記録的な猛暑が続いています。また、このたび西日本災害で被災されました皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
今回はそんな暑さを吹き飛ばし、ヨーロッパの避暑地に旅していただけるような展覧会をご紹介いたします。
フランスの名画コレクションで知られるロシア・モスクワのプーシキン美術館から珠玉の風景画65点が来日しています。
東京でも既に好評を博したプーシキン美術館の名品が、この夏、大阪・国立国際美術館で、一堂に会します。
神話や物語の舞台となった風景や、田舎の美しい自然、都会の喧騒、さらに、想像上の理想郷まで、様々な風景画を時代や場所を軸に、17世紀から20世紀のフランス近代風景画の世界をご堪能していただけます。
初来日となる印象派の巨匠・モネの若き日の名作《草上の昼食》では、みずみずしい色彩と筆使いで、太陽の光できらめく森の木々の様子や、爽やかな風、澄んだ空気感さえも伝わってきます。
ロラン、ブーシェ、コロー、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ルソーといった豪華な画家たちの作品も集います。
是非この機会にお見逃しなく、ヨーロッパを旅するように、風景画を鑑賞しましょう。
では、今からいくつかの作品をご紹介いたします。

近代風景画の源流

17世紀のオランダで、神話や聖書の物語などの背景として描かれていた風景が、「風景画」という独立した絵画のジャンルになりました。
フランスの画家たちも興味を持ち、旅先の目新しい風景を描いていきました。

画像: クロード・ロラン 《エウロペの掠奪》 1655年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

クロード・ロラン 《エウロペの掠奪》 1655年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

フェニキアの王女エウロぺに一目惚れしたゼウス。彼は白い牡牛に姿を変えて侍女たちと花を摘んでいたエウロぺに近づき、彼女を連れ去ってしまいます。このギリシャ神話の背景には、暴力的な場面とは対照的に美しい自然が広がっています。風が波を立てる様子や洋上の船などが丁寧に描かれています。

画像: ユベール・ロベール 《水に囲まれた神殿》 1780年代 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ユベール・ロベール 《水に囲まれた神殿》 1780年代 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

自然への賛美

19世紀に入ると、これまでの神話や物語の背景のような創られた自然ではなく、純粋な自然を描いた風景画がバルビゾン派によって確立されました。

画像: ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》 1874年頃 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ギュスターヴ・クールベ 《山の小屋》 1874年頃 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

大都市パリの風景画

大都市パリを基点に風景画の広がりを展望します。
19世紀半ばから、「パリ大改造」(1853~1870年)が行われ街並みが大きく変わります。
印象派の画家たちは生まれ変わったパリを歩き、近代都市の情景を数多く描いてゆきました。
パリを基点に鉄道網が発達すると、人々は郊外に出かけレジャーを気軽に楽しむようになります。画家たちも郊外に取材し、南フランスの海辺や自然豊かな風景を様々に表現していきました。

《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》は、パリのモンマルトルにあった大衆的なダンスホールですが、都会から少し離れた木陰で男女5人が過ごす穏やかなひとときが描かれています。
木漏れ日の光の効果で彼らが楽し気に語らう様子がより一層生き生きとき感じられます。

画像: ピエール=オーギュスト・ルノワール 《庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》 1876年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》 1876年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

画像: ジャン=フランソワ・ラファエリ 《サン=ミシェル大通り》 1890年代 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ジャン=フランソワ・ラファエリ 《サン=ミシェル大通り》 1890年代 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

1908年、マルケはかつてマティスも暮らしたサン=ミシェル河岸19番地に移り住みます。本作品はその部屋の窓から見下ろすように、少し高い視点からサン・ミシェル橋の往来が描かれています。巧みに単純化された形態で、詩情豊かにパリの街角が表されています。

画像: アルベール・マルケ 《パリのサン=ミシェル橋》 1908年頃 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

アルベール・マルケ 《パリのサン=ミシェル橋》 1908年頃 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

パリ近郊―身近な自然へのまなざし

1863年に発表されたマネの《草上の昼食》は、ヌードの人物を草上に描いたことにより、物議を醸すことになりましたが、モネは、大いに影響を受け、1865年、翌年のサロン(官展)に出品するため、縦4メートル、横6メートルを超える大作《草上の昼食》の制作に取り掛かりました。
絵画の主題は、以前のように宗教画や歴史画ではなく、身近な風景画に移行していったのです。
新興ブルジョワジー階級の出現により、クールベの作品にも見られるように狩りの合間に休憩し、食事を楽しむ風景や、ピクニックといった近代生活の情景は、18世紀のロココ美術においても好まれた主題でした。
モネも郊外の森や水辺で余暇を楽しむ新しい生活のワンシーンを描こうとしました。
また、「光の画家」とも言われたモネは、《草上の昼食》で、木漏れ日のきらめきや、爽やかな風、清々しい空気感のような自然の景色を巧みに描きました。

画像: クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

クロード・モネ 《草上の昼食》 1866年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

画像: アルフレッド・シスレー 《霜の降りる朝、ルーヴシエンヌ》 1873年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

アルフレッド・シスレー 《霜の降りる朝、ルーヴシエンヌ》 1873年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

南へ―新たな光と風景

ドランの《港に並ぶヨット》は、マティスの作品が「フォーヴ(野獣)」と批判された1905年のサロン・ドートンヌに展示された記念すべき作品。鮮やかな色彩とリズミカルで自由な筆触でコリウールの港が描かれています。
色彩の置かれなかった白い帆や水面がまばゆい日差しを感じさせ、色彩をよりいっそう強く感じさせてくれます。

画像: アンドレ・ドラン 《港に並ぶヨット》 1905年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

アンドレ・ドラン 《港に並ぶヨット》 1905年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

画像: ポール・セザンヌ 《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》 1905-06年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ポール・セザンヌ 《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》 1905-06年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

海を渡って―想像の世界

1891年ゴーガンは、原始的な暮らしを求めてタヒチ島へ赴きます。タイトルのタヒチ島「マタモエ」の意味は議論されてきましたが、パリで展示されたときにゴーガンはフランス語で「死」というタイトルを付しています。画家のタヒチ滞在を綴った『ノア・ノア』を参照すると、文明化されたヨーロッパ人としての自分の死を意味しているようです。

画像: アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

アンリ・ルソー 《馬を襲うジャガー》 1910年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

画像: ポール・ゴーガン 《マタモエ、孔雀のいる風景》 1892年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

ポール・ゴーガン 《マタモエ、孔雀のいる風景》 1892年 油彩・カンヴァス Ⓒ The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

まだまだ暑い日が続いていますが、ヨーロッパの避暑地を訪れるように、「プーシキン美術館展—旅するフランス風景画」で、「ひとときの涼」を感じていただけますと幸いです。
展覧会グッズ、イベントも充実していて、みどころ満載です。また、美術館近くのレストランやカフェでの割引、優待サービス、インスタ映えグルメメニュ―も豊富です。
この夏、「プーシキン美術館——旅するフランス風景画」を是非とも訪れてみてください。 
 
 

画像: 中之島ダイビル 丸福珈琲店『旅するフランス』イメージプレートドリンクセット 税込み1280円

中之島ダイビル 丸福珈琲店『旅するフランス』イメージプレートドリンクセット 税込み1280円

画像: 中之島ダイビル やきとり ばかや “印象に残る黄色” 税込み850円

中之島ダイビル やきとり ばかや “印象に残る黄色” 税込み850円

展覧会概要

会期:2018年7月21日(土)~10月14日(日)
 
会場:国立国際美術館(大阪・中の島)
 
開館時間:午前10時~午後5時 ※金曜・土曜は午後9時まで  ※入場は閉館の30分前まで
 
休館日:月曜日(ただし、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)、10月8日(月・祝)は開館。9月25日(火)は休館)
 
料金: 
一般   ¥1,500  ¥1,300
大学生  ¥1,200  ¥1,000
高校生  ¥600   ¥500
中学生以下 無料(要証明)
 
※団体は20名以上
※心身に障がいのある方とその付添者1名は無料(要証明)
 
主催:国立国際美術館、朝日新聞社、関西テレビ放送、BS朝日、プーシキン美術館、ロシア連邦文化省
 
後援:外務省、ロシア連邦大使館、 ロシア連邦交流庁(Rossotrudnichestvo)、大阪市教育委員会、堺市教育委員会
 
協賛:大日本印刷、トヨタ自動車、三井物産、京阪ホールディングス、ダイキン工業、大和ハウス工業
 
協力:日本航空、ダイキン工業現代美術振興財団、テレビ朝日
 
アクセス:
・京阪中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩5分
・地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」3番出口より西へ徒歩10分
・JR大阪環状線「福島駅」/JR東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩10分
・阪神「福島駅」より南へ徒歩10分
 
 
《記念講演会》
第1回「プーシキン美術館と珠玉のコレクション」
日時:7月21日(土)14:00~15:30
講師:イリーナ・バカノワ(プーシキン美術館副館長)※通訳あり
会場:国立国際美術館 地下1階講堂
定員:130名
 
第2回「風景画の誕生と崩壊 クロード・ロランからピカソまで」
日時:8月18日(土)14:00~15:30
講師:山梨俊夫(国立国際美術館館長)
会場:国立国際美術館 地下1階講堂
定員:130名
 
《上坂すみれ トークイベント~ようこそロシア文化の旅へ~》
開催場所:国立国際美術館 地下1階講堂
開催日時:9月8日(土)①15:00~16:00、②17:00~18:00(受付開始は各講演時間の30分前)
定員:各回130人
価格:全席指定2,500円(税込) ※プーシキン美術館展公式ブックレット付き
受付期間:7月14日(土)~7月31日(火)
抽選結果:8月1日(水)18時頃、当選メールもしくはチケットぴあ「マイページ」にてお知らせします
 
《プレミアムフライデー 特別イベントテルミン・マトリョミン ロビーコンサート》
出演:濱口晶生(テルミン奏者)、マトリョミン・アンサンブル“Mable and Da” ほか
開催日時:7月27日(金)①18:00~、②19:30〜 各回約30分
会場:国立国際美術館地下1階パブリックスペース
※参加無料(混み合った場合はご参加いただけないことがあります)
※演奏中は、展示室内にも音が響く可能性があります。
 
《子ども向けミニ・レクチャー》 
日時:①8月19日(日) ②8月23日(木)いずれも14:00〜14:30
対象:小学生とその保護者
講師:福元崇志(国立国際美術館研究員)
会場:国立国際美術館地下1階講堂
定員:各回先着130名
開始30分前に開場。参加無料(ただし高校生以上の方は本展の観覧券が必要)
※小学生対象に書き込み式の鑑賞ノートを用意しています(無料)
 
《プレミアムフライデー企画  学芸員による見どころ解説》
日時:8月31日(金)18:00〜19:00
講師:福元崇志(国立国際美術館研究員)
会場:国立国際美術館地下1階講堂
定員:先着130名
開始30分前に開場。参加無料(ただし本展の観覧券が必要)

プーシキン美術館展―旅するフランス風景画@大阪 cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、プーシキン美術館展―旅するフランス風景画@大阪 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2018年8月19日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます

http://pushkin2018.jp

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