夜の葉~映画をめぐる雑感~
#特別寄稿
『マチルド、翼を広げ』木村有理子
「私たち」が物語るとき
この映画は、精神を病む母親と暮らす9歳の子供マチルドについての映画だ。子供は、フクロウを飼っていて、そのフクロウは、人間の言葉を話す。
主人公マチルドが、フクロウと話し始めるシーンを見たときに、「アッ」と思った。子供の頃に、自分は、やはり、心の中に架空の友達を設定して生きていたことがあるからだ。その「友達」の話すことは、当然、自分で考えているわけだから、「自作自演」なのだが、「彼女」は実在感を持って、そこにいて、私は、「私」としてではなく、常に「私たち」として生きていた。「彼女」は、この映画のフクロウのように、私より賢く、少し、超越的な存在で、私は、マチルドのよう...