【 谷健二さん cinefilインタビュー 】

———まず、簡単に自己紹介からお願いします。

映画監督をしながら、cinefil BOOKの編集長をしている谷です。学生時代にサッカーをやっていて、漠然と将来はサッカー関係の仕事に就こうと思っていたのですが選手として挫折をしたこともあり、当時から好きだった映画の世界に憧れて上京をしました。上京後、自主映画の手伝いをしていたのですが、監督になりたいとか本を作りたいという思いは全くなく、気が付いたら広告代理店の仕事に落ち着いていました。安定した生活の中で、「映画のお仕事がしたくて上京してきたんだよな」とふと思い出し、短編の自主映画を撮ったのが映画監督としてのキャリアの始まりです。その後、今から5年ほど前に会社を辞めて独立しました。

画像: 映画監督 /cinefil BOOK編集長 谷健二

映画監督 /cinefil BOOK編集長 谷健二

———監督になっていくなかで、影響を受けた作品はありましたか?

一番影響を受けた作品は、ウェイン・ワン監督の『Smoke』(1995年公開)です。物心ついた頃から、80年代のハリウッド映画や邦画を中心に観ていたと思うんですけど、そういうザ・エンターテインメントな作品じゃなくて、余韻に浸るような映画を観たのが初めてだったんです。映画ってこういうカタチでも良いんだというか、起承転結がはっきりしていてハッピーエンドで終わるだけじゃなくて、観た人の感じ方によって色々な捉え方ができるということを実感し、誰かが何かを考えるきっかけになるような作品を撮りたいなと思いました。

どうして雑誌というカタチでcinefil BOOKを始めたのですか?

とある映画祭で、(WEB版)cinefilのブランディングディレクター角さんとお会いし仲良くなり、僕自身が広告代理店でWEBを専門に仕事をしていたこともあり、色々な話をしていく中で、「本を作りませんか?」とこちらから提案してみたのがきっかけです。年代によって感じ方が違うかもしれませんが、WEBの仕事を長くしていたこともあって、本というものへの憧れが強かったんです。物体として手にできる点や、モノが出来ていく工程がリアルに感じられることが、映画製作ともどこかリンクします。カタチに残るモノで、何か伝えていけることが何かしたかったからという思いもあります。あと新しい本の匂いがなんとも好きですね(笑)

———cinefil BOOKを作るうえで、大変だった部分はどこですか?

取り扱っている作品数が多いので、取材前に膨大な量の作品を観ています。インタビューする監督の過去作品もできる限り観るので、とても多かったです。本の性質上、映画作品だけへのフィーチャーではなくて「人」にインタビューすることを心がけているので、一人一人を理解していくのに時間がすごくかかりました。

画像1: webマガジン「cinefil」の書籍化-cinefil BOOKvol.3発売!シネフィルブックの編集長 谷健二に聞いた"映画の「魅力!」"

———作品・人選びはどのようにされましたか?印象に残っているインタビューは?

もともとcinefilのブランドの持っているコンセプトとして、「メジャーだけでなくインディペンデントも」「役者もだけど監督も」というのが漠然とあることから、他のメディアや雑誌とは差別化したような作品選びや人選びを心掛けています。インタビューはどれも印象に残っていますが、特に2つあげるとしたら、まず1つ目が『寝ても覚めても』(濱口竜介監督・2018年公開)のインタビュー。通常は、映画祭出品が決まった後や上映が決まった後に宣伝としてパブリシティをいただくことが多いのですが、この作品はカンヌ国際映画祭への正式出品が決まる前にインタビューさせてもらったので思い入れがあります。2つ目は、『メランコリック』(田中征爾監督・2019年公開)。東京国際映画祭の授賞式の数日後にインタビューしました。まだ興奮の冷めないままインタビューさせていただいたので、すごく記憶に残っています。

———今後インタビューしてみたい監督さん、役者さんはいらっしゃいますか?

