ミュシャの描くエレガントで華やかな女性像は、今なお、世界中の人々を魅了し続けています。
パリで、グラフィック・アーティストとして成功し、アール・ヌーヴォーの旗手として名をなした
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)。
「アール・ヌーヴォー」とは文字通り、「新しい芸術」という意味で、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパを中心に花開いた国際的な美術運動です。
ミュシャの、流れるような曲線で描かれた優美な女性のポスターや装飾パネルは、「線の魔術」とも言われ、美術史上、大きな改革をもたらしました。
  
このたび、ミュシャの没後80年を記念し、「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ ― 線の魔術」が、東京を皮切りに国内6会場で開催されます。
東京のBunkamuraザ・ミュージアムでは7月13日から9月29日まで開催されています。
本展では、ミュシャ財団の監修のもと、ミュシャの手掛けたデザイン、イラスト、ポスター、装飾パネルなど100 点以上に加え、ミュシャの影響を受けた国内外のアーティストの作品、合わせて約250点が集結しています。
ミュシャのグラフィック・アーティストとしての仕事にスポットを当て、「ミュシャ様式」と呼ばれた独創的なスタイルが、どのようにして確立され、後世のアートにどのように影響を与えたのかを探ります。
この機会にミュシャの魅惑の世界へ、是非、お運びください。
それでは、シネフィル上でも本展と同様、5つのセクションに分け、ご紹介しいていきましょう。

1 ミュシャ様式へのインスピレーション

アール・ヌーヴォー様式の典型となったミュシャ様式は、チェコ人であったミュシャが、ウィーン、ミュンヘン、そしてパリという国際芸術都市で修業を積むうちに、新しい時代に呼応した芸術を模索し、創り出した独自の様式でした。
「美の殿堂」と呼ばれたミュシャのアトリエは、モラヴィアの工芸品や、ロココ風の家具、日本や中国の美術工芸品などで飾られていたそうです。
鳥や花などが描かれた装飾的な七宝焼の壺など、ジャポニズム(日本趣味)の影響も受けていたようです。
こうした多種多様な美がミュシャの芸術のインスピレーションとなっていたのでしょう。

画像: パリ、 グランド・ショミエール通りのアトリエにて (セルフポートレート)1892年  ©Mucha Trust 2019

パリ、 グランド・ショミエール通りのアトリエにて (セルフポートレート)1892年 ©Mucha Trust 2019

2 ミュシャの手法とコミュニケーションの美学

ミュシャは基本的に「線の画家」です。
美術教育を受ける前の、幼少期から青年期にかけての素描画に見られる、流麗な描線による日常と空想世界の描写は、のちに手がけるイラストやポスターに使われたリトグラフという版画技術による印刷表現には、理想的なスタイルでした。
ここでは、ミュシャのイラストレータとしての仕事に焦点を当て、アール・ヌーヴォーのグラフィック・アーティストとして手掛けたデザインやイラスト、雑誌の表紙絵などが紹介されています。

画像: アルフォンス・ミュシャ 『オー・カルティエ・ラタン』 誌・表紙 (創刊6周年記念特別号)1898年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

アルフォンス・ミュシャ 『オー・カルティエ・ラタン』 誌・表紙 (創刊6周年記念特別号)1898年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

パリのカーニヴァル・シーズン限定で発行された定期文芸雑誌の表紙のイラスト。
イバラの冠(イースターの受難節の象徴)を被りパリ市の紋章で飾られたマントを羽織った「カーニヴァルの女王」の象徴的な姿と、その足元でパレードに熱狂するラテン地区の学生たちが描かれています。

3 ミュシャ様式の「言語」

ミュシャはより多くの人々が幸福になれば、社会全体も精神的に豊かになる、という考えを持っていました。
ミュシャは、芸術を特権階級だけのものではなく、民衆とともにあるべきだと考え、人々に芸術美を伝えたいと、様々な手法を考えました。
エレガントな女性の姿に花などの装飾モティーフを組み合わせ、曲線や円などを多用しながら独特の構図の形式 ―ミュシャ様式― を創り出しました。
こうしたイラストやポスターなどの商業デザインにおける独特の手法は、ミュシャが人々とコミュニケートするための「言語」でした。

画像: アルフォンス・ミュシャ《ジョブ》1896年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

アルフォンス・ミュシャ《ジョブ》1896年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

タバコの巻紙〈JOB〉の宣伝ポスター。
商品のイメージは、タバコを一服して至福の表情を浮かべる女性。女性の長い髪が形成するアラベスク模様とタバコの煙の曲線が画面に装飾性と躍動感を加えています。
商標名の〈JOB〉も図案化して、背景の装飾モティーフとしています。

