20 世紀の世界文学を揺るがしたムーヴメント<ヌーヴォー・ロマン(新しい小説)>の代表的 作家として知られる、アラン・ロブ=グリエの幻の映画監督作品を集めた特集上映「アラン・ロブ=グリ エ レトロスペクティブ」を、11 月 23 日(金・祝)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順 次開催いたします。つきましては、各界の著名人から推薦コメントが到着、そして、フランスの名俳優た ち総出演の場面写真が解禁いたしました。

各界の著名人から推薦コメント

(敬称略・順不同)

誰かが「私は嘘をつく」といったら、彼または彼女のいうことはすでに真偽を超えている。ロブ=グリエの映画の面白さは、あ くまでそのとらえどころのなさにある。しかも、その画面が曖昧とはとても思えぬほど鮮明なところに、つきぬ魅惑が脈うっている。
ー蓮實重彦(映画評論家)

何に欲情し、何に永遠の断絶を感じるのか...ロブ=グリエに触れたとき、いつも自分のいる位相が激しく揺らぐ。その快楽 の為に、独りで黙って本を読み、映画を観る。それに勝る神秘体験は、残念ながらこの世界にはない。
ー中原昌也(ミュージシャン/作家)

この回顧展によって、ついにアラン・ロブ=グリエは、驚異的な映画作家としての全貌をあらわにするだろう。 それは、前衛・過激主義・アヴァンギャルドと、幻想・唯美主義・マニエリスムとを直結するという、世にも独創的な芸術家 の姿である。
その想像世界は、ブニュエルやフェリーニのそれに匹敵する外連味をもって輝いている。
ー中条省平(映画評論家)

ロブ=グリエ映画は、『快楽の漸進的横滑り』に<漸進的(英訳でプログレッシブ)>を象徴的に組み込んだように、徹頭徹 尾<プログレ>である。ロックのプログレではなく、映画のプログレ。また、SM
のロブ=グレ、失礼プログレでもある。自分でな にを言ってるかわからないが(消しゴムの必要)、まあ、当たらず遠いのがロブ=グリエだ(嘘)。
ー滝本誠(美術・映画・ミステリ評論家)

日本人の映画鑑賞能力と、アラン・ロブ=グリエの作品は、かなり相性が悪い。理解できない=難解と言っているのではな い。フランス文化の大半を上手に旨く喰ってきた日本人に、「喰えねえフランス」という側面がまだまだあることを、ロブ=グ リエの作品群は異様なまでの真摯な自然体で伝え続けている。
ー菊地成孔(音楽家/著述家/映画評論)

その昔、ロブ=グリエの長篇小説『覗く人』をフーフー言いながら読んだ私は、彼の映画も、スゴいけど退屈な実験映画な のではないかと尻込みしていた。ところが、『ヨーロッパ横断特急』を見て驚いた。面白い!メタフィクションとは、鑑賞者も 制作者側に巻き込んでゆく、今っぽいインタラクティヴな手法なのだと再認識。まずはこれから。
ー平野啓一郎(作家)

アラン・ロブ=グリエの映画の中で主演女優はささやく。「愛は滑り落ちる。」と。 自由すぎるロブ=グリエの世界では、愛もセックスも男も女も、そして映像の表現すらも、自由奔放に滑り落ちる宿命の中 にある。 彼の映画からきこえてくる悲鳴とささやきは、それがたとえ崖の上であろうと、恋人たちのよだれだらけのベッドの上であろう と、滑り落ちてゆく快楽に全身で包まれているのだ。
ー園子温(映画監督)

どこかあやしげな第七芸術、つかみどころのない総合芸術としての映画は、ロブ=グリエにとってはコンセプチュアル・アート よりも工芸品に近いなにからしい。だからここでは、意味を探してきて作品を理解しようとする真似は避けた方が良いようだ。 むしろそのかたちや色を愛でているうちに、お馴染みの映画に代わる別の「映画」が立ちあらわれるかもしれない。
ー 遠山純生(映画評論家)

