このページを覗いて頂きましたみなさま初めまして!
この度シネフィルさんで記事を書かせて頂くことになりました役者をしております、椿弓里奈と申します。

この企画は昭和の名作で活躍された脇役の方、、今で言う”バイプレイヤー”の方々にスポットを当てて作品を紹介していきたいと思っております!
最近では”バイプレイヤー”という言葉が馴染み、たくさんの魅力ある役者さんが注目されていますよね。
むかーしの邦画が大好きな私はそれこそ原節子さんや高峰秀子さん、山田五十鈴さんの魅力に圧倒されてきましたが、少ししか出てきていないのにとっても印象に残っている人も沢山いらっしゃいました。そしてふと思ったのです、「そんなバイプレイヤーの方にスポットを当てて映画を見るとまた違う面白さが発見できるのでは?!」と。
ゆとり世代のゆったーり女子的見解ですので、気軽にお読みいただければ幸いです。。
※本文にはネタバレも含みますのでご了承ください。

キャラクターの宝庫「幕末太陽傳」

脇役にスポットを当てて映画を紹介するこの企画。
第一回目は川島雄三監督の代表作「幕末太陽傳」
映画好きなら誰もが知っていると言っても過言ではないこの作品。
主役のフランキー堺さんはじめ、南田洋子さん、左幸子さん、石原裕次郎さんなどなど豪華キャストが勢ぞろいのこの作品ですが、脇役もものすごい贅沢なんですよね。
脇役にスポットを当てるという趣旨において、キャラクターの宝庫といえる作品。
改めて映画を見てみたら、スポットを当てたい人が多すぎて第10回目くらいまで幕末太陽傳でいけるのでは?と思ったほどですが、厳選を重ねピックアップさせて頂きました。

2018年8月10日に心不全のため92歳で亡くなられた菅井きんさんもこの映画に出演されています。
”ワンシーン役者”と自称されていたという菅井さん。
素晴らしいキャラクターを今作品でも演じられています。
追悼の意を込めて取り上げさせて頂きます。

《あらすじ》
物語の舞台は文久2年(1862年)の品川宿。一文無しのくせに仲間を引き連れて遊郭・相模屋で豪遊した佐平次(フランキー堺)は居残りを決め込み、店で働きだす。
女郎と客のトラブルを解決したり、攘夷派の志士、高杉晋作(石原裕次郎)たちの滞っていた勘定のカタを取ってくるなど、相模屋で次々おこる問題を解決してはご祝儀をもらって儲けていくちゃかりもの。そんな活躍ぶりに惚れた相模屋の女郎2トップのこはる(南田洋子)とおそめ(左幸子)。
佐平次は二人から口説かれるも、胸の病に女はいけないと言って見向きもしない。
しかし、病は日に日に悪くなっていき-。

その1【年齢不詳の女郎まとめ役】・・・菅井きんさん

まずは相模屋で働くやり手おくま。
女郎達の面倒を見るおばちゃんなんですが、なんと当時の年齢31歳!
今の私と1歳しか変わらない。
なんであんなおばちゃん感が出せるのか、、謎。すごすぎる。
私独自の見方によると、座り方とか歩き方とかからにじみ出ているんだなと思いました。
立方、姿勢がそのポイント。
腰から首にかけての曲がり方が自然だから、自分よりもだいぶ上の年齢設定なのにそれがしっくりくる。だぶん相当身体に負担がかかっているはず。
インナーマッスル相当鍛えているんだろうと勝手に推測。
そして足の使い方、歩き方も絶妙なんです。
内股なんだけど、だらしなく見える(笑)おばちゃん感とゲスさがにじみ出ている。
こうした身体の使い方でこんなにもキャラクターを表現できるものなんだと勉強になります。
”あっちにいい顔、こっちにいい顔”のゲスいおばちゃん感で、相模屋の売れっ子2トップこはるとおそめの関係性を見ている側にさらっと伝える役。
ある時は控えめに、重要な役回りのシーンではちょっと前に出て味を出す。
その存在感の出し引きが絶妙なんです。
お風呂で佐平治が焚くお湯の熱さに耐えるおそめとこはる。
その間におくまがいることでただ二人の張り合いだけではない、巻き添えされている面白さも加わる。
ここぞという時にちゃんとキャラクターを出してきて、顔をニヤニヤさせてくれる人。
おそめが駆け落ちして”金造を殺してしまった”というシーンで、”金造なら大丈夫だよ”ってケロッと言っちゃうとこ、お二人のテンポ感含め最高です!

