「しあわせへのまわり道」
「かけがいのない人」「ミニオンズ」「世界で一番いとしい君へ」「ベルファスト71」「クーデター」


「しあわせへのまわり道」は女性監督イサベル・コイシュが描く


「しあわせへのまわり道」は女性監督イサベル・コイシュが描くインド人運転指導員と書評家女性のほのぼのとした関係。
マンハッタンのアッパー・ウェストサイドに暮らす書評家のウェンディ(パトリシア・クラークソン)は、長年連れ添った夫が浮気相手のところに去ってしまった。せめて離れた娘のところへでも行きたいのだが、自動車免許を持っていない。

ある日、タクシーに忘れ物をする。持ってきてくれたのは、シク教徒のインド人運転手、ダルワーン(ベン・キングズレー)で、彼は自動車路上訓練の指導員でもあった。ウェンディは運転訓練の指導を頼んだ。ということで、文化風習の違うアメリカ女性とインド男性の交流がスタートする。運転の初めはおっかなびっくりで、もうやめるとパニックに陥るウェンディ。

映画『しあわせへのまわり道』予告編

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免許を受けようとして教習所に通った人間ならだれでも似たような経験があると思う。
そこのところがリアルな感じで描かれており、ユーモアもあって温かい。
イギリスでサーの名称を授与されたベン・キングズレーがターバンを巻いたインド人を演じていささかも違和感がないという不思議さ。
地味な中年女性だが、生活感のあるパトリシア・クラークソンの適所適材。
最新感覚のアメリカン・コメディーとしてお勧めできる。

ロングライド配給。8月28日TOHOシネマズ日本橋。

「かけがいのない人」は「きみに読む物語」のニコラス・スパークスが原作。「ダルク家の三姉妹」などのマイケル・ホフマン監督。


「かけがいのない人」は「きみに読む物語」のニコラス・スパークスが原作。
「ダルク家の三姉妹」などのマイケル・ホフマン監督。

ある不幸な事件がきっかけで、深く愛し合いながら別れていたドーソン(ジェームズ・マースデン)とアマンダ(ミシェル・モナハン)は、恩人の死をきっかけに20年ぶりに再会する。
恩人の別荘を遺贈された二人は、別荘を片付けながら故人の面影をしのび、今なお愛し合っていることに気づく。

『かけがえのない人』予告編映像

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映画は高校時代にひどい家庭に育ったドーソンと、金持ちのお嬢さんだったアマンダが、どのような運命をたどったかを回想。
その一方で、20年経った現実に立ち戻る。

高校時代のドーソンはルーク・プレイシー。アマンダはアナ・リベラト。
特にルーク・プレイシーが強烈な印象を残す。
ところが20年後のドーソンとアマンダには似ていないので、カットバックされると違和感があって仕方がない。この種の映画の宿命と言えるだろう。

ブロードメディア・スタジオ配給。8月22日YEBISU GARDEN CINEMA。

「ミニオンズ」は「怪盗グル―」シリーズのスタジオ、イルミネーションによるアニメーション


「ミニオンズ」は「怪盗グル―」シリーズのスタジオ、イルミネーションによるアニメーション。「怪盗グル―」に出てくるメガネをかけたバナナのようなおかしな生き物がミニオンズだ。ミニオンズの歴史が初めて明らかにされる。人類が誕生する前から存在した黄色いミニオンズは、いつもその時代で最も強いボスの子分になることで生きながらえてきた。たとえば恐竜、ドラキュラ、ナポレオンなどだ。しかし昨今では強大なボスがいなくなり、ミニオンは絶滅の危機に瀕する。北極にいたミニオンたちのうち、ケビン、ボブ、スチュワートが最強のボスを探す旅に出た。このとぼけてかわいいミニオンズの大活躍。そして怪盗グル―との出会いがやってくる。子供から大人まで楽しめる作品。東宝東和配給。7月31日公開。

「世界で一番いとしい君へ」はイ・ジェヨン監督の韓国映画


「世界で一番いとしい君へ」はイ・ジェヨン監督の韓国映画。「群盗」などのスター、カン・ドンウォンと「カメリア」のソン・ヘギョが出ている。
テコンドー選手を目指す高校生のデス(カン・ドンウォン)とアイドルを夢見るミラ(ソン・ヘギョ)は、17歳の若さで妊娠という事態に遭遇してしまう。しかし二人は反対を乗り越えて結婚。だがもっと大きな試練が待っていた。生まれた男の子は、先天性の老人症だった。