ロブ=グリエは選択しない。このショットもあのショットも、撮って、たんに並べてしまう。最初のうち、頼まれてもいないのに私 たちはそこからひとつの「筋」をひねり出そうとするかもしれない。しかし彼の映画には「本当と嘘」があるのではなく、「嘘と 嘘」だけがあるのだ。それらは重なり、すれ違いながら一個の輪郭を描く。「筋」ではない一貫性。そこに賭けられた「本当」 こそが、彼を映画に向かわせたのではないだろうか。
ー福尾匠(批評家・哲学研究者)

アラン・ロブ=グリエはアマチュア映画作家である。その言葉の意味する最良の意味において。彼が望むのは自らのファン タジーをスクリーンに投影することであるが、そのために必要な映画の形式を彼は知らない。あるいは暴力的に無視する。 結果として表れるのは、彼の夢想によって揺るがされた映画であり、映画によって奇形化された奇形的な彼の夢である。 両者のあわいに生じるものを私たちは官能と呼ぶが、それは均質な情報とむき出しのポルノグラフィに埋め尽くされた現代 を生きる私たちにとって、きわめて貴重な体験をもたらすものだろう。
ー大寺眞輔(映画評論家)

伝統的な小説形式を乗りこえ、文章表現の極北を目指したヌーヴォー・ロマンの冒険王ロブ=グリエ。「難解」と喧伝され るばかりのこの天才が、実はミステリーやSFとも親和性の高い資質の持ち主だということを教えてくれるのが、今回の上映6
作品だ。映画館を出たその足で、あなたが手に取るべきは、オイディプス神話を下敷きにした推理小説のパスティーシ ュ『消しゴム』(光文社古典新訳文庫)。映像から活字へ、活字から映像へ。一生を逸脱と変奏に捧げたロブ=グリエの仕 事と、この機会に出合ってほしい。
ー豊崎 由美(書評家)

え、なんだこの映画?可愛いフランス人のオシャレ映画なだけじゃないのかよ!!あまりに面白くてお腹痛くなるくらい笑った、綺麗な女優イケメンの俳優ばかり、ここは一体どこだろう、いま何が起きている んだろう。誰も教えてくれないが、それすら愛情に感じる。 この映画観なくてもいいかも、と思った瞬間もあった。でも私は一生懸命見た。彼のかけらを集めるために6作品一気に見た。止まらなかった。
ー柳英里紗(女優)

自分がいる場所・時間の軸が歪みだし、全てが空っぽの遊戯のような世界に分け入っていく不思議さ。画面を見ていたは ずが知らぬ間にその中に取り込まれていることに気がついたその途端、その自分をまた見ている...幾重にも折り重ねられた 多層世界の中で麻痺にも似た感覚を得ながら尚思考は冴えていき、既にあったイマージュが次々と更新されていく。本来 眼前に立ち現われ現在形しかないはずの映画なのに、現実も虚構もないまぜにする、ある意味最も文学的なのがアラン・ ロブ=グリエの映画だ。
ー羽田野直子(脚本家)

1953年に長編小説『消しゴム』を発表したアラン・ロブ=グリエは、60年にアラン・レネ監督『去年 マリエンバートで』(第22回ヴェネツィア映画祭 金獅子賞)のオリジナル脚本の執筆を契機に映画界にも参入し、63年に『不滅の女』で映画監督デビュー。
倒錯的なエロティシズムを描き出す諸作で、作品を発表するたび大きな注目を集めました。

フランス芸術界でもっとも誉れ高いアカデミー・フランセーズ の会員である一方、つくった映画は輸出禁止になるという、文学・映画界が誇る<偉大な問題児>たるロブ=グリエ。今回のレトロスペクティブでは、80年代に日本劇場公開された『囚われの美女』(83)の ほか、今回劇場初公開となる『不滅の女』(63)、『ヨーロッパ横断特急』(66)、『嘘をつく男』(67)、『エデン、その後』(70)、『快楽の漸進的横滑り』(74)の6作品をラインナップしました。

【アラン・ロブ=グリエ】
1922年8月18日、フランス、ブレストに生まれる。工場での強制労働、政府発行の経済誌の編集、人口授精センターなど様々な職業を経て、農業技師として各国のフラ ンスの植民地に滞在。51年、フランスに帰国する船中で『消しゴム』(※1)を書き始め、53年にエディシオン・ド・ミニュイ社より刊行。ロラン・バルト、ジョルