スタートしたcinefilオンライン上映!

cinefilオンライン上映は、東京、大阪を中心とした映画公開で見過ごしてしまった作品。
また、気になっていたものの近くで上映されなかった作品。
今までなかなかインディペンデントの作品を観る機会が少ない方。
そんな皆様へ、期間限定ですが、24時間いつでも、全国どこからでも、未配信の作品を中心に、ラインナップしてオンライン上での公開を考えています。

第一弾ラインナップより、11月30日まで大阪で公開されていた『リバースダイアリー』の初の期間限定配信です。
すでに今作は、海外での評価も高い作品で、練られた脚本が最初は、ラブストーリーと思いきや次から次へと、ストーリーが展開していきます。
“運命のいたずら”がもたらす予測不能のサスペンス・ラヴストーリー。
世界が絶賛した作品です。

今回、webマガジンcinefilではオンライン上映中の4監督に作品に対する質問を投げかけました。

第一回『リバースダイアリー』園田新 監督

画像1: ©CiNEAST

©CiNEAST

●劇場上映はもちろん国内外で多くの映画祭でも上映されていますが、お客さんの反応はどうだったでしょうか?海外と国内で違いましたか?

先日、国内外の映画祭出品が20を超えました。国内よりも海外で高く評価していただけている印象です。海外ではこれまでに作品賞、脚本賞、観客賞など7つの賞をいただきました。ストーリーテリングでみせる作品は欧米の映画や海外ドラマでは主流ですが、邦画、特にインディペンデント映画では少なく感じます。

日本のお客さんの反応も、映画にエンターテインメント性を求める方や、海外ドラマ好きの方などからの評判が特に高いようで、邦画の中では異質な作品だと思います。

国内では、日本映画ぽくない欧米のサスペンス映画のようだという感想をもらう一方で、海外では繊細な感情を紡いだ日本的な人間ドラマだと受け取られました。小説のような特徴的なセリフ回しも、海外では自然に受け入れられているようです。

●この予測不能なストーリーはどのように思いつき、複雑な構成をどのように組み立てていきましたか?どれくらい時間がかかりましたでしょうか?

旅客機のCAの方が勤務シフトを交代したことで不運な事故に遭ってしまったというのをテレビ観たのがきっかけです。人生は「運命のいたずら」や「運命の分岐点」の連続だと思います。たまたまそこにいたから不運な出来事に巻き込まれることもあれば、たまたまそこにいたことで幸運に恵まれる人もいる。誰かにとっての素晴らしい出来事が、誰かにとっての不幸であることもある。一つの出来事を異なる視点から描くことで、事件や人間の多面性とか深い感情を描くことができるのではないかと思いました。
脚本は10年以上書き直し続けていて、大枠のアイデア以外はほとんど原型を留めていないと思います。今回制作するにあたって、全キャラクターの2年間の出来事を時系列に並べて整理し、最終的に今の形になりました。
また、信じていた世界観がひっくり返るような映画が好きなのでそこは意識して作っています。繰り返し出てくるセリフの印象が、出るたびに大きく変化していくのを楽しんでもらいたいと思ってます。

●小川ゲンさんと新井郁さんをキャスティングした理由を教えて下さい。

ふたりともこちらからお声掛けして、オーディションに参加してもらいました。小川さんは演技している時と普段との差がないくらいリラックスして演じられていたのがとても印象的で、キャラクターが抱える内面的な葛藤を表に出すのではなく、自然と感じさせてくれる佇まいに惹かれました。
新井さんには、ヒロインのエキセントリックな部分が非現実的ではなく、あり得るかもしれないと思ってもらえるキャラクター性を感じました。悲劇的な出来事を描きながらも重たい印象にはしたくなかったので、ふたりが持ち合わせた、ある種の”微笑ましさ”が作品全体の印象に寄与すると思いました。

●撮影にトーマス・シュナイトさんを起用され、作品に絶大な効果を与えていますが、その経緯を教えて下さい。

トムとは学生時代、ニューヨークに映画留学している時に出会いました。卒業作品で撮影監督を募集した際に応募してくれたんです。今ではハリウッド映画や海外ドラマも手がけていますが、その頃はまだ撮影助手として活動していて、撮影監督としての作品を増やそうとしている段階で、学生映画にも協力してくました。

彼とは言葉を超えた感覚を共有していると感じていて、私の長編映画一作目「Wiz/Out」を撮影する際には、既存の日本映画とは違う印象にしたかったので、来日してもらいました。