子供の時からすごいスピードで老化が進み、20歳まで生きられないという難病だ。
だが少年は明るく振舞い、かえって親を勇気づけてくれる。
さすがにすごいのは、カン・ドンウォンとソン・ヘギョが10代の少年少女を演じて、すこしもおかしいと思わせないところだ。

実にすがすがしい青春映画の局面がある。それと、息子のアムルを演じた13歳のチョ・ソンモク君の頑張りだ。
アカデミー賞メイクアップ賞3回受賞のグレッグ・キャノンが特殊メークの老けを援けた。
80歳の少年には泣かされる。

ツイン配給。8月下旬シネマート新宿。

「ベルファスト71」はヤン・ドマンジュ監督のイギリス映画


「ベルファスト71」はヤン・ドマンジュ監督のイギリス映画。
1971年北アイルランドはIRA(アイルランド共和軍)の反イギリス活動などで大揺れになっていた。イギリス軍新兵のゲイリー(ジャック・オコンネル)は、そんな北アイルランドの首都ベルファストへ赴任させられる。警察の武器手入れに護衛出動したゲイリーらは、住民たちの激しいデモに遭う。もみくちゃにされたゲイリーら。同僚の1人が撃たれ銃を奪われる。追いかけたゲイリーは孤立し、逆に銃を持った男たちに追われる。

敵地にたった1人。どうやってここから脱出するのか。
誰が敵で誰が味方だかわからない状況は、当時のベルファストを端的に表しているといえよう。
なぜならば、現地のプロテスタント系市民は、比較的英国軍に寛大であり、カトリック系市民は敵対的だった。
しかもIRAも武闘派と和平派に分かれていた。
ゲイリーが知らない裏町を逃げ回るスリルはなかなかのものだが、助けてくれる人も信用できないという疑惑のため、この映画も複雑でわかりにくくなってしまった。

彩プロ配給。8月1日新宿武蔵野館。

「クーデター」はジョン・エリック・ドゥードル監督のアメリカ映画

「クーデター」はジョン・エリック・ドゥードル監督のアメリカ映画。東南アジア某国に起きたクーデターのため家族がさんざんな目に遭い、ひたすら逃げ惑う。

ジャック(オーウェン・ウィルソン)は妻と二人の娘を連れて、アメリカから東南アジアのある国に赴任する。だが空港には会社の出迎えはなく、途方に暮れていると、ハモンド(ピアース・ブロスナン)がホテルまで送り届けてくれる。翌朝、ジャックはホテルめがけて押し寄せる大衆を目にした。外国人と見ると容赦なく殺す。ジャックは家族を連れ屋上に逃げるが、敵が迫ってきた。

「ベルファスト71」も「クーデター」も巻き込まれタイプの映画で、いきなり主人公が危機のさなかに放り込まれる。こういう映画はいちばん臨場感がある。タイでロケした低予算映画だが、最後までか弱い家族が団結して脱出を図ろうとする。その意気やよし。

クロックワークス配給。9月5日新宿バルト9

コラム~野島孝一の試写室ぶうらぶら~シネフィル篇
野島孝一さんてこんなひと
■略歴
1941年9月29日、新潟県柏崎市の自宅で助産婦にとり上げられ誕生。
1964年、上智大学文学部新聞科をどうにかこうにか卒業。
そして、あの、毎日新聞社に入社。
岡山、京都支局を経て東京本社社会部、学芸部へ。
なんと、映画記者歴約25年!
2001年、毎日新聞定年退職。
その後、フリーの映画ジャーナリストになって大活躍。
■現在
日本映画ペンクラブ幹事
毎日映画コンクール選定委員、毎日映画コンクール諮問委員
アカデミー賞日本代表作品選考委員
日本映画批評家大賞選定委員
■著書
日本図書館協会選定図書
映画の現場に逢いたくて
ザ・セックスセラピスト THE SEX THERAPIST
野島 孝一 著

野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。
野島孝一@シネフィル編集部
アニープラネットWEBサイト
http://www.annieplanet.co.jp/

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