昨年より新たに開催されている東京国際映画祭プレビューショー。本年も映画活動家の松崎まこと
をMCに迎え、東京国際映画祭の作品選定を務める矢田部吉彦(やたべよしひこ)と、石坂健治(いしざかけんじ)による、10月28日~11月5日で開催する第32回TIFFのプレビュートークイベントが行われた。今年の開催に向け、いまかいまかと待ち構えるTIFFマニアなお客様約60名ほどを迎え、昨年に続き LOFT9 Shibuyaでの2回目の開催となった。

本年も200本ほどの上映本数を予定しているTIFF。忙しい合間をぬって開催9日間ですべての作品を観る事のできる人はいないだろう。そんな中、せっかく足を運ぶのに、事前の手ほどきもなく、上映作品を決め込んでいく方が難しいかもしれない。実は、映画祭の意義の一つに、“世界で初めて”上映を行う映画を目撃できるという利点がある。しかも、世界中の新作映画を1年間かけて観まくった映画ソムリエたちが厳選に厳選を重ねた作品なのだから、そりゃぁ面白くない訳がない。
どうしてこの東京国際映画祭に、いままで自分では行った事もない遠い国々の映画が流れているのか? 普段ニュースでよく見る国際情勢も、全然知らなかった民族の摩訶不思議な文化も、映画を通して裏側を垣間見るだけで、ちょっと今までより興味を持てそうなきがしませんか。
本トークイベントは、今年の絶対ハズせない作品たちの魅力を語る事にとどまらず、映画から見る、超現実だけど本当に存在する知られざる世界や、これから絶対に来る!期待の日本人映画監督情報、そして、ちらっと登壇ゲストの情報なども事前に知れちゃうチャンスにもなっている。

■日時:10月3日(木)19:30~
■会場:LOFT9 Shibuya
■登壇者:
矢田部吉彦
(「コンペティション」部門、「日本映画スプラッシュ」部門他プログラミング・ディレクター)
石坂健治
(「アジアの未来」部門、「クロスカット・アジア」部門他プログラミング・ディレクター)
■MC:松崎まこと(映画活動家) 

【矢田部吉彦コメント】
(欧米エリアの選定中心/今回はコンペティション部門以外の紹介)

今年のTIFFでも200本前後の世界中の作品が上映される事になっています。まずは僕の担当する「日本映画スプラッシュ」部門ですが、今年は非常に特徴的な8本となりました。
この部門は、若手監督発掘、のようなイメージを持たれるんですが、どちらかというとインディーズ映画応援企画に近くて、監督の年齢とか本数とかは実際気にしていないですが、毎年割と若手の作品を結果的に選んでいる傾向にあります。
まずは山田佳奈監督『タイトル、拒絶』。劇団を主催していて俳優としても活躍されている監督ですが、ご自身の戯曲を映画化したものでして。先日の作品発表のすべての映画の中で、主役の伊藤沙莉さんのビジュアルが強烈だったからか、公式HPのアクセス数がダントツナンバー1だったんです。女性の目線から見た、風俗業界の中の女性の姿を描いています。日本のインディーズ映画って、どうしても自分の身のまわりに起こっている出来事を描きがち。でも、この数年、もう少し自分以外の社会にも触れる作品が増えてきて、『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』は、その代表格。非常にシリアスでチャレンジングな作品なので是非観て頂きたい。あとは、こちらも非常に特徴的ですが『花と雨』という作品は、実在のラッパーの生きざまをダイナミックに描いていきます。

この映画祭の1つの課題としてドキュメンタリー映画部門が無いという事があるんですが。その理由に、僕が今まで「山形国際ドキュメンタリー映画祭」に、リスペクトの意味も込めて気を遣っていた、という事もありました。だけどこの数年、あまりにも制作本数が多くて、そろそろ山形の方にも迷惑をかけずにTIFFで上映が出来る環境を作れるんじゃないかと思い始めまして。そこで、今年の目玉作品としてドキュメンタリー映画2本をこの部門に迎える事になりました。
1つは森達也監督『i -新聞記者ドキュメント-』。まだ公開中の話題作『新聞記者』のモデルとなった東京新聞の望月衣塑子記者を追いかけるもので、森監督自身が、今年一番ホットなネタをいち早く見せたい、という事で話を持ち込んでくれたんです。本人はエンタメ作品になるとおっしゃってます、絶賛仕上げ中ですが、面白くない訳がない。どんな最終形になるのか楽しみです。
そして、もう一つは特別上映枠で原一男監督の『れいわ一揆』。名前で分かる通り「れいわ新撰組」の参院選での一連の動きを捉えた作品。鬼才・原一男の新作で上映しない訳にいかないですよね。実は最初の段階で、監督から7時間バージョンのものが送られてきて・・・僕の一番作品を沢山観なければいけない夏の時期に、その段階のものを観る余裕が無かったんです(笑)。その次は4時間くらいでしたか。非常に面白かった。こちらもまだ仕上げ途中ですが、実はまだ最終的に何分の尺になるのか分からなくて、オールナイト枠での上映にしちゃいました(笑)。
この2本のドキュメンタリー映画を並べて上映できるなんて!もう今から興奮しています。もっとSNSとかでバズって欲しいんですけどねぇ。

そして最後に「ワールド・フォーカス」部門の僕の担当作品は、今年はカンヌ・ヴェネツィア・ベルリンの3大映画祭の話題作を集めました。カンヌ映画祭で、僕は50本ほど映画を観たんですが、その中で一番好きな映画が『ファイアー・ウィル・カム』でした。山火事を起こしたという罪で服役していた男が出所して村に戻ってくる所から始まる1人の男と母の慈しみの物語。映像美と、山火事の絵の迫力が圧巻で。この山火事をどうやって撮ったかというと、実は撮影クルーが山の麓に住み込んで、山火事が起こる度にカメラを回しに行っていたという凄い裏話もあるんです。
それと今年は、外国のアニメにも是非注目して欲しい。香港の『チェリー・レイン7番地』は、実写映画ばかりのヴェネツィア映画祭で、唯一のアニメーションだったにもかかわらず、脚本賞を取った凄い作品。60年代の香港に生きる家庭教師の男の話で、最初3D用に作ったアニメーションを、さらに2D用に描き変えることで不思議な奥行きとタッチになっているんです。60年代を舞台に、当時の香港の反英国統治デモの様子が描かれる反面、英国統治を懐かしんでいるのではないかと思わせる描写もちりばめられていて。今の香港の情勢にも通ずるものがあり、今まさに観ておくべき作品のひとつじゃないでしょうか。

画像: 左より矢田部吉彦と石坂健治

左より矢田部吉彦と石坂健治

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