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会場写真提供:©︎愛媛県美術館

画像: 「昼と夜」 1938年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review www.mcescher.com

「昼と夜」 1938年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

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図と地の錯覚を用いるマウリッツ・コルネリス・エッシャー

 オランダ生まれのマウリッツ・コルネリス・エッシャーは、2018年6月17日に生誕120年を迎えました。生誕120周年を記念して、松山市の愛媛県美術館で4月12日から、エッシャーのコレクションで知られるイスラエル博物館より、日本初公開の作品を含め約150点が展示されています。
 心理学では、ある「物」が他の「物」を背景として、全体から浮き上がり明瞭に知覚されるときに、前者を「図」といい、背景に退く物を「地」といいます。フランス語で「眼だまし」を意味する「トロンプ・ルイユ」で知られるエッシャーは、「図」と「地」の反転と呼ばれる錯覚を多く用いた作品で知られています。
 そして、エッシャーは、1936年に初めて訪れた、スペインの古都グラナダ市のアルハンブラ宮殿に深く関心を持ち、ここを何度も訪れています。イスラーム王朝ナスル朝の王宮であり、イスラム建築の最高傑作といわれるアルハンブラ宮殿の石の壁や天井に描かれた彩釉タイル装飾、スタッコ彫刻といった幾何学装飾に強い影響を受けました。
 エッシャーは、画家のリヒャルト・ロラント=ホルストから、木版画を薦められています。木版画以外にも、リトグラフ(石版画)、メゾティント(銅版画)といった複製が容易にできる版画表現を多用し、精密な描写をしています。

画像: 「上と下」 1947年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review www.mcescher.com

「上と下」 1947年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

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幾何学をモチーフにしたエッシャー

 幾何学は、図形や空間の性質について研究する数学の分野になります。人間が知覚できる空間内の「物」や、現象の観察をと通して、図形の性質を研究する必要性から起きました。古代エジプトや古代ギリシャなどで研究された幾何学から、紀元前300年頃に古代ギリシャの学者エウクレイデス(英語名はユークリッド)によって、「ユークリッド幾何学」がまとめられました。
 幾何学における星型正多面体は、ドイツの数学者ヨハネス・ケプラーが最初に発見した正多面体です。1619年にケプラーは、「小星型十二面体 」、「大星型十二面体」といった2つの星型正多面体を発見しました。エッシャーは、幾何学の星型正多面体をモチーフに使っています。
 また、19世紀になってから、「平面上の幾何学」の「ユークリッド幾何学」に対して、「曲面上の幾何学」と呼ばれる「非ユークリッド幾何学」が発見されます。
 非ユークリッド幾何学の一つとして、「位相幾何学(トポロジー)」が生み出され、その中でも一つの面と一つの辺を持つ無限の繰り返しを比喩的に表すものとして「メビウスの帯」、錯視である不可能図形の「ペンローズの三角形」も、エッシャーは好んで作品のモチーフとして使用しています。

イタリアと風景画

 エッシャーは、1922年にイタリアにも旅行をします。スイス人のイエッタ・ウミカーとイタリアのラヴェッロで出会い、やがて結婚します。1935年まで、家族とともにローマに住んでいました。またこの頃には各地に旅行しています。
ファシズムの台頭の中、イタリアを離れることを余儀なくされるのですが、住んでいたローマを中心にたくさんの風景画を残しています。
絵画のモチーフとして、平坦な土地のオランダにはない、イタリアの山の風景は、エッシャーには興味深い対象だったのでしょう。
その後にエッシャーは、1935年から1936年までスイス、1937年にはベルギー、1941年から1970年までオランダのバールーンに定住しました。
エッシャーの前期の作品は、これらのイタリアの風景画が中心となっています。

画像: 「宿命(逆さまの世界)」1951年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review www.mcescher.com

「宿命(逆さまの世界)」1951年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

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モザイク模様とメタモルフォーゼ

 アルハンブラ宮殿の影響から、モザイク模様とエッシャーの代表的な構図の原点ともいえる「メタモルフォーゼ」シリーズの作品。「メタモルフォーゼ」とは、変化、変身の意味です。
 エッシャーには、1939から1940年にかけて制作された、作品の幅が4メートル近くにも及ぶ巨大な木版画の「メタモルフォーゼⅡ」という代表的な作品があります。
 この作品は、「metamorphose」の文字からはじまります。
白黒のモザイクからトカゲに変化し、ミツバチ、魚、鳥と変化を繰り返して、風景、チェスから白黒のモザイクになり「metamorphose」の文字に帰ります。 風景そのものは、先のイタリアでエッシャー自身により撮影した写真が使用されています。
エッシャーの作品は、よくイタリアの風景、スペイン旅行といった、自身の体験から来たモチーフが様々に展開しています。

画像: メタモルフォーゼⅡ(部分拡大) 1939〜1940年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review www.mcescher.com

メタモルフォーゼⅡ(部分拡大) 1939〜1940年 - photo(C)mori hidenobu -cinefil art review

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テーマにもとづき展示されたミラクル エッシャー展

 今回の展示では、エッシャーの表現をもとに、1.「科学」、2.「聖書」、3.「風景」、4.「人物」、5.「広告」、6.「技法」、7.「反射」、8.「錯視」といった視点で展示構成がされており、エッシャーの表現がわかりやすく、基本8色相(紫・青・青緑・緑・黄緑・黄・橙・赤)を各章のテーマカラーとして展示されています。
 エッシャーから影響を受けた、芸術家、数学者、建築家といった人は数多く知られていて、現在においても、エッシャーの作品は親しみがあります。生誕120年を記念した本展覧会では、過去にない規模の作品が並びます。初めて目にする作品も数多くあります。新しい発見を目にすることができるかもしれません。

画像: 生誕120年イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 会場風景- photo(C)愛媛県美術館 -cinefil art review

生誕120年イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 会場風景-
photo(C)愛媛県美術館 -cinefil art review

生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵 概要
会  期:2019年4月12日金曜日 ~ 6月16日日曜日
休館日:4/15(月)・4/22(月)・5/7(火)・5/13(月)・5/20(月)・5/27(月)・6/4(火)・6/10(月)
開館時間:9:40~18:00(入館は17:30まで)
入館料:当日券:一般 ¥1,400 大学生・高校生 ¥900 中学生・小学生 ¥600
    団体券:一般 ¥1,200 大学生・高校生 ¥700 中学生・小学生 ¥400
会  場:愛媛県美術館
     愛媛県松山市堀之内
     phone 089-932-0010
     fax 089-932-0511
公式サイト:http://www.escher.jp/
主  催 :イスラエル博物館 ミラクル エッシャー展 愛媛展実行委員会(愛媛県、テレビ愛媛)
共  催 :愛媛新聞社
後  援 :イスラエル大使館 松山市 松山市教育委員会 愛媛県市町教育委員会連合会 (公財)愛媛県教育会 愛媛県教育研究協議会 愛媛県小中学校長会 愛媛県PTA連合会 愛媛県美術会 愛媛美術教育連盟 学校法人河原学園 学校法人松山ビジネスカレッジ、(公財)松山観光コンベンション協会、道後温泉旅館協同組合、JR四国、伊予鉄グループ、南海放送、あいテレビ、愛媛朝日テレビ、愛媛CATV、FM愛媛、えひめリビング新聞社
特 別 協 賛:弁護士法人ミネルヴァ法律事務所 大一ガス
協   賛 :野崎印刷紙業
協   力 :Blue Dragon Art Company 日本通運
企 画 制 作:産経新聞社 フジテレビジョン

「生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」cinefilチケットプレゼント!
ご提供組数 10組20名様

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、愛媛県美術館チケットプレゼント係宛てに、Eメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、記名ご本人様のみ有効の、チケットをプレゼントいたします。
チケットは、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、
公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

応募先Eメールアドレス
info@miramiru.tokyo
応募締め切りは2019年5月19日日曜日

記載内容
1.氏名<※必須>
2.年齢<※必須>
3.当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)<※必須>
4.ご連絡先Eメールアドレス、電話番号<※必須>
5.記事を読んでみたい監督、俳優名(複数回答可)
6.読んでみたい執筆者(複数回答可)
7.連載で、面白いと思われるもの(複数回答可)
8.連載で、面白くないと思われるもの(複数回答可)
9.シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せください。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせていただきます。

森秀信 プロフィール

1966年長崎市生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了後、現代美術センターCCA北九州リサーチプログラム修了。
主に現代美術の創作活動の他、展覧会のキュレーションやワークショップの企画を担当。専門は現代美術。

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