『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)を観了。
この作品何度か観ていますが、やはり編集がダメなんですよね…。


それは、寺山さんサイドの問題でなくて、編集権がフランスのプロデューサーにあり、
実際に編集をまとめたのは、『去年マリエンバートで』等のアンリ・コルピでした。

画像1: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

まあ名匠なのですが、寺山さんの作品の構造を理解しているとは言い難く、
ストーリーを軸に編集しているので、
非常に陳腐な物語に見えてしまうんですよね。


それと、ものすごくテンポが悪いので退屈でもある。

画像2: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)


ただ、見どころは東映撮影所に再現された上海の美術セットで、
これほど美術を見せるために作るセットというのは、
日本映画では珍しいと思います。

画像: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980) 咲耶:山口小夜子

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980) 咲耶:山口小夜子

美術監督は、後に『GAOレンジャー』?等を手掛けている山下宏氏で、
他にこれといって代表作がないのが不思議な位、良くできています。

画像3: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

また、いまや日本映画を代表する美術監督、種田陽平が、学生時代にアルバイトでこの映画の美術に参加したということがあり、この作品のDNAが、その後の日本映画に伝承されたともいえるでしょう。

画像4: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

それとヒロインのOを演じる、イザベル・イリエがどうも…なんですよね。
オーディションには、キャロル・ブーケも来ていたというので、
彼女の主演で見てみたかった気はします。

画像: ミュージアムプランナーの映画そぞろ歩き #35「『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980) 」  シネフィル連載-cinefil

映像でいえば、日本映画では美術を見せるためだけのこうしたエンプティ・シーン(空の画面)って、きわめて稀ですね。

寺山修司とは『田園に死す』以来のコンビ鈴木達夫による撮影も素晴らしいです。

画像5: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

この場面なんて、
ちょっとドイツ表現主義の映画のようで、好きです。

画像6: ©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

©cinefil asia『チャイナドール・上海異人娼館』(監督:寺山修司/1980)

仁科 秀昭
:天井桟敷、東宝撮影所などの美術スタッフを経て、
現在はミュージアムプランナーとして、活躍中。

【解説】
 寺山修司が「愛のコリーダ」「ブリキの太鼓」のプロデューサー、A・ドーマンと組んで作った作品。20年代後半、上海租界でカジノを経営するステファン卿に連れられ“O”は、様々な娼婦たちがいる香港の娼館『春桃楼』に連れて来られた。二人の愛の精神的な証として、あらゆる他人を受け入れることにより彼を裏切らないという行為を行うため、ここで娼婦として生活するためである。そこで彼女は、様々な他人に身を任ていく……。
 原作は『O嬢の物語』の続編にあたる『城への帰還』だが、時代と舞台を大幅に変えてテラヤマ・ワールドが展開する。“O”を慕う少年や娼館で繰り広げられる行為、娼婦たちのキャラクター等、全編の殆どは寺山のオリジナル。これに辛うじて“O”とステファン卿に『O嬢』の精神世界が保たれようとしているといった案配である。まわりを固める東洋人の登場人物が全く寺山流であるが故に、全体的なバランスが損なわれており、原作の骨子を損なわんとするナレーションも、あくまでも寺山を主張してやまない演出との軋轢の前に作品を難解たらしめている。ジュスト・ジャカン監督の「O嬢の物語」(75)が原作に忠実であったのと好対照である。ナレーションはフランスのヴェテラン俳優ジョルジュ・ウィルソン、編集は「かくも長き不在」の監督としても知られるアンリ・コルピ。


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