映画『あの日の声を探して(原題: The Search)』。

第84回(2012年)アカデミー賞受賞作『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス監督がフレッド・ジンネマンの『山河遥かなり』(1948年)にアイデアを得て、現代のチェチェンを舞台に声を失った少年とEU職員の女性の奔走を描く感動のヒューマンドラマ。

画像: シネフィル映画短評 第25回 『あの日の声を探して』

ロシアの侵攻が原因で両親がこの世を去り声まで失ったチェチェン人少年が、EU職員の女性と出会い、生き別れた姉と弟を捜すべく必死に生きる姿を映し出す。
主演はアザナヴィシウス監督のパートナーで『アーティスト』のヒロインも務めたベレニス・ベジョ。『キッズ・オールライト』などのアネット・ベニングが共演する。
凄惨なチェチェンの様子に胸を痛めると共に少年の純粋な姿が涙を誘う。
監督は「政治的なメッセージを込めたつもりはない」というけれど…。“戦争”の狂気や愚かさを客観的に淡々と描いてる。
誰に寄り添うでもなく、展開も穏やかで、セリフも少なく、また主人公の少年が声を失っているため戦争映画とは思えないほど静かだけれど、手持ちカメラを多用して全編フィルムで撮影されてることもあって緊張感はハンパない。
背景や状況などの細かい説明を省略した2つの物語でより一層戦争の怖さを伝える構成、演出も良いよね。オープニングとエンディングの繋がりも良くできてる。
役者たちの演技もとにかく自然で素晴らしいんだ。特に少年を演じたアブドゥル・カリム・ママツイエフ君はオーディションで選ばれたド素人。セリフのない難しい役だけれど佇まいや大きくて黒い瞳で感情を上手に表現していて素晴らしい。とにかく瞳がカワイイ。
結局、戦争は家族や人の心、人の未来など大切なものばかり奪う恐ろしいものだってことを改めて考えさせてくれる。
ベレニス・ベジョ演じるキャロルはボクたちの無関心に警笛を鳴らしてくれるようだ。そして些細な支援や些細な想いで少しずつ周囲を変えていくしかないんだってことを教えてくれる。そんなことたちをいろいろと考えさせられた映画。
2015年4月24日(金)公開。

シネフィル編集部 あまぴぃ

あの日の声を探して 本予告

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