彼のフィルターを通すことで、普段見ている日本の街並みが全然違う風景として切り取られます。ビジュアル化する際のアプローチ方法やステージングと一体となったカメラワーク、アイデアの豊富さなどなど、いずれも過去に共作した日本のカメラマンとは全く違うんです。「リバースダイアリー」を日本の恋愛映画とは異なる雰囲気にしたかったのと、映像クオリティの面でも違うレベルに押し上げてくれると思い、依頼しました。

本作は全編手持ち撮影なのですが、彼は日本語が分からないので、感覚を研ぎ澄まして俳優の息遣いを捉えようとしていたのが印象的でした。

画像2: ©CiNEAST

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●音楽監督には末廣健一郎さんを起用されていますが、その経緯を教えて下さい。

末廣さんとは私の長編第2作目「ネムリバ」という作品でプロデューサーから紹介され、劇伴を務めていただきました。その際に言葉では説明しきれない感覚的な部分を共有できる作曲家さんだという印象を持ち、いつかもう一度一緒に作品づくりをしたいと思っておりました。今回は末廣さんの他に、釜山国際映画祭で知り合った韓国のアーティスト2名にも2、3曲ずつ提供していただいています。サウンドトラックとしての統一感を保ちながらも、それぞれの得意とする曲調を任せることができたので、良いものに仕上がったと思います。

●映画以外にも様々な映像を手がけていますが、監督にとっての映画とは?

テレビ番組やCM、ミュージックビデオ、ゲームのカットシーンなどの映像演出もしてきましたが、映画を作る行為は全く別の意味を持っています。

映画は私にとって「呼吸」のようなものです。日々様々なことに刺激を受け、色々な思考が自分の中に蓄積されていきます。それはどこかで吐き出す必要があります。映画作りを知ってから、そういう生理現象にも似た、表現欲求があるんです。なので映画はいつか作りたいというようなものではなく、作らずにはいられないものなのです。

●影響を受けたものを教えてください。文学、映画、その他ジャンルは問いません。

漫画:週刊少年ジャンプ(ドラゴンボール、スラムダンク、ジョジョの奇妙な冒険)、ジブリアニメ(風の谷のナウシカ、天空の城ラピュタ)

ゲーム:ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、ゼルダの伝説

映画監督:ウォン・カーウァイ、ポール・トーマス・アンダーソン、リュック・ベッソン、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ダニー・ボイル、クリストファー・ノーラン、レオス・カラックス、ヴィム・ヴェンダース

海外ドラマ:LOST、HOMELAND、ミレニアム、ブリッジ

小説:村上春樹、伊坂幸太郎

音楽&MV:U2、Coldplay、ビョーク、ミスチル、スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリー、クリス・カニンガム

●ユニークな宣伝手法を取られていましたが、その辺の話をお聞かせ下さい。

配給・宣伝に興味がある一般の方を集めたワークショップを開催し、その分野のプロの方のアドバイスを受けながら宣伝をしました。実際に劇場公開される作品を題材に、実務を通して学ぶ講座というのは新しい試みだったと思います。一般の方の視点やアイデアを取り入れることで、作品を客観視しつつ、配給や宣伝のノウハウを自分自身でも吸収することを目的にしています。

これまでの映画は様々な専門家が分業することが普通でしたが、今ではテクノロジーの進化でユーチューバーのように個人でコンテンツを制作、発信して、そこに広告を載せて収益を得る小さな放送局のような役割を果たすことも可能になりました。映画においても、作家自身が小さな映画スタジオのような役割を果たせる時代になったと感じています。今後はプロデューサータイプの映画監督がどんどん出てくると思っていて、誰かにプロデュースされるのを待っている作家は作品を発表できない時代が来るかもしれません。次回作を幹事会社としてトータルプロデュースするために、夏に「CiNEAST」という会社を立ち上げました。そして配給、宣伝のノウハウも吸収しておきたいと考え、このような実験的な試みを行いました。

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●作品の重要な要素である「偶然」と「必然」。監督は登場人物たちの「運命」をどのように捉えていますか?

「運命」というのは、人と人との繋がりや行き場のない強い想いが引き起こす偶然ではないでしょうか。拒絶すればするほど求めてしまう。求めるがゆえに離れていく。どうしようもない欲求が人と人とを繋ぎ、未知の化学反応を起こすような気がします。

●監督が一番共感できる作中のキャラクターは誰でしょうか?

