帽子ネメシュ監督-極小長編デビュー作『サウルの息子』でアカデミー賞外国語映画賞ほか世界中の映画祭を席巻、一躍その名を轟かせたネメシュ・ラースロー監督。
待望の2作目『サンセット』がいよいよ3/15(金)より日本公開となる。
公開に先駆け、監督インタビューが到着。
プレミア上映となったヴェネチア国際映画祭では、イ・チャンドンやフレデリック・ワイズマンも受賞した国際批評家連盟賞を獲得。アカデミー賞外国語映画賞ハンガリー代表にも選出された本作について、詳しく語ってもらった。

<ネメシュ・ラースロー監督インタビュー>

ネメシュ・ラースロー監督

Q:『サンセット』はとても意欲的な作品だと感じました。『サウルの息子』 の後に作られた物語でしょうか?

A:実は『サウルの息子』に着手する前から、女性についての映画を作りたいというアイディアを持っていました。一人で世界を迷いつつ、なんとかしようとしつつも、結局のところ道を誤ってしまうような女性の映画です。観客はその行動の意味を考えさせられ、彼女の旅に同行していくと、「まるでジャンヌ・ダルクのようだ」と思うようになる。予想外の側面を持った主人公にしたいと思っていました。『サンセット』は、1910年代の女性の価値観から逸脱した、自らの信念と欲求に従い大人になってゆく少女の話とも言えますね。

画像1: © Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018

© Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018 

Q:確かに主人公イリス(ユリ・ヤカブ)は冒険心旺盛な、変わった主人公ですね。

A:最初からこの映画は、イリスが兄を探すのに並行して、見る者を個人的なラビリンスに陥れたいと考えていました。彼女が発見したように見えた手がかりのすべては、その背後に矛盾する情報が存在します。あらゆるレイヤーの裏では新しい事実が明らかになりますが、彼女はブダペストの光と闇、美しさと脅威に囚われ、この世界のグレーな部分を扱いきれないのです。

Q:舞台は1910年代、オーストリア=ハンガリー帝国当時のブダペストですが、この時代への思い入れがあってのことでしょうか。

A:子供の頃、1914年生まれの祖母の話をよく聞いていました。彼女の人生は、世紀に渡り、全体主義体制、革命の失敗、戦争など、ヨーロッパ大陸の混乱にとらわれました。彼女こそ、ある意味ヨーロッパそのものなのです。私は今、1914年の第一次世界大戦が起きる前とそうは離れていない世界に生きていると信じています。
我々にとって、過去の事は今の、また中央ヨーロッパの事なのです。

画像2: © Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018

© Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018 

Q:当時が再現されたセットも見事でした。

映画の世界ではCGに頼ることが増え、次第にセットを組むことが少なくなっています。しかし私は映画を作る上で、場所やその土地がもたらす力は無視できないと考えており、ブダペストにセットを作りました。映画そのものと、自然や街の雰囲気が合わさった効果を発展させていったのです。セットは『サンセット』の世界観を作り上げるために非常に重要な要素でした。

画像3: © Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018

© Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018 

Q:『サウルの息子』と比較されることも多いと思います。監督ご自身が、作品を作る上で大切にしていることは。

私は映画製作者として、人間と文明がどのように出会うのかについて理解したいと思っています。『サンセット』を思い描いた時、私は個人の物語と、ヒロインが存在する世界が交わる分岐点を探そうとしました。今日は、動機や結末がわかりやすい映画が非常に多いですが、私はいつもゆらぎのある人間の姿を映し出したいと考えています。『サウルの息子』と同じものを提示したくはありません。全てを明らかにせず、世界を間近で片鱗を見せ、残りは観客の想像力に委ねたいと常々思っています。

© Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018 

ネメシュ・ラースロー監督最新作『サンセット』予告

画像: 『サウルの息子』でアカデミー賞受賞ネメシュ・ラースロー監督最新作『サンセット』予告 youtu.be

『サウルの息子』でアカデミー賞受賞ネメシュ・ラースロー監督最新作『サンセット』予告

youtu.be

栄華に狂い、破滅と踊る―

【ストーリー】 
1913年、オーストリア=ハンガリー帝国が栄華を極めた時代。イリスは、ヨーロッパの中心、ブダペストのレイター帽子店で働くことを夢見てやってくる。そこは、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した高級帽子店だ。だが今のオーナーであるブリルは、突然現れた彼女を歓迎することはなく追い返してしまう。オーストリア皇太子も訪れるような華やかで憧れの場所に見えた帽子店。しかし、そこには大きな闇が隠されていた。裏ではウィーンの王侯貴族に店の女性を捧げているという。またイリスには兄がいたことを初めて知るが、兄カルマンは伯爵殺しという大きな事件を起こしていた。彼女は失踪している兄を必死に探し始めるが辿り着けない。やがて兄とその仲間たちによる貴族への暴動が起こる。イリスもまた第一次世界大戦前に激動するヨーロッパの渦に巻き込まれていく。果たして、彼女は兄と巡り逢うことができるのか?そして高級帽子店が行きつく運命は?

監督・脚本:ネメシュ・ラースロー『サウルの息子』     

出演:ユリ・ヤカブ『サウルの息子』、ヴラド・イヴァノフ『エリザのために』、モーニカ・バルシャイ『リザとキツネと恋する死者たち』

2019/ハンガリー、フランス/カラー/ハンガリー語、ドイツ語/142分  後援:ハンガリー大使館/日本・ハンガリー外交関係開設150周年事業認定作品

原題:Napszállta  英題:SUNSET   映倫:G   
配給:ファインフィルムズ
© Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018 

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