北島博士のおもしろ映画講座 第17回 『ドロメ』

「ドロメ」は夏休みの演劇部合宿の最中におきる怪異現象を描く青春ホラー映画である。

画像1: (c) 2016「ドロメ」製作委員会

(c) 2016「ドロメ」製作委員会

来年には共学校として統合されることになっている男子高と女子高の演劇部が、一足先に合同で演劇をやろうということになり、男子校の校舎に泊り込んで合宿をすることに。泥打(どろうち)高側は生徒三人に卒業生一人、演劇部顧問桐越教諭の男子計五人、紫蘭(しらん)高校側は顧問一人に部員が四人の計五人の女子。合わせて十一人が一緒に数日間を過ごすことになる。

画像2: (c) 2016「ドロメ」製作委員会

(c) 2016「ドロメ」製作委員会

「男子編」と「女子編」どっちから先に見るかと、宣伝してあったが、「女子編」から先に見ることを推奨する。
女子編ではわからなかった謎が男子編で解明する仕組みになっていて、その謎解きの面白さが逆では味あえないからだ。男女別々、といっても語られるストーリーはかわらない。同じ出来事を視点を変えて描いてあり、女生徒たちしか登場しない場面は、男生徒は目撃していないわけで、そこから生じる情報のギャップが映画のミソとなっている。もちろんガールズトーク、ボーイズトークといった、同性だけの秘かなる“楽しみ”も男女分割構成にした理由の一つであろう。

画像3: (c) 2016「ドロメ」製作委員会

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画像4: (c) 2016「ドロメ」製作委員会

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女生徒たちは泥打高にむかう途中で、泥だらけで首のない仏像と、失踪女性を探すびらを目撃する。桐越教諭は「仏像は泥を好むという泥打観音で、泥をぶつけると願い事が叶うと言い伝えがあった。だが、観音の首がなくなると、村人の失踪が続き、泥のお化けが出現した。どうやら悪意ある村人の祈りがお化けとなったらしい。以来、村人は泥のお化けをドロメと呼ぶようになった」と説明する。びらの女性は泥打高の教師で、失踪の理由も行方もわからないという。あやしげな影や泥手形が見え隠れし、消しても消しても出現する壁の人面画と 気味悪い雰囲気がただようなか、二校合同で「シラノ・ド・ベルジュラック」を上演すべく、演技特訓が始まった。

画像5: (c) 2016「ドロメ」製作委員会

(c) 2016「ドロメ」製作委員会

 女子の中でも一番シャイな小春がヒロインで、男子のなかに中学時代に彼女が告白したら、いきなり逃げ出した颯汰がいたのでびっくり。この二人を男女編それぞれの中心として、ユーモア、ロマンス、ちょっぴりエッチな描写、女性教師失踪の謎の解明といったミステリー要素も盛り込んである。

 そして、中盤からホラー要素が炸裂。保健室のドアのすきまから泥が、まるでココアのように入り込んできて、室内で人間風に変身。ひそかに語りあっていた男女生徒二人に襲いかかってきた。襲撃され傷つくと犠牲者もドロメに変身してしまうというあたり、吸血鬼、ゾンビのようなキャラクターである。ドロメに襲われて、生徒たちはどんどんドロメ化していく。

恐怖の絶叫、逃走と定石どおりに進み、最後はドロメに立ち向かっていくアクションで締めてある。颯汰に小関祐太、小春に森川葵が扮している。
監督は「ライチ☆光クラブ」(これまた奇抜な設定、筋書きのロボットVS人間映画だった)の内藤瑛亮。

https://youtu.be/lhE3qCnSCzc

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。
大好きなSF、ミステリー関係の映画について、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。
 

『ドロメ【男子篇】』『ドロメ【女子篇】』
監督:内藤瑛亮『先生を流産させる会』『パズル』|脚本:内藤瑛亮、松久育紀『先生を流産させる会』
主演:小関裕太、森川葵|出演:中山龍也、三浦透子、大和田健介、遊馬萌弥、岡山天音、比嘉梨乃、菊池明明、長宗我部陽子、木下美咲、東根作寿英 他
製作:「ドロメ」製作委員会(日本出版販売、TCエンタテインメント、TBSサービス、是空、レスパスビジョン)|2016年|カラー|5.1ch|ビスタ|【男子篇】92分|【女子篇】98分|配給:日本出版販売|宣伝:太秦|(c) 2016「ドロメ」製作委員会

2016年3月26日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次、2作品同時“シンクロ”ロードショー!
3/26(土)より福岡中洲大洋、
4/2(土)より大阪・シネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ、以下上映決定!
横浜シネマ・ジャック&ベティ、広島・横川シネマ、京都みなみ会館、桜井薬局セントラルホール以降全国順次公開予定!

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