『ニーチェの馬』、『ヴェルクマイスター・ハーモニー』などのハンガリーを代表する巨匠 タル・ベーラ 監督。彼が足かけ4年の歳月をかけて完成させた伝説の傑作『サタンタンゴ』(1994)が、 製作から25年を経て、4Kデジタル・レストア版でシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて9月13日(金)より日本劇場初公開となります。

9月5日(木)に公開に先駆けトークイベントが行われました。
ひと足先に本作を観た映 画作家・振付家・ダンサーの吉開菜央さんとライター・編集者・翻訳者の小柳帝さんを迎え、今までタル・ベーラ作品に触れたことがない人向けにも、改めてタル・ベーラ監督とは何者なのかを解説、そして長尺映画の楽しみ方やタル・ベーラ監督作品に共通する面白さを解説して頂きました!

■日時:9 月 5 日(木) 19:00~20:30
■会場:TOT STUDIO (渋谷区千駄ヶ谷 3-62-1 THINK OF THINGS 2F)
■登壇者:
吉開菜央さん(映像作家・振付家・ダンサー)、小柳帝さん(ライター・編集者・翻訳者)

画像: ■日時:9 月 5 日(木) 19:00~20:30 ■会場:TOT STUDIO (渋谷区千駄ヶ谷 3-62-1 THINK OF THINGS 2F) ■登壇者: 吉開菜央さん(映像作家・振付家・ダンサー)、小柳帝さん(ライター・編集者・翻訳者)

タル・ベーラ監督過去作からの
日本公開最新作 『サタンタンゴ』まで一気に解説!!

『ニーチェの馬』を最後の、56歳の若さで映画監督からの引退を表明したハンガリーの巨匠タル・ベーラ監督。トークイベ ント本編を前に映画ライターの小柳さんが、まずはタル・ベーラ監督について解説。
『サタンタンゴ』の前身となった「Damnation」が1987年に完成。ハンガリーを代表する、ブッカー賞受賞作家クラスナホルカイ・ラースロー(のちに共同脚本で関わる)と音楽のヴィーグ・ミハーイと出会い、その後のほぼ全ての作品でタッグを組む、言うなればタル・ベーラは良き共犯者を見つけた作品となった。
日本で初公開された『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(2000年)に続いて、『倫敦か来た男』(07
年)はタル・ベーラ作品の中では少し異質で、ジョルジュ・シムノンの小説を原作としコルシカ島で 撮影されている。監督が絶筆宣言したのが『ニーチェの馬』(11)登場人物が少なく演劇的な手法を取られている。日本で公開されているのは『ヴェルクマイスター・ハーモニー』『倫敦から来た男』『ニーチェの馬』の3作のみだったが、満を持して『サタンタンゴ』が公開される!
英国映画協会(BFI)の発行する映画雑誌、サイト&サウンド・マガジンが、世界の映画批評家たちへのアンケート調査により選定する 10 年後との古今東西オールタイムベストに選出されている『サタンタンゴ』 は日本ではほんの数回映画祭時に上映されてただけで、劇場公開を待ち望む声も多かった。『サタンタンゴ』 は 25 年前の作品ではあるものの、タル・ベーラ作品全てを包括する作品と言っても過言ではない!

画像: タル・ベーラ監督過去作からの 日本公開最新作 『サタンタンゴ』まで一気に解説!!

★タル・ベーラ作といえばやっぱり魅力の一つは長回し!!

小柳さんによる怒涛のタル・ベーラ監督作解説の後、吉開菜央さんも登壇!
今年のカンヌ国際映画祭短篇部門やあいちトリエンナーレに出品されていることでも話題を呼んでいる吉開さんの作品「Grand Bouquet」やその他の作品について小柳さんは「編集(を多用する)人だと思っていました」とその作風について話始めると、吉開さんは「編集をすることで、綱がる予定のなかったものは繋がるそれが好きです」と語った。一方で「唯一タル・ベーラ的、というか長回しを意識して撮影したのが柴田聡子さんのPV『結婚しました』です」と映像を見せながら自身も長回しに挑戦したことを話した。 タル・ベーラと言えば長回し、と言われる程ワンシーン毎の長さについて言及する人が多い。通常の映画では、ハリウッド 映画の平均はだいたいワンカット7.2秒。小柳さんはその場で計算機を取り出して「今回の『サタンタンゴ』は438分ですね。それを150カットで割るとだいたいワンカット3分なんですよ。それぞれ差もありますがミュージックビデオ1本観るのと同じくらいと言えば分かりやすいかな、とにかく、ワンカットが長いんですよね」と解説。
同じく監督の作品での魅力の一つに踊りのシーンがある。代表的なところで『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の冒頭や、『サタンタ ンゴ』の中盤にも登場するが、吉開さんは「『サタンタンゴ』のダンスシーンは、中盤頃、それぞれの登場人物がここに行き着くまでの物語が重なりがあってるので、全然長いとは感じないんです。一晩のこういう出来事に、みんなの色んな感情があって、 まさにぐちゃぐちゃになっていく様をこのシーンが表しているとも思うんです」と語った。

