森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)において、3月24日まで「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」が開催されています。

北斎の代表作としては、“Great Wave”と称されて世界的に名高い「神奈川沖浪裏」を含む「冨嶽三十六景」シリーズ、19世紀のヨーロッパにおけるジャポニスムの流行の契機となった『北斎漫画』などが一般的に知られていますが、これらは約70年に及ぶ北斎の画業のほんの一端にすぎません。

今回の新・北斎展では、北斎の絵師人生を作風の変遷と主に用いた画号によって6期に分けて紹介しています。勝川派の絵師として活動した春朗期(20〜35歳頃)、勝川派を離れて肉筆画や狂歌絵本の挿絵といった新たな分野に意欲的に取り組んだ宗理期(36〜46歳頃)、読本の挿絵に傾注した葛飾北斎期(46〜50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた戴斗期(51〜60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した為一期(61〜75歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した画狂老人卍期(75〜90歳頃)と、その壮大な画業を通覧できます。
国内外の名品、近年発見された作品、初公開作品を通じて、真の北斎に迫っています。

画像: 左:「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 天保初期(1830 ~34)頃 日本浮世絵博物館  (2月18日まで。2月21日〜3月24日は島根県立美術館(新庄コレクション)の展示) 右:「冨嶽三十六景 御厩川岸より両国橋夕陽見」 天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示) photo©cinefil

左:「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 天保初期(1830 ~34)頃 日本浮世絵博物館  (2月18日まで。2月21日〜3月24日は島根県立美術館(新庄コレクション)の展示)
右:「冨嶽三十六景 御厩川岸より両国橋夕陽見」 天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示)
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みどころが大きく三つ

①待望の大規模北斎展

20歳のデビュー作から90歳の絶筆まで、本展に出品される作品数は約480件(会期中展示替えあり)。十数年ぶりに東京で開催される、大規模かつ網羅的な北斎展となります。国内外から集められた名品・貴重品によって、北斎の全貌を知ることのできる待望の機会です。

②初公開作品が続々登場!

多数の初公開作品を揃えていることも本展の特徴です。アメリカ・シンシナティ美術館が所蔵する《向日葵図》(肉筆画)は、北斎が88歳の時に描いたものですが、その凛とした姿には、衰えを知らない北斎のエネルギーがみなぎっています。また同館の「かな手本忠臣蔵」(小判、10枚)は近年発見された貴重なものです。旧津和野藩主家が所蔵していた摺物(非売品の特製版画)、大小暦も必見。118点を4期にわけて全点を公開しますが、いずれも長らく秘蔵されていたため、衝撃的なほどに美しい色彩をとどめています。

③永田コレクション、最後の東京公開

本展監修者・永田生慈氏は北斎研究のために作品の収集も行いました。作品数は2000件を超えます。それらは2017年に一括して、故郷の島根県に寄贈されました。そして氏の遺志により、本展に出品された後は、島根県のみで公開されることとなりました。つまり、本展は永田コレクションを東京で見ることができる最後の機会となります。

画像: 左:「しん板くミあけとうろふゆやしんミセのづ」 横大判5枚 文化中期(1807~12)頃 島根県立美術館(永田コレクション) (2月18日までの展示) 右:左図を組み上げた立体模型 photo©cinefil

左:「しん板くミあけとうろふゆやしんミセのづ」 横大判5枚 文化中期(1807~12)頃 島根県立美術館(永田コレクション) (2月18日までの展示)
右:左図を組み上げた立体模型
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画像: 左:《なまこ図 》紙本扇1本 文化末~文政初期(1814~19) 島根県立美術館(永田コレクション) 現在は展示が終了しております 右:《生首図 》紙本扇面1面 文化中期(1810 ~14)頃 島根県立美術館(永田コレクション) (2月18日までの展示) photo©cinefil

左:《なまこ図 》紙本扇1本 文化末~文政初期(1814~19) 島根県立美術館(永田コレクション) 現在は展示が終了しております
右:《生首図 》紙本扇面1面 文化中期(1810 ~14)頃 島根県立美術館(永田コレクション) (2月18日までの展示)
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文化7年に戴斗(たいと)と号した頃から、北斎の関心は絵手本に移ります。人気が高まるにつれ、増加する門人や私淑する全国の人々に、絵の手本を与えようとしたのだと考えられます。有名な『北斎漫画』を含む多彩な絵手本を矢継ぎ早に刊行します。それまで師から弟子へ肉筆で描き与えることが一般的であったなかで、大量の印刷本による手本は画期的なものでした。また数は少ないながらも、錦絵や肉筆でも新たな世界を切り拓いていきます。

画像: 左:『北斎漫画』八編 半紙本1冊 文化15年(1818) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示 右:『北斎漫画』九編 半紙本1冊 文政2年(1819) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示 photo©cinefil

左:『北斎漫画』八編 半紙本1冊 文化15年(1818) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示
右:『北斎漫画』九編 半紙本1冊 文政2年(1819) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示
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画像: 左:『略画早指南』 中本2冊 文化9年(1812)頃 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示 右:『己痴羣夢多字画尽』前編 中本2冊 文化7年(1810) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示 photo©cinefil

