■老いを創造する若々しさ

1913(大正2)年に生まれ、数えで103歳になる今も、毛筆と墨で作品に向かう美術家が、歳月を経てたどり着いた境地をつづった。しかし、それは「老成」とか「悟り」とは別の、もっと若々しい思想にあふれている。

 「生きている限り、前とは別のものができる。この歳(とし)になってできることはある。昨日と今日は違うんですから」

 正月には一家で書き初めをする「お行儀のいい家庭」で育つが、24歳で家を出て以来、ずっと一人。

 「私ははじめっから、この線はもう少しお手本より長く引きたいというところがあった。決まりの通りにすることが性に合わなかったから、わがままだと言われてきた」
 しかし、その「わがまま」を貫き通すことで創作の道が開けた。

 「お手本通りにすることくらい朝飯前ですが、それではつまらない。お手本をまねするのは複製を作ること。アートでは、まねしたものは偽物です」

 人生においても、歳を取ることは「クリエイトする」ことだという。

 「いい歳の取り方を作れたらなあと思うときもあります。お手本がないんだから自分で考え出さなければならない。作品を作るより大変です。いい歳の取り方のハウツーものを出せばベストセラーになるわよ」

 幻冬舎・1080円

参照元
| BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
http://book.asahi.com/reviews/column/2015053100010.html

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