桜舞う季節となりました。うららかな春の日、美術館を訪れてみませんか。
この春、素晴らしい展覧会が目白押しです。
なかでも今回ご紹介致します、日本とオーストリアの外交樹立150周年を記念した
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」は、モダニズム文化が開花したウィーンの黄金期をご堪能いただけるもので、必見です。

19世紀末、ウィーンでは、ハプスブルク帝国が終焉を迎える頃、古い伝統を打ち破り、新しい時代に向けた芸術を求める革新運動が起きました。
「時代には新しい芸術を、芸術にはその自由を」という志を掲げ、グスタフ・クリムトやエゴン・シーレ、ヨーゼフ・ホフマン、アドルフ・ロースらを中心に、絵画や建築、工芸、デザイン、ファッションなど様々な分野で、ウィーン独自の煌びやかで、装飾性の豊かな文化が生まれました。
このウィーンの革新的な芸術は、のちに「世紀末芸術」と呼ばれるようになったのです。
本展は、ウィーンの世紀末文化を「近代化(モダニズム)への過程」という視点から紐解き、
18世紀の女帝マリア・テレジアの啓蒙思想がビーダーマイアー時代に発展し、ウィーンのモダニズム文化の萌芽となって、19世紀の絢爛豪華な芸術が花開くまでの歴史的背景を辿ります。
世紀末芸術を代表する、クリムトやシーレ、オットー・ヴァーグナー、アドルフ・ロースなどウィーン世紀末の巨匠の作品が集結し、東京展では約400点、大阪展では約300点というかつてないほどの規模で、ウィーンの至宝がご覧いただけます。
4月24日~8月5日まで、東京・六本木の国立新美術館にて開催され、8月27日~12月8日までは、大阪・中之島の国立国際美術館に巡回いたします。
ヨーロッパ有数の博物館として知られ、100万点に及ぶ所蔵品でウィーンの歴史や文化を伝えるウィーン・ミュージアムの貴重なコレクションを鑑賞できる、またとない機会です。
是非、この機会に美術館を訪れてみませんか。
それでは、シネフィル上でも時代背景とともに、いくつかの作品をご覧ください。

第1章 啓蒙主義時代のウィーン

女帝マリア・テレジアとその息子、皇帝ヨーゼフ2世が統治した1740年代から90年代のハプスブルク帝国の首都ウィーンでは、理性や合理主義を重視する啓蒙主義に基づいた社会の変革がなされました。
宗教の容認、死刑や農奴制の廃止、病院や孤児院の建設など、行政や法律、経済、教育において、様々な改革を実行しました。
こうして、ウィーンは自由な精神を持つ知識人たちの交流の場となり、ヨーロッパ文化の中心地となったのです。

画像: マルティン・ファン・メイテンス《マリア・テレジア(額の装飾画:幼いヨーゼフ2世)》1744年 油彩/カンヴァス 216.2 x 162.5 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

マルティン・ファン・メイテンス《マリア・テレジア(額の装飾画:幼いヨーゼフ2世)》1744年 油彩/カンヴァス 216.2 x 162.5 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

第2章 ビーダーマイアー時代のウィーン

ナポレオン戦争終結後の1814年には、各国の指導者たちが集まったウィーン会議が開催され、ヨーロッパの地図が再編されます。以降、1848年に革命が勃発されるまでの期間は「ビーダーマイアー」と呼ばれます。
当初、家具の様式を指す言葉でしたが、やがてこの時代の生活様式全般と、精神構造を表すようになりました。
急激な都市化と政治的抑圧に対する反動として、人々の関心は次第に「私的な領域」に向けられるようになります。表現の自由を奪われた画家たちは、日常生活や、のどかで親しみやすい都市や農村をテーマに風景画を描きました。
同様に工芸も素材の持つ美しさを生かしたシンプルなデザインのものが多く生み出され、現代のモダンデザインの先駆けとなりました。
日常生活に実用的な美を見出すビーダーマイアーは、のちにモダニズムの礎となったのです。

画像: フリードリヒ・フォン・アメリング《3つの最も嬉しいもの》1838年 油彩/カンヴァス 80×80 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

フリードリヒ・フォン・アメリング《3つの最も嬉しいもの》1838年 油彩/カンヴァス 80×80 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

第3章 リンク通りとウィーン

皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の治世の間(1848-1916年)に、ウィーンは近代的首都へと変貌を遂げました。
人口は50万人から220万人に増加し、世界で6番目に大きな都市になったのです。
近代都市への変貌は、1857年に新しいウィーンの大動脈となる「リンク通り(リンクシュトラーセ)」を開通させたことに始まります。沿道には帝国の要となる建築物が次々と建設されました。
リンク通りは19世紀のウィーンの象徴であり、古典主義様式の国会議事堂、ゴシック様式の奉献協会、ルネサンス様式の大学など様々な歴史主義建築の建物が立ち並び、19 世紀末には、分離派メンバーによる建物も建設されました。

画像: フランツ・ルス(父)《皇后エリーザベト》1855年 油彩/カンヴァス 81.5×58 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

フランツ・ルス(父)《皇后エリーザベト》1855年 油彩/カンヴァス 81.5×58 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

第4章 1900年―世紀末のウィーン

さらに都市化が進み、路面電車や地下鉄などの公共機関も発展したこの時代は、建築家オットー・ヴァーグナーがウィーンの都市デザインプロジェクトを数多く提案しました。
絵画の分野では、ウィーン造形芸術家組合において会員たちの間で対立が起こり、1897年にグスタフ・クリムトやコロマン・モーザーに率いられた若い画家たち約20人が、オーストリア造形芸術家組合(分離派)を結成しました。
グスタフ・クリムト(1862-1918)
クリムトは彫金師の父のもと、ウィーン近郊のバウムガルテンに生まれ、1876年にウィーン工芸美術学校に入学しました。
1897年にウィーン分離派を結成し、旧体制の美術市場から独立した展覧会を開催するなど、他国の芸術家たちとの交流を深めました。
クリムトの特徴は、華やかな金色を用い、装飾的な模様で、女性美を描くことでした。
《エミーリエ・フレーゲの肖像》は、クリムトが生涯のパートナーとしたエミーリエ・フレーゲをモデルに描いたものです。
彼女は2人の姉とともに、モードサロンを経営する企業家で、女性をコルセットから解放する、「改良服」をデザインするなど、先進的な考え方を持つ人でした。
クリムトは、日本美術から影響を受け、女性の洋服や、背景にも、自己流の斬新な装飾的模様を描いています。

画像: グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》1902年 油彩/カンヴァス 178×80 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》1902年 油彩/カンヴァス 178×80 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 
 
オーストリアの表現主義者たちは、人物の表情や身振りの描写を通じ、その深い精神状態を表しました。シーレとココシュカは、共にクリムトから強い影響を受けましたが、クリムトが、装飾的な女性美を追求したのに対し、新たな表現を獲得しようと自らの芸術世界に没頭しました。
シーレの《自画像》は、クリムトの優美な女性像とは異なり、深く刻まれた皮膚のしわや、彫りの深い目、まっすぐに伸びた指などシーレの実際の容貌を忠実に描き、いびつな線を特徴とし、ややグロテスクな感じさえするのが特徴です。

画像: エゴン・シーレ《自画像》1911年 油彩/板 27.5×34 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

エゴン・シーレ《自画像》1911年 油彩/板 27.5×34 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

  
ヴァーグナーは、近代生活のための新しい建築を追求し、ウィーンの近代都市建築、モダニズムの原理を打ち立てました。
《郵便貯金局》は、徹底した機能性と、合理性に優れた近代建築となっています。
モダニズムの先駆者となったヴァーグナーは、ヨーゼフ・ホフマンらを指導し「ヴァーグナー派」を結成、歴史主義から離脱して、近代生活のためのモダンな建築を追求しました。
今日のウィーンの街並みを創ったのはヴァーグナーです。
また、《カール・ルエーガー市長の椅子》は、装飾に新しいアルミニウム素材を用い、洗練された直線的なモダンなデザインのものとなっています。

画像: オットー・ヴァーグナー《カール・ルエーガー市長の椅子》1904年 ローズウッド、真珠母貝の象嵌、アルミニウム、革 高さ:99 cm、幅:63 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

オットー・ヴァーグナー《カール・ルエーガー市長の椅子》1904年 ローズウッド、真珠母貝の象嵌、アルミニウム、革 高さ:99 cm、幅:63 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 
 
19世紀末、近代都市となったウィーンでは、建築、絵画、工芸、デザインなどあらゆる分野で、目覚ましい発展を遂げ、モダンで創造的な芸術作品が生まれました。
銀食器なども、華やかで、豪華でありながら、モダニズムを感じさせる新しいデザインです。

画像: ダゴベルト・ペッヒェ《ティーセット》製作:ウィーン工房 1922-23年象牙、エンボス加工された銀 ティーポット: 19.9×27.4×16.2 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

ダゴベルト・ペッヒェ《ティーセット》製作:ウィーン工房 1922-23年象牙、エンボス加工された銀 ティーポット: 19.9×27.4×16.2 cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 
みなさま、「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展いかがでしたでしょうか。
古典的な歴史を打ち破り、ウィーン大改造から、新しい時代にふさわしい新しい芸術を求める、若き芸術家たちの情熱に感動させられますね。
モダニズムの花が開くウィーンの芸術世界とその過程を是非、美術館でご堪能ください。

 

展覧会概要

会期:2019年4月24日(水)〜8月5日(月)
 
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)http://www.nact.jp 
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
[交通案内]
東京メトロ千代田線「乃木坂駅」青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線「六本木駅」4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」7出口から徒歩約4分
*美術館に駐車場はございません。
 
休館日:毎週火曜日 ※ただし4月30日は開館
 
開館時間:
10:00〜18:00
※毎週金・土曜日は、4・5・6月は20:00、7・8月は21:00まで。
 4月28日(日)〜5月2日(木)と5月5日(日)は20:00まで開館。
 5月25日(土)は「六本木アートナイト2019」開催に伴い22:00まで開館。
※入場は閉館の30分前まで。
 
観覧料金:当日    前売   団体
一 般  1,600円  1,400円  1,400円
大学生  1,200円  1,000円  1,000円
高校生  800円   600円   600円
※中学生以下および障がい者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料。
※6月12日(水)~24日(月)は高校生無料観覧日(要学生証提示)。
※前売り券は2019年4月23日(火)まで販売。ただし、国立新美術館では4月22日(月)まで。
 
主催:国立新美術館、ウィーン・ミュージアム、読売新聞社 
後援:外務省、オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム、ウィーン市、ウィーン市観光 
特別協賛:キヤノン 
協賛:花王、大日本印刷 
協力:ANA、DNPアートコミュニケーションズ、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン、ルフトハンザ カーゴ AG 
お問い合わせ
03-5777-8600(ハローダイヤル)

ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道@東京 cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道@東京 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年6月2日 24:00 日曜日 

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

This article is a sponsored article by
''.