現代のフランスの代表作家
クリスチャン・ボルタンスキーの軌跡

クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)は、歴史や記憶そして死や不在をテーマとして活動を続ける現代のフランスを代表する最も重要なアーティストのひとりです。

1960年代後半より短編フィルムを発表し始めたボルタンスキーは、1970年代に入ると写真を積極的に用いるようになりました。人が歩んできた歴史や文化人類学への関心を土台とし、写真やドキュメントとビスケット缶などの日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を多数制作し、注目を集めます。

1980年代には明かりを用いたインスタレーションを手掛けるようになり、子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせて展示した「モニュメント」シリーズ(1985年-)で宗教的なテーマに取り組みます。それを発展させた《シャス高校の祭壇》(1987年)は、1931年にウィーンの高校に在籍したユダヤ人の学生たちの顔写真を祭壇状に並べ、その写真を電球で照らすというものでした。
肖像写真を集めて展示する手法は、大量の死者の存在、具体的にはナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺とその犠牲者のイメージを想起させるものとして解釈され、大きな議論を呼びました。第二次世界大戦期のユダヤ人の大虐殺は、ユダヤ系の父を持つボルタンスキー自身の問題とも結びつきます。

画像: クリスチャン・ボルタンスキー《モニュメント》1986 年 作家蔵 © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo © The Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner

クリスチャン・ボルタンスキー《モニュメント》1986 年 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo © The Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner

その後もパリのグラン・パレの広大なスペースを生かし大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、さまざまな手法によって、歴史や記憶、そして死や不在をテーマとした作品を発表します。

画像: クリスチャン・ボルタンスキー《保存室(カナダ)》1988 年 イデッサ・ヘンデルス芸術財団、トロント © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Ydessa Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziere

クリスチャン・ボルタンスキー《保存室(カナダ)》1988 年 イデッサ・ヘンデルス芸術財団、トロント
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Ydessa Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziere

半世紀を超える作家活動を経て、いまなお積極的に精力的に創造を続けるボルタンスキーの広大なる芸術の精神世界を存分にお楽しみ下さい。

画像: クリスチャン・ボルタンスキー《ミステリオス》2017 年 作家蔵 © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo by Angelika Markul

クリスチャン・ボルタンスキー《ミステリオス》2017 年 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo by Angelika Markul

上 ↑の画像《ミステリオス》は3面の映像で構成されている物のうちの1枚です。
大きな変化のない映像から、波の音とクジラとコミュニケーションを取るための音が流れています。
この映像群は、すぐ前にある椅子に腰掛けてゆったりと時間に身をまかせてみるのがボルタンスキー氏による作品鑑賞のお勧め方法です。

会場全部が一つのアート作品

「空間のアーティスト」と自らを形容するボルタンスキーは、世界各地に赴き、その場でしか実現できない展示を数多く手掛けてきました。

今回、国立国際美術館(大阪)、国立新美術館(東京)、長崎県美術館(長崎)の3館が共同で企画する同展は、1960年代後半から近年までの半世紀にわたるボルタンスキーの様々な活動を紹介する国内初めての大規模な回顧展であるとともに、氏自身が「展覧会全体をひとつの作品として見せる」ために今回の会場である国立国際美術館に合わせたインスタレーションによって構成されています。

会場はまず入口すぐ上の青く発光する《DEPART(出発)》で迎えられ、出口上の赤く発光する《ARRIVEE(到着)》で終結します。

その初めと終わりの間の会場内には、異なる時期に制作された異なる作品たちー映像、写真、音、光、立体、匂いなど様々な手法を駆使ーと今回の会場で新たに作られた作品によりオリジナルの一つの大作になっており、隅々までボルタンスキーの世界が広がっています。

国立国際美術館 会場風景
photo©︎cinefil

ボルタンスキー氏ご本人は自身の作品に対して「どう受け止めるかは会場に来ている人各々が理解したい方法で理解してくれたらいい。五感を使って見て(観て)、聞いて(聴いて)、匂って、作品の中に入って欲しい。全てを知る必要はなく答えは存在しない。ただ何かが起きているということを感じて欲しい。」と仰っています。

東洋の哲学や日本の仏教や神道からも多くの影響を受けていると仰る氏の作品の創る世界は、そのせいか、どこか東洋的な死生観が感じられます。

下 ↓の異なる2枚の映像からは絶えず心地よい風鈴の音が響いてきます。
ちょっとお盆のイメージと重なる不思議な映像です。
右の映像《アミニタス(チリ)》の足元には乾燥させた草花が敷き詰められていて、ほのかな香りを感じることができます。
奥の《ぼた山》の周辺は《発言する》展示に囲まれていて、ランダムに流れてくる投げかけられる言葉(日本語と英語の2ヶ国語)の深さに思わず聞き入ってしまいます。

画像: 国立国際美術館 会場風景 左:クリスチャン・ボルタンスキー《アニミタス(白) 》 2017年 作家蔵 奥:クリスチャン・ボルタンスキー《ぼた山》 2015年 作家蔵 右:クリスチャン・ボルタンスキー《アニミタス(チリ) 》 2014年 作家蔵 photo©︎cinefil