4 よみがえるアール・ヌーヴォーとカウンターカルチャー

ミュシャが亡くなってから24年、1963年にミュシャの回顧展が開催され、旋風を巻き起こしました。
これに即座に反応したのが、若者文化の中心地となっていたロンドンとサンフランシスコのグラフィック・アーティストたち。特に、サイケデリック・ロックに代表される形而上的音楽表現に共鳴するものがありました。
一方で、新世代のアメリカン・コミックにも波及し、その影響は今日まで続いています。
サイケデリック・アートの巨匠スタンレー・マウスは、バンドのコンサートのポスターとして、ミュシャの《ジョブ》の色使いを変え、アレンジして使いました。
グラフィックアートを通じてミュシャは今も生き続けています。

画像: アルフォンス・ミュシャ《ツタ》1901年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵  ©Mucha Trust 2019

アルフォンス・ミュシャ《ツタ》1901年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

ツタは常緑樹で厳しい自然環境にも耐えることから、古くから不滅のシンボルとして描かれてきました。
ミュシャはツタの葉で髪を飾った豊満な女性を描き、背後には天から放たれる精神的エネルギーの象徴である矢が描かれています。
トレード・マークの円環モティーフは、フレームとして使われています。

5 マンガの新たな流れと美の研究

与謝野鉄幹が主宰した「明星」第8号(1900年)の表紙を飾ったのは一條成美によるミュシャを彷彿させる挿絵でした。
これをきっかけに、明治30年代半ば、文芸誌や女性誌の表紙を、時には全体的な引き写しを含め、ミュシャやアール・ヌーヴォーを思わせる女性画と装飾からなるイラストレーションが飾ることになります。
与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の表紙デザインも、このミュシャ的装本となっています。

画像: アルフォンス・ミュシャ 《ヒヤシンス姫》  1911年  カラーリトグラフ   ミュシャ財団蔵  ©Mucha Trust 2019

アルフォンス・ミュシャ 《ヒヤシンス姫》 1911年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

1911年にプラハで初演されたバレエ・パントマイムの「ヒヤシンス姫」の宣伝ポスターです。
ヒロインを演じたチェコの人気女優アンドゥラ・セドラチュコヴァが、玉座に座っています。
背後には「連帯」や「永遠」を意味する円環モティーフが描かれています。
こうしたミュシャ様式の特色は後世に引き継がれていきます。

画像: 松苗あけみ 《星座の少女》(『月刊ぶ∼け』 1989年9月号表紙用イラスト)1989年  カラーインク・紙 ©Akemi Matsunae

松苗あけみ 《星座の少女》(『月刊ぶ∼け』 1989年9月号表紙用イラスト)1989年 カラーインク・紙 ©Akemi Matsunae

「コマーシャリズムの要素もありながら、絵画的でもあり、装飾美にもあふれて、それを一幅の絵に収めているのはミュシャだけだった」

演劇のポスターから一躍脚光を浴び、独自の芸術世界を築きあげたミュシャは、アール・ヌーヴォーの代表となりました。
花や葉など自然の植物をモティーフにし、装飾したミュシャ様式は、絵画だけでなく、建築や家具、工芸、生活用品にも浸透していきました。
ミュシャの影響を受けた国内外のグラフィック・アーティストや、現代の日本のマンガ家は多く、時代を超えてミュシャ様式は受け継がれています。
エレガントで美しいミュシャの世界を是非、ご堪能ください。

展覧会概要

開催期間:開催中~9/29(日) *7/30(火)、9/10(火)のみ休館
 
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
 *毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
 
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム

入館料(税込):
        当日    団体
一 般    1,600円   1,400円
大学・高校生 1,000円   800円
中学・小学生 700円    500円
 *団体は20名様以上。
 *学生券をお求めの場合は、学生証のご提示をお願いいたします。(小学生は除く)
 *障害者手帳のご提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください。
 
主催:Bunkamura、ミュシャ財団、日本テレビ放送網、BS日テレ、読売新聞社
 
後援:チェコ共和国大使館、チェコセンター、チェコ政府観光局
 
協賛:大成建設、光村印刷、損保ジャパン日本興亜
 
協力:日本航空、日本通運、CS日テレ、ラジオ日本、TOKYO FM、文化放送、テレビ神奈川
 
企画協力:NTVヨーロッパ

みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ@東京 cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ@東京 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。
 
応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
応募締め切り    2019年8月25日(日)24:00
 
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
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また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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