★吉開「実は私、タル・ベーラ監督にすごく影響されてたことに気付きました!」

タル・ベーラ作品は『サタンタンゴ』と『ニーチェの馬』を見ている吉開さんは「長いからこそ生まれる効果なのか、生き物の命さえ操っているのかと思うほどの動きを見せられるんです。『ニーチェの馬』は家から出られない苦痛を味わいつつ、さらにじゃがいもしか食べられない環境が毎日続くわけですよ。生活環境まじで最悪ですよね!それが一方で映像として見せられた時には強烈で、超カッコいい!あと『サタンタンゴ』を観た時に思ったことは私が大好きなガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』にカットとかすごく似てると思ったんですよ!でも逆で、ガス・ヴァン・サントがタル・ベーラに影響されていることを知って、本当に驚きました。『エレファント』では特に登場人物の後ろ頭を写すシーンが多くて、それがまさにタル・ベーラの手法だったんだなぁ、と」と感激。
それに続き小柳さんは「ガス・ヴァン・サントといえば彼は『GERRY ジェリー』撮影前にタル・ベーラに出会ってしまって、この作品はもろに影響を受けていると思いますね」と熱く語り合っていた。

★『サタンタンゴ』で注目しておきたい登場人物

7時間18分を観るのがまだ不安だという人に、吉開さん&小柳さんの心に残った登場人物を紹介してもらった。「難しいですね!でもお医者さんとイリミアーシュかな。観終わると非常に重要な人物だとわかるんです。お医者さんはこの生活環境下で、巨大で、体を持て余している。晩年のオーソン・ウェルズみたいですね」と吉開さん。
小柳さんが「イリミアーシ役はヴィーグ・ミハーイ。タル・ベーラ作品のほとんどの作品で音楽を担当している人なんですが、職業俳優ではない人がこんな役を演じてるのも面白いところですよね。一見イケメン風だが胡散臭さをぷんぷんに漂よわせてる感じ」というと 「話す言葉も詩的で、洗脳されそうですよね」と吉開さんが笑って答え会場にも笑いを誘う一コマもあった。
その他にも、少女やフタキ、気になる人物がたくさんいるものの、お二人ともネタバレになるから...と喋りたいところを歯を食いしばってセーブ。「色んな人が思っているといるだと思うのですが、いまの商業的な感覚でこれを作ったら映画館で流せないとなると思うのですよ!今求められないものもやりたいんだ、とちょっと抵抗したい気持ちになる時、観れる機会も少ない訳で、やってくれる劇場も少ない訳で、それを観たいって言ってくれる人も貴重な訳ですが、その貴重って本当の贅沢ですよね。面白いなって思ってくれる人がいるってことって最高じゃね!と思うし励ましにもなってる気がするんです」と作り手としての気持ちも交えつつ、本作の公開に並々ならぬ気持ちをアピールした吉開さん。「タルベーラ監督は、我儘に撮ってると思われるかもしれないですが、 三、四年かけてそれこそ人並み以上の苦労してる人だと思うんですよね。その分強度な意思を感じる。奮い立たせるような映画ですよね」と、簡単に作れる訳ではない、この作品の労力と熱意に言及した小柳さん。
観客側も2人の言葉に熱心に耳を傾け、長尺映画に挑戦したい意欲が高まったようだった。

画像: 左より吉開菜央氏(映像作家・振付家・ダンサー)、小柳帝氏(ライター・編集者・翻訳者)

左より吉開菜央氏(映像作家・振付家・ダンサー)、小柳帝氏(ライター・編集者・翻訳者)

驚愕のタル・ベーラ伝説の傑作『サタンタンゴ』予告

画像: スコセッシ絶賛!驚愕のタル・ベーラ伝説の傑作『サタンタンゴ』予告 youtu.be

スコセッシ絶賛!驚愕のタル・ベーラ伝説の傑作『サタンタンゴ』予告

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【STORY】
ハンガリーのある村。降り続く雨と泥に覆われ、活気のないこの村に死んだはずの男イリミアーシュ が帰ってくる。彼の帰還に惑わされ、さまよう村人たち。イリミアーシュは果たして救世主なのか?それとも?

監督:タル・ベーラ(『ニーチェの馬』『ヴェルクマイスター・ハーモニー』『倫敦から来た男』)
原作:クラスナホルカイ・ラースロー
脚本:クラスナホルカイ・ラースロー、タル・ベーラ
音楽:ヴィーグ・ミハーイ
出演:ヴィーグ・ミハーイ、ホルヴァート・プチ、ルゴシ・ラースロー、デルジ・ヤーノシュ
1994年/ハンガリー=ドイツ=スイス/モノクロ/7時間18分/原題:Sátántangó

9月13日(金)よりシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町にて伝説のロードショー!

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