画像: 幕末太陽傳 デジタル修復版 youtu.be

幕末太陽傳 デジタル修復版

youtu.be

その2【お調子者だけど物語の重要な部分を引っ張っていく】・・梅野泰靖さん

そして相模屋の息子、徳三郎。
調子乗りのボンボン。
今でいうチャラ男(この言葉も古いか・・・)なんですが、役をすっかり自分のものにしておられる。
飄々とした立ち振る舞いや、人の茶化し方。
どこまでが脚本に書かれていることなのか?
キャラクターの土台がしっかりできているから、ふとした仕草やト書きに書かれていないであろうことも自然と出てくるし、役に遊びの部分があるのが面白い。
ダメ息子だけど憎めない、愛されキャラの徳三郎。
ちゃんと愛されているからこそ、お久との駆け落ちも応援したくなるし、佐平次が手伝ってやるという流れもじーんときちゃう。
感動と面白さが同時に味わえるその重要な部分を導いてくれる。

その3【物語の締めくくりを担うゆるキャラおじさん】・・・市村俊さん

最後に出てくる杢兵衞盡。
佐平次がもう潮時だと言って相模屋を抜け出そうとする中、助けをもとめられ渋々向かった先のお客さんで、今まで色んな問題をひょいと解決していた佐平治が初めて困惑する客です。
訛りのある喋り方で、佐平治のリズムがくるってしまう。
千葉から来たという設定なんだとか。
(千葉ってそんなに訛っていたのか)
独自のどっしりとした佇まいとゆっとりとした喋り方。
そしてこはるにぞっこんのかわいいおじさん。
この3つがバランス良く存在している。
こはるに会わせろと言ってきかないおじさんに佐平次は病気だなんだと言ってはじめ誤魔化そうとするのですが、ツッコミ攻撃がはんぱないのでええーい!と「死んだんです」なんてぶっとんだ嘘をついちゃう。
もう、めんどくさいからって適当すぎるよ佐平次さん。
しつこいおじさんは諦めるどころか、嘆き悲しみ。(かわいいポイント)
墓に案内しろと言って聞かない。
結局、お墓に案内することになる佐平次ですが、適当なお墓を案内してお参りさせてる隙に逃げちゃいます。
そしてそのちょー重要なシーンでさらっとキーワードとなるようなセリフを言えちゃうんですよね、おじさんは。
ナイス構成!ナイス采配!ナイスキャスティング!
”極楽も地獄もあるもんか。俺はまだまだ生きるんだ”
そんなおじさんによってこの名セリフが引き出され、そして響くのです。
佐平次は相模屋へ来てはじめてテンポを狂わされちゃう。
そして上辺だけでやり過ごしてきた佐平次の内心が少し垣間見える瞬間でもあります。
本当は病気が怖くて仕方ないのかもしれない。
世の中全部をばかばかしいとあざ笑っているのかもしれない。
ググッと佐平次という人間に深みがでる。
そして生きることへの執着は病を患っていた川島雄三監督自身も写しているようで、命にしがみつくということの素晴らしさを教えてくれる。
素晴らしい脇役たちがパスを回していって最後にゴールを決めるフランキー堺さん。
こんなに人の顔をにやけさせながら、生きるという壮大なテーマをぶっ込める映画が他にあるだろうか。
山田洋次監督に「奇才」と言われる川島雄三監督。
喜劇は人間というものを描くのに究極のジャンルだと思わせてくれる作品です。

幕末太陽傳 デジタル修復版 予告

画像: 幕末太陽傳 デジタル修復版 youtu.be

幕末太陽傳 デジタル修復版

youtu.be

椿弓里奈(つばきゆりな)
1988年生まれ、京都府出身。大阪芸術大学短期大学部卒業後上京し、役者として活動。
主な出演作に【映画】「64-ロクヨン-」瀬々敬久監督、「PとJK」廣木隆一監督【TV】「でぶせん」日本テレビ・Hulu、「犯罪症候群season1」フジテレビ、「フリンジマン」テレビ東京など。
他に今年7月より同じ年の役者6名で”889FILM”を立ち上げ、様々な映画の既存の脚本を使ったワンシーンをyoutubeにて毎週土曜日に配信している。
所属事務所HP⇒http://www.jfct.co.jp/b_tsubaki.html Twitterアカウント⇒@bakiey

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