昔からの憧れの是枝監督や黒沢清監督にインタビューしてみたいですね。もちろん山田洋二監督や崔洋一監督にも。それと同時に、松本優作監督や二宮健監督、井樫彩監督など、成長著しい若い監督さんたちも気になっています。ここ10年20年くらいで映画の作り方が劇的に変わってきていると思うので、その違いをどう捉えているのかという部分をいろいろな人に聞いてみたいです。また、インディペンデント映画と商業映画の括りが、曖昧になってきている部分とはっきりしてきた部分があると思っています。興行的にはシネコンがあるので違いがはっきりしていますが、クオリティは予算ほどの差がなくなってきていると感じます。また、いわゆる大手事務所の役者さんでもインディペンデント映画に出演されたりしている時代なのでその点もインディペンデント映画にはとても良い環境だと思います。

———vol.1では「現在」、vol.2では「未来」がテーマですが、vol.3は?

あえて、インタビューしながらテーマを決めるようにしています。旬な作品が多いのでその中で浮かび上がってくるものを期待しています。まだvol.3は企画中ですが、先ほど話したインディペンデントとメジャーや、国内外で注目されている配信系発信の映画など、映画の境目が曖昧になってきていると思うので、現代の映画の立ち位置を掘り下げていきければと思います。
※vol.3のテーマは映画の「魅力」

———この雑誌はどんな読者に向けて作っていますか?

僕が20歳くらいの時にミニシアターブームがあり、まわりではジャン=リュック・ゴダール監督やクエンティン・タランティーノ監督が人気でした。その時代を体験した自分も含めてアラフォー世代の方がこの本を読むと、どこか懐かしさを感じてもらえると思います。もちろん若い世代の方にもぜひ手にとってもらい、映画のウマミをより感じてもらえればと思います。あと、監督だからこそ、作り手が作り手にインタビューして見えてくる面白さもあるはずです。また、事務所ごとの座談会インタビューも行なっており、それぞれの事務所の雰囲気や、所属俳優たちの所属のきっかけなどを聞いていますので、役者を目指している方の参考になると嬉しいです。

———最後に、読者にメッセージをお願いいたします!

cinefil BOOKでは現在の映画界を代表する方々にインタビューしているので、映画を知る上で読みどころ満載です。そして、埋もれている作品や映画人たちが、このcinefil BOOKを通して知ってもらえるきっかけになれば良いなと思っています。vol.3も、乞うご期待ください!

画像2: webマガジン「cinefil」の書籍化-cinefil BOOKvol.3発売!シネフィルブックの編集長 谷健二に聞いた"映画の「魅力!」"

谷健二 たにけんじ
1976年7月24日生まれ。cinefil BOOK編集長。映画監督。編集長を務めるcinefil BOOKはvol.1、vol.2ともに好評発売中。Vol.3が現在企画進行中。映画監督として、『一人の息子』『U–31』『リュウセイ』などの作品を手がけている。

インタビュアー:Mika Ogura
写真:Yui Ichikawa

『cinefil BOOK vol.3』発売中!

画像3: webマガジン「cinefil」の書籍化-cinefil BOOKvol.3発売!シネフィルブックの編集長 谷健二に聞いた"映画の「魅力!」"

第三弾となる今号では、日本映画界の最前線をひた走る松坂桃李と、韓国の若手トップ女優、シム・ウンギョン。そして、若き俊英・藤井道人監督のスペシャルインタビューをはじめ、黒沢清監督、岩井俊二監督率いる音楽ユニットikire、山戸結希監督と堀未央奈などここでしか聞けないスペシャルインタビューが満載!7月5日(金)に全国の書店及びネットショップなどで購入ができます。

発行/セブンフィルム 発売/垣内出版 定価:本体880円+税/A5/144ページ

<目次>

<インタビュー> 
藤井道人×シム・ウンギョン×松坂桃李『新聞記者』
黒沢清 『旅のおわり世界のはじまり』
ikire(Chima×市川和則×岩井俊二)

山戸結希×堀未央奈『ホットギミック ガールミーツボーイ』
奥山大史 『僕はイエス様が嫌い』

曽根剛×白石優愛 『透子のセカイ』
古舘佑太郎×石橋静河 『いちごの唄』

西山小雨×近藤笑菜×日高七海 『無限ファンデーション』
梶原俊幸 / ジェイソン・ウォン

<座談会>
細田善彦×毎熊克哉 / 阿部はりか×首藤凜 / しゅはまはるみ×遠藤史也

<寄稿> 
園田恵子 / 西澤彰弘 / 半野喜弘/
森しおり

<小説>
その後の『一人の息子』(佐東みどり)

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