主人公が小説家なので、多分彼に自分自身の映画作家としての境遇を投影したかったのだと思います。でも、結果的にどのキャラクターも愛おしく感じていて一人に限定できません。

●現在、多くの若い人が映画を撮り始めています。園田監督も制作プロダクションを立ち上げましたが、監督が感じているインディペンデントにおける映画制作、または映画業界の課題点を教えて下さい。

インターネットや携帯電話などの技術の進化や撮影機材の低価格化によって、誰でも映画づくりができる時代になりました。制作面では商業映画とインディペンデント映画の境界はなくなりつつある気がします。しかしながら、興行面ではミニシアターが姿を消し、シネコンに圧倒されています。多様な映画が生まれる下地はあるのに、映画の多様性は失われつつあると感じます。どこの映画祭でも同じような作品が集まり、どこの映画館でも似たような作品が上映されている印象です。

僕ら作り手は映画を撮ること以上に、映画を観てもらうことにもっと目を向ける必要があると思います。ただ映画を作って、映画祭を回って終わりではなくて、劇場やDVD、配信などあらゆる手段で届ける義務があると思っています。

●次回作の計画などはございますか?もしくは、撮りたいテーマとかあったら教えてください。

10年ほど前から構想しながらも、何度も壁にぶつかって実現できなかった企画があるのですが、最近ようやく突破口が見えてきました。
「リバースダイアリー」よりもストレートに人の感情をえぐるようなシンプルな映画を準備中です。映像+音楽+俳優の芝居が一体となって画面から感情が溢れ出るような作品にします。

画像4: ©CiNEAST

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●今回の期間限定オンライン上映についてコメントをお願いします。

このたびは「cinefilオンライン上映」の記念すべき第一弾ラインナップに、拙作「リバースダイアリー」を選出いただきありがとうございます。

本作は全国公開を目指して、これまで東京、名古屋、大阪と劇場公開してきました。全国の方に観ていただくには、まだまだ公開劇場を増やさないといけない状況でした。

通常、配信というとDVD化の後に行うことが多いと思いますが、今回は青山シアターという、全国からのアクセス抜群の劇場で一ヶ月間だけ公開するイメージで捉えています。「リバースダイアリー」が目標としていた全国公開を果たす絶好の機会だと考えました。

ミニシアター系映画やインディペンデント映画が好きな方はもちろん、ハリウッド映画や海外ドラマ好きの方にも楽しんでもらえる作品だと思いますので、ぜひこの機会にご覧ください!

園田新 / SHIN SONODA 映画作家
大学在学中にニューヨークに留学し、映画づくりを学ぶ。テレビ番組のディレ クターを経て、2007年、初⻑編作品「Wiz/Out」がユーロスペースにて公 開、スマッシュヒットを記録。函館港イルミナシオン映画祭・シナリオ大賞に て自身の⻑編映画用脚本が2作品連続受賞。(2009年「記憶代理人」審査員奨 励賞、2011年「リアルファミリー」グランプリ受賞)2013年、釜山国際映画 祭が主催するアジアの新進映画作家支援プログラム・AFA(Asian Film Academy)の監督として選抜。2017年、「リバースダイアリー」を製作。同 作は現在までに国内外20を超える映画祭に招待され、最優秀作品賞、最優秀 脚本賞を含む10の賞を獲得。

「リバースダイアリー」予告編

画像1: 「リバースダイアリー」予告編 / "The Reverse Diaries" Trailer vimeo.com

「リバースダイアリー」予告編 / "The Reverse Diaries" Trailer

vimeo.com

【STORY】

運命を”信じた”彼と、運命を”演じた”彼女を、ある悲劇が結びつけるー

小説家を志すもゴーストライターをしている白石理人が、少し風変わりな女優 志望の女性、本田沙紀と出会う。白石は彼女の日記から、その出会いが偶然で はなかったことを知る。ある飛行機事故によって結び付けられた2人はやが て、互いに影響を与え合いながら、偽りなき自分と向き合い始める......。

製作・脚本・監督・編集:園田 新
出演:小川ゲン、新井郁、小野まりえ、赤染萌、平吹正名、綱島恵里香
共同プロデューサー:小島英雄
撮影監督:トーマス・シュナイト
音楽監督:末 廣健一郎 音楽:KOKOSA、SarahFly
製作・配給・宣伝:CiNEAST
宣伝協力:ブラウニー
2017年製作 / 99分 / 4K / シネマスコープ
公式サイト: https://www.cineast.jp/reversediaries/

©CiNEAST

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