国立国際美術館 会場風景
左:クリスチャン・ボルタンスキー《アニミタス(白) 》 2017年 作家蔵
奥:クリスチャン・ボルタンスキー《ぼた山》 2015年 作家蔵
右:クリスチャン・ボルタンスキー《アニミタス(チリ) 》 2014年 作家蔵
photo©︎cinefil

ただどれだけ言葉を重ねても、いくら画像をお見せしても、残念ながら実物の世界観は到底表現できません。
是非実際に会場に足を運び、その世界観を体感してみて下さい。

作家略歴

1944年、パリ生まれ。写真や身分証明書といった記録資料と衣服や文房具といった日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を制作し、注目を集めるようになる。子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせた「モニュメント」シリーズ(1985年-)や、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、現在まで一貫して、歴史や記憶、死や不在をテーマとした作品を発表している。
2006年、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。

画像: 《モニュメント》の前に立つクリスチャン・ボルタンスキー氏 at 国立国際美術館 photo©︎cinefil

《モニュメント》の前に立つクリスチャン・ボルタンスキー氏
at 国立国際美術館
photo©︎cinefil

関連イベント

《ギャラリー・トーク》
①2月22日(金)18:00~/B3階 展示室
②3月16日(土)14:00~/B3階 展示室
③4月26日(金)18:00~/B3階 展示室
※ 参加無料(要観覧券)
※ 開始30分前から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着90名)

《講演会》
講師)湯沢英彦(明治学院大学文学部フランス文学科教授)
日時)4月6日(土)14:00~/B1階 講堂
※ 参加無料、先着130名、当日10:00から整理券を配布します

クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime
開催概要

会場)国立国際美術館 B3階
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 

会期)2019年2月9日(土)〜 5月6日(月・休)

開館時間)10時〜17時 
※ 金曜・土曜は20時まで(入場は閉館の30分前まで)

休館日)月曜日(ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館)

観覧料)一般900円(600円) 大学生500円(250円)
※( )内は20名以上の団体料金  
※ 高校生以下・18歳未満無料(要証明)
※ 心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)

同チケットで、B2階で同時開催の「コレクション3」もご覧いただけます。

※ 夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜の17:00〜20:00)一般700円 大学生400円

※ 2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して入場無料です。

主催)国立国際美術館、朝日新聞社
後援)在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛)ダイキン工業現代美術振興財団

お問合せ)06-6447-4680(代表)
http://www.nmao.go.jp/

同時開催
コレクション3
見えないもののイメージ

地下2階の展示室では、「死者に捧げる儀式を行うこと」が芸術家の仕事であると発言するクリスチャン・ボルタンスキーの個展に呼応するかたちで、「見えないもの」をキーワードに、 「死者へ」、「作者と」、「天空に」という3つのテーマによるコレクション展を同時開催しています。

「死者へ」

様々な作家たちが「死」にどうやって係わってきたのかを作品を介して紹介

画像: 左:塩田千春《トライ アンド ゴーホーム》1998/2007年 右:塩田千春《トラウマ/日常》2008年 photo©︎cinefil

左:塩田千春《トライ アンド ゴーホーム》1998/2007年
右:塩田千春《トラウマ/日常》2008年
photo©︎cinefil

「作者と」

表現者たちが、作品と格闘する自己を直接的ではない方法によって表した作品で紹介

左:石原友明《UNTITLED(#201)》1999年
右:石原友明《UNTITLED(#195))》1998年
photo©︎cinefil

「天空に」

作家たちの独創的な表現を紹介

左:日高理恵子《葉光》1983年
右:日高理恵子《樹を見上げてⅤ》1991年
photo©︎cinefil

関連イベント

《ギャラリー・トーク》
①3月2日(土) 14:00~/B2階 展示室
②4月13日(土) 14:00~/B2階 展示室
講師:中井康之(国立国際美術館副館長兼学芸課長)
※ 参加無料(要観覧券)、当日13:30から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着90名)

コレクション3
開催概要

会場)国立国際美術館 B2階

会期)2019年2月9日(土)〜 5月6日(月・休)

開館時間)10時〜17時 
※ 金曜・土曜は20時まで(入場は閉館の30分前まで)

休館日)月曜日(ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館)

観覧料)一般 430円(220円) 大学生 130円(70円)
※( )内は20名以上の団体料金
※ 高校生以下・18歳未満・65歳以上無料(要証明)
※ 心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)

同展は同時開催の「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」展の観覧券でご観覧いただけます。

夜間割引料金  (対象時間:金曜日・土曜日の17:00 〜 20:00)一般250円 大学生70円

無料観覧日 )2月24日(日)、3月2日(土)、4月6日(土)、5月4日(土・祝)

※ 2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して入場無料です。

主催)国立国際美術館 
協賛)ダイキン工業現代美術振興財団

cinefil 読者プレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「クリスチャン・ボルタンスキー展」プレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年3月2日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。

抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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