画像: 「北九州国際ビエンナーレ2015 THE FIFTH」会場風景 photo(C)cinefil art review

「北九州国際ビエンナーレ2015 THE FIFTH」会場風景 photo(C)cinefil art review

世界各地で進行するコラボレーションプロジェクト

北九州国際ビエンナーレは、2007年9月より、北九州市にある門司港の旧JR九州本社ビルの展覧会からスタートし、今回で第5回目を迎えます。
その後、テーマを「移民」に置き換え、前回の2013年「第4回北九州国際ビエンナーレ」は、「i(information)」をテーマに、北九州、ベルリンのZentrum für Kunst und Urbanistik(ZKU)、釜山トタトガ・アーカイヴ・センター、東京の山谷労働福祉会館、シンガポールのプライベート・ミュージアムなど各地で展覧会やスクリーニング、シンポジウムなどを開催してきました。
第5回目「THE FIFTH」は、前回と同じくベルリンのZKU、シンガポールのプライベート・ミュージアム、2016年には「虹のキャラバンサライ あいちトリエンナーレ2016」に、「北九州国際ビエンナーレ in 愛知」で参加します。
主催はNPO法人アート・インスチチュート北九州で、第1回目は大友良英ディレクションによるライブイベントもありましたが、現在はアーティストの古郷卓司、宮川敬一、社会学者の毛利嘉孝が中心になって企画運営をしています。

画像: 写真左-「A *CANDY FACTORY PROJECT / VOICES」古郷卓司 、堀口一也 - 写真右-「American Sitcom/ My addiction to porn」マイク ボード、古郷卓司 - photo(C)cinefil art review

写真左-「A *CANDY FACTORY PROJECT / VOICES」古郷卓司 、堀口一也 -
写真右-「American Sitcom/ My addiction to porn」マイク ボード、古郷卓司 - photo(C)cinefil art review

*candy factory

*candy factoryは、1997年に横浜で、古い飴工場であった倉庫を利用して始めたアートスペースに由来します。
現在は古郷卓司を中心に、様々なアーティストとコラボレーションによるアートワークを展開しています。ネット上のオンラインプロジェクトから、アーティストブックや音楽作品の出版があります。
北九州国際ビエンナーレの他にも、横浜トリエンナーレ2001や、旧山口県庁舎での展覧会、スウェーデンのローゼウムなど、世界各地で展覧会をしています。

「A *CANDY FACTORY PROJECT / VOICES」は、古郷卓司とともに、同じ*candy factoryメンバーの堀口一也により、シンガポール政府の言語教育のポスターを記述したエッセイを、女優の渡辺梓がゲスト出演したサウンドインスタレーションです。
スピーカー付きの家庭用の首振り扇風機ととも渡辺梓の朗読を流します。

画像: 写真左-「Reconstructing a Public Sphere / 公共圏の再構築」ジョン ミラー - 写真右-「Homes for America / Sigonella」フェデリコ バロネッロ、古郷卓司 - photo(C)cinefil art review

写真左-「Reconstructing a Public Sphere / 公共圏の再構築」ジョン ミラー -
写真右-「Homes for America / Sigonella」フェデリコ バロネッロ、古郷卓司 - photo(C)cinefil art review

ビデオプロジェクションによるインスタレーション

ジョン ミラーは、今年の9月にはロンドンのICAで個展をしたアーティストですが、ニューヨークのバッテリーパークプロジェクトと呼ばれるパブリックアート(公共彫刻)と、テロ事件で有名になった9.11(世界貿易センターはバッテリーパークから近く)についてのビデオエッセイの作品「Reconstructing a Public Sphere(公共圏の再構築)」を展示しています。

マイク ボードはスウェーデン在住のアーティストで、古郷卓司とマイク ボードとのコラボレーションワークのシリーズ 「American Sitcom」では、アメリカのオンラインカルチャーのリサーチを題材にした、「American Sitcom / Joining the Air force (アメリカン・シットコム / 空軍への入隊)、「American Sitcom/ My addiction to porn(アメリカン・シットコム / 私のポルノ中毒)」の2作品になります。

古郷卓司とジョン ミラーのベルリン、ニューヨークの恋人募集広告を題材にしたミュージックヴィデオ作品「Dupuis Lovely / Robot」。
北九州国際ビエンナーレは、多文化主義における社会問題や、ポリティカルコレクトネス(政治的妥当性)からきたクリティカルな表現の、ビデオプロジェクションによるインスタレーションが特徴の展覧会です。

画像: 「Homes for America / Sigonella」フェデリコ バロネッロ、古郷卓司 photo(C)cinefil art review

「Homes for America / Sigonella」フェデリコ バロネッロ、古郷卓司 photo(C)cinefil art review

すべてがコラボレーションワークによるインスタレーション

イタリアのアーティスト、フェデリコ バロネッロと古郷卓司のコラボレーションワーク「Homes for America / Sigonella」は、1959年に設立し、2012年に難民収容センターに転用された、シチリア島シゴネッラ米空軍基地の家族用の住宅地である、ミネオ・ハウジングとマリナイ・ハウジングを題材にしたものです。
閉鎖以前の空軍基地のyoutubeの広報映像と、ソーシャルメディア上で、米軍基地とその関係者から、同地区について交わされた情報や、コメントを引用して編纂したものを映像にし、また難民収容所となった現在の様子を撮影した写真作品の2部構成になっています。

画像: 「Island」宮川 敬一+佐々木 玄 photo(C)cinefil art review

「Island」宮川 敬一+佐々木 玄 photo(C)cinefil art review

オルタナティブスペース「Gallery SOAP」

最後に宮川敬一と佐々木玄による彫刻作品「Island」は、尖閣諸島の3Dコピーによる彫刻作品です。
宮川敬一は、会場となるオルタナティブスペース「Gallery SOAP」を、当初は彫刻家の母里聖徳とともにはじめ、現在は中心になって運営しています。
オルタナティブスペースは、美術館や単にギャラリーではなく、相対的に自立したスペースとして知られ、1971年に設立されたニューヨークの「ザ・キッチン」、同じニューヨークの「アーティスツ・スペース」は、若手アーティストを支援し、多くのアーティストを育成してきました。
日本では、1983年から2000年まで運営された、江東区佐賀町にある食糧ビルの「佐賀町エキジビットスペース」がありました。

現在、オルタナティブスペースは、世界各地にアーティストの拠点のスペースとして存在します。
Gallery SOAPも含め、北九州のアートシーンは、宮川敬一に負うところが大きく、展覧会だけでなく、音楽イベントのライブ、レクチャーなど多角的な活動で、ヨーロッパ、アジアなど海外にも広く知られています。
北九州国際ビエンナーレは、オンライン(http://artonline.jp/)でも観れるので、いつでも世界中でその一端を感じることが出来ます。

北九州国際ビエンナーレ2015 THE FIFTH 概要
会  期:2015年9月12日(土) - 10月10日(土)金曜日から日曜日のみの展示
時  間:15:00–20:00
入場料:無料
会  場:Gallery SOAP
     福岡県北九州市小倉北区鍛冶町1-8-23 2F
     phone 093-551-5522
     fax 093-551-5522
     e-mail info@g-soap.jp
出品アーティスト:フェデリコ バロネッロ、マイク ボード、ジョン・ミラー、堀口 一也、宮川 敬一+佐々木 玄、古郷 卓司 *candy factory
公式サイト:http://artonline.jp/

森秀信 プロフィール

1966年長崎市生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了後、現代美術センターCCA北九州リサーチプログラム修了。
主に現代美術の創作活動の他、展覧会のキュレーションやワークショップの企画を担当。専門は現代美術。

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