左:『略画早指南』 中本2冊 文化9年(1812)頃 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示
右:『己痴羣夢多字画尽』前編 中本2冊 文化7年(1810) 島根県立美術館(永田コレクション) 通期展示
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文政3年(1820)、61歳となった北斎は、号を為一(いいつ)と改めます。そして70歳を過ぎると、「冨嶽三十六景」をはじめとした北斎を代表する錦絵の揃物を次々と生み出していきました。風景画、名所絵はもとより、花鳥画や古典人物図、武者絵、さらには幽霊などその関心はあらゆる対象に向けられました。驚くべきことに、これら色鮮やかな錦絵の出版はわずか4年間ほどに集中しています。

画像: 左:「冨嶽三十六景 隠田の水車」天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館(新庄コレクション) (2月18日までの展示) 右:「冨嶽三十六景 武州千住」 天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館(新庄コレクション) (2月18日までの展示) photo©cinefil

左:「冨嶽三十六景 隠田の水車」天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館(新庄コレクション) (2月18日までの展示)
右:「冨嶽三十六景 武州千住」 天保初期(1830 ~34)頃 島根県立美術館(新庄コレクション) (2月18日までの展示)
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画像: 左:「百物語 笑ひはんにや」 天保2~3年(1831~32)頃 日本浮世絵博館 (2月18日までの展示) 右:「百物語 お岩さん」天保2~3年(1831~32)頃 中右コレクション (2月18日までの展示) photo©cinefil

左:「百物語 笑ひはんにや」 天保2~3年(1831~32)頃 日本浮世絵博館 (2月18日までの展示)
右:「百物語 お岩さん」天保2~3年(1831~32)頃 中右コレクション (2月18日までの展示)
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画像: 左:「諸国瀧廻り 美濃ノ国養老の滝」 天保4年(1833)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示) 右:「諸国瀧廻り 木曽海道小野ノ瀑布」 天保4年(1833)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示) photo©cinefil

左:「諸国瀧廻り 美濃ノ国養老の滝」 天保4年(1833)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示)
右:「諸国瀧廻り 木曽海道小野ノ瀑布」 天保4年(1833)頃 島根県立美術館 (2月18日までの展示)
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最晩年の北斎は肉筆画制作に傾注し、描くテーマも古典に取材した作品や花鳥、静物、宗教的な題材など浮世絵師の世界から離れ、独自の画境を追い求めていきます。長寿を願い、100歳まで生きれば「神妙」の域に達し、さらに描く対象の「一点一画」が生き生きとしたものになると信じ、筆を休めることはありませんでした。嘉永2年(1849)4月18日朝、北斎は90歳で生涯を終えます。「あと10年、いや5年命が保てば真正の画工になれたのに」と言い遺し、息絶えました。

画像: 多色刷りの様子を示す展示 photo©cinefil

多色刷りの様子を示す展示
photo©cinefil

画像: 展示風景 photo©cinefil

展示風景
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繰り返しになりますが、本展監修者・永田生慈氏による永田コレクションは本展に出品された後は、島根県のみで公開されることとなりました。今回が永田コレクションを東京で見ることができる最後の機会となります。ぜひ、この機会に氏の熱意も感じられる作品群を堪能してください。
また、期間中に展示替えもあるので、何度も足を運んで楽しめることでしょう。

開催概要

名称:新・北斎展 HOKUSAI UPDATED
会期:開催中〜2019年3月24日(日)
   ※ 会期中、展示替えがあります
開館時間:10:00~20:00、火曜日のみ17:00まで (最終入館は閉館の 30 分前まで)
休館日:2月19日(火)、2月20日(水)、3月5日(火)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
   (〒106-6150 東京都港区六本木 6‐10‐1)
主催:日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション、森アーツセンター
協賛:伊藤忠商事株式会社、凸版印刷株式会社、三井住友海上火災保険株式会社
特別協力:島根県立美術館
協力:日本航空
展覧会公式サイト:https://hokusai2019.jp/
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

入館料(税込)   当日    団体
一般       1,600円   1,400円
高大生      1,300円   1,100円
小中学生      600円    500円
※ 未就学児無料
※ 団体料金は15名以上(添乗員は1名まで無料)
※ 障がい者手帳をお持ちの方とその介助者(1名まで)は、当日料金の半額となります。
(入館の際に障がい者手帳をご提示ください。)
※ 会期中1枚につき1名様1回限り有効
※ 本券の変更・払戻・再発行は致しません

新・北斎×奇想の系譜セット券

「新・北斎」「奇想の系譜」各展の会期中、各展を1回ずつご観覧いただけます。 両展の一般前売料金で会期中もセット券として販売します。販売価格:2,800円(税込) 各1,400円×2枚発券 新・北斎展1枚と奇想の系譜展1枚
販売期間:2019年3月24日(日)まで

取扱先:新・北斎展公式サイト、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」
開催中~2019年4月7日(日) 東京都美術館
公式サイト: https://kisou2019.jp/

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「新・北斎展」プレゼント係宛てにメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年2月24日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
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10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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