変わってる映画ですよね。西洋の時代劇に日本人が出てるのってあんまり観たことないでしょ?

柄本:確かに!観たことないですね!

画像1: 映画作りの現場は世界共通なんだということを知れた

ーーポルトガルのロケーションもどれも素敵でした。

柄本:過去パートのロケーションは特別に作った街並じゃなくて、ポルトガル北東部の古都ギマランイスで撮っているんです。中世の街並がそのまま残っていて、そこで実際に人が暮らしているのも不思議で。ああいう歴史ある街並を歩いていると気持ちがいいんですよね。僕はそんなに海外に旅行に行かないので、“どこを歩いても世界遺産だ!”と感動しっぱなしでした(笑)。

中野 僕もポルトガルに行くまではどういうところか全く想像できなかったんですけど、行ってみると自然もあって街並も綺麗で、資本主義に汚染されてないのが良いなと思いました。

柄本:時間に追われてない感じも良かったですよね。

中野:帰りたくなくなるぐらい良かった(笑)。

画像2: 映画作りの現場は世界共通なんだということを知れた

ーー中野さんは撮影後に2度ポルトガルに渡航されたと聞きました。

中野:ロドリゴと衣装スタッフのスザンナさんがご夫婦なんですけど、お二人のご家族とはいまだに仲が良くて、プライベートで遊びに行った時に1ヶ月ほど、家に泊めてもらったりして一緒にいました(笑)。

柄本:1ヶ月ってすごくないですか?(笑)。

中野:パリも一緒に行ったから、お二人の家に滞在したのは10日ちょいだけどね。今でもほんとによく電話で話してます。

柄本:マジですか(笑)。

中野:悩み事を相談したりすると3時間ぐらい話してたり(笑)。スザンナが僕のことを弟のように接してくれて、仕事のことも恋愛のこともなんでも話せるんです。今まで生きてきたなかでここまで色々と話が合うのはスザンナぐらいなんじゃないかなって。そういう人に出会えて良かったなと心から思います。

柄本:この映画が人生の転機になったと言えるんじゃないですか?

中野:遠い親戚にやっと出会えたみたいな(笑)。でも冗談抜きで、そうかもしれない。

柄本:今作を機にポルトガル語が話せるようになったのも凄いですよね。

中野:なんで30歳超えてから受験生みたいに勉強しなきゃいけないんだろうと最初は思ったけど(笑)、もう他の言語は学びたくないと思ったぐらい必死でやりました。もともとイタリア語とかフランス語とかラテン系の語学を話せたので、まだ近い感じの言語で良かったですけど。

柄本:僕の場合は台本に書いてある英語の台詞をしゃべるだけで日常会話は全然。撮影以外でコミュニケーションが取りたいときは知ってる単語を散りばめて、それを相手に解読してもらっていました(笑)。でもああいう場に放り込まれると頑張ってみようという気持ちになります。なるべく自分から話しかけてみようという意識ではいました。

画像: スタイリスト:猪塚慶太 ヘアメイク:星野加奈子

スタイリスト:猪塚慶太
ヘアメイク:星野加奈子

柄本佑
1986年、東京都出身。黒木和雄監督の映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。主な出演作に映画『十七歳の風景~少年は何を見たのか~』(05)、『僕たちは世界を変えることができない。~but, we wanna build a school in Cambodia』(11)、『臨場・劇場版』(12)、『横道世之介』『フィギュアなあなた』『今日子と修一の場合』(13)、『ピース オブ ケイク』『GONINサーガ』(15)、『追憶』(17)、ドラマ「天皇の料理番」(TBS/15)、「あさが来た」(NHK/15~16)、「スクラップ・アンド・ビルド」(NHK/16)「おかしな男~渥美清・寅さん夜明け前」(NHK/16)、「コック警部の晩餐会」(TBS/16)、「平成細雪」(NHK/18)、舞台「エドワード二世」(13)、「百鬼オペラ 羅生門」(17)、「秘密の花園」(18)など。18年は主演映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』『きみの鳥はうたえる』と続いた。また来年の公開待機作に『ねことじいちゃん』『アルキメデスの大戦』がある。

ーー今作で経験したことがお二人の役者人生に大きな影響を与えたのではないかなと思います。ご自身ではどのように感じてらっしゃいますか?

柄本:もう少し時間が経てば“あの時の経験が役立ってるな”とか“あ、いまの芝居は『ポルトの恋人たち』の影響を受けてるな”と思えるかもしれませんが、いまは客観的には感じられなくて。ただ、アナさんやアントニオ・ドゥランエスさんなど海外の役者さんとご一緒できたのは貴重な体験でしたし、それを経て、映画作りの現場は世界共通なんだということを知れたのは良かったと思います。撮影前は“海外ロケって何か凄いことが待ってるんじゃ!?”と思っていたんですけど、いざ行ってみたらそんなに日本と違わないじゃん!って(笑)。カメラマンと監督が日本人だったのもあるかもしれませんが、他のスタッフさんはみんなポルトガル人で、例えば特殊メイクのスタッフさんが特殊メイク技術の高いと有名な日本人のとある方に憧れてこの世界に入ったという話をしてくれてちょっと誇らしい思いをすることもあったんです。そんな会話をすると日本と海外って少し距離が近く感じられるというか、もっと気軽に海外の作品に挑戦できる気がしてくるんですよね。それを知れたことは僕の中で大きな財産になりました。

