「カレイドシアター あなたの、指定席」『ニュー・シネマ・パラダイス』

今週の上映作品は 「ニューシネマパラダイス」。
今月は作曲家エンリオ・モリコーネをフィーチャーしてお送りしていますが、「モリコーネの作品といえばこれ」と思い出す曲には二つのパターンがあると思います。
1つは先週、先々週とお送りした マカロニ・ウエスタンのテーマ曲。
そしてもう一つはこの「ニューシネマパラダイス」に代表される抒情的なメロディの作品です。
この曲を聞くと、映画は見ていなくても、これは聞いたことがあると思われる方も多いのではないでしょうか。「ニューシネマパラダイス」は1988年の作品ですが、イージーリスニングのスタンダード曲になっていますね。
「ニューシネマパラダイス」はジュゼッペ・トルナトーレ監督の長編劇映画2作目で、世界中で大ヒットしました。89年のアカデミー賞外国語作品賞、カンヌ映画祭審査員特別賞も受賞しています。
日本では89年の12月、270席ほどのミニシアター「シネスイッチ銀座」で公開され40週のロングランを記録、観客動員数約27万人、売上げ3億6900万円という驚くべき興行成績を収めました。この記録は、単一映画館における興行成績の記録として未だ破られてはいません。
監督の出身地であるイタリア・シチリア島を舞台にした作品ですが、シチリア島というとマフィア、というイメージを一掃したのはこの映画でしょう。
トルナトーレ監督は「ニューシネマパラダイス」以降もシチリア島を舞台にした作品を何本も作り、故郷の振興に一役買っています。
映画愛にあふれた名作だと思います。トトを演ずるサルヴァトーレ・カシオ君の愛らしいこと、アルフレード役のフィリップ・ノワレの優しくユーモラスなおじさんぶりの見事なこと。ちょっとしか出て来ないけれど中年になったサルヴァトーレを演ずる、往年の二枚目ジャック・ぺランもいい味ですし、脇役の村人たちもいちいちキャラがたっていて微笑ましいリアルさです。
戦後すぐから80年代終わりの現在まで、イタリアの社会状況や、映画史を織り込みながら描いていく老練さに、きっと大ベテランの監督なのだと思っていたら、なんと当時32歳の監督でまだ二本目の長編劇映画と聞いて驚いたものです。
公開版には三種類、イタリア公開版・国際版・ディレクターズカット版があり、それぞれ上映時間が違います。日本では国際版で初公開され、その後ディレクターズカット版が再公開されました。ディレクターズカット版では、青年になってからのトトの恋愛物語の比重が大きくなっていて、少年トトが印象的な国際版とはだいぶイメージが違います。4月にリリースされたデジタル・リストア・バージョンのブルーレイ・ボックスにはこの国際版とディレクターズカット版の二つの本編が入っています。
私もどちらかというとトト版、国際版の方が好きなのでこれはうれしい。日本ではとてもトトの人気が高かったので国際版のファンが多いからなのではないでしょうかね。

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