中野:ほんとそうだよね。僕は先ほどお話したように人生の転機になったと言えるぐらい大きな影響を受けていますから、今後どのような形で反映されるか楽しみです。

画像: ヘアメイク:KATO スタイリスト:平松正啓(Y’s C) コート ¥110,000 HUNTING WORLD(ハンティング・ワールド帝国ホテル店) タートルネックニット ¥220,000 lucien pellat-finet(ルシアン ペラフィネ 東京ミッドタウン店) パンツ ¥58,000 ami alexandre mattiussi(アミ オモテサンドウ) ブーツ ¥90,000 PIERRE HARDY(ピエール アルディ 東京)

ヘアメイク:KATO
スタイリスト:平松正啓(Y’s C)
コート ¥110,000 HUNTING WORLD(ハンティング・ワールド帝国ホテル店)
タートルネックニット ¥220,000 lucien pellat-finet(ルシアン ペラフィネ 東京ミッドタウン店)
パンツ ¥58,000 ami alexandre mattiussi(アミ オモテサンドウ)
ブーツ ¥90,000 PIERRE HARDY(ピエール アルディ 東京)

中野裕太
1985年、福岡県出身。08年、テレビ朝日系「仮面ライダー キバ」で俳優として活動開始。2011年、佐々部清監督『日輪の遺産』で映画デビュー。その後、佐々部監督の映画『ツレがうつになりまして』 (11)、長澤雅彦監督『遠くでずっとそばにいる』 (13)、園子温監督『新宿スワン』 (15)、『新宿スワン2』(17)、ドラマ「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(TBS)、「探偵の探偵」(CX)などに出演。2012年には「レンタル彼女」で舞台初主演。『もうしません!』 (15)で映画初主演。高校時代に米国、早稲田大学時代にイタリア・ミラノ大学に留学し、英語、イタリア語、フランス語を話せるマルチリンガル。日本・台湾合作の主演映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』では北京語セリフに挑戦し、日常会話レベルを話せるほどに。本作ではポルトガル語を習得。2013年に音楽集団「GAS LAW」を結成し、ボーカルと詩を担当している。

ーー海外作品にお二人がまた挑戦されるのも楽しみですが、今後の日本映画業界に期待していることがあればお聞かせ頂けますか。

中野:最近よくサイレント時代の映画を観るんですけど、サイレントムービーが進化して、1920年代頃から徐々にトーキー映画になってきて、それからまだ100年も経ってないんですよね。そう考えるとまだまだ色んな事があっていい。今ではCGや3Dなど技術的な進化が進んでますけど、僕としては写真が動くことから始まった映画のルーツをもっと素朴に楽しんだり味わえるような映画が作られたら素敵なんじゃないかなと思います。

柄本:『カメラを止めるな!』(’17)みたいに単館から異常にヒットして大きなシネコンでかかることもありますけど、それは何年かに1回のことで、シネコンを否定するわけではないんですけど、公開1週間後は集客数によっては1日1回の上映になることも多いんです。例えば午前中に会った友人から“○○観たら傑作だったよ”と教えてもらっても午後の上映がなかったら“今日はもう観れないな…”となってしまうこともあって。映画館好きとしては、もう少し上映回数を減らすのを待ってもらって、一人でも多くの人が良い作品と出会う機会が増えたらいいなと思います。映画は“娯楽を楽しむことの豊さ”を感じることができるので、できれば映画館でゆっくり鑑賞して欲しいです。

インタビュー・文:奥村百恵
写真:田村充
編集:矢部紗耶香

画像3: 映画作りの現場は世界共通なんだということを知れた

映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』 予告編

画像: 映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』 予告編 youtu.be

映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』 予告編

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映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』あらすじ

18世紀リスボン大震災後のポルトガル。復興事業のためにインドからつれてこられた日本人召使の宗次(柄本佑)と四郎(中野裕太)。屋敷で働く雑役女中、マリアナ(アナ・モレイラ)と通わす宗次だったが、理不尽な雇い主にたてついたことで銃殺されてしまう。

21世紀東京オリンピック後の日本。工場縮小に伴い、リストラされ夢破れた日系ブラジル人の幸四郎(中野)は、ポルトガル人の妻マリナ(モレイラ)を残し自死を選ぶ。リストラ宣告をくだしたのは加勢柊次(柄本)だった。

どちらの時代もあらがえぬ運命よって引き裂かれ、その挙げ句に恋人を殺害された女。その恨みを晴らすために選んだ手段は、思いもよらぬものだった…。3人の立場は微妙に入れ替わりながらも、ほとんど同じプロットが反復され、デジャブのように交差し、愛憎の不条理に引き裂かれた人間の業をあぶり出す。

出演:柄本佑、アナ・モレイラ、アントニオ・ドゥランエス、中野裕太
製作:Bando á Parte, Cineric, Inc., Office Kitano
プロデューサー:ロドリゴ・アレイアス、エリック・ニヤリ、市山尚三
脚本:村越繁
撮影:古屋幸一 編集:大重裕二 音楽:ヤニック・ドゥズィンスキ
監督・脚本・編集:舩橋淳
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
配給協力:朝日新聞社
協力:ポルトガル大使館

PG-12
【2018/日本=ポルトガル=アメリカ/139分/シネスコ/5.1ch】
(C)2017『ポルトの恋人たち』製作委員会

シネマート新宿・心斎橋ほか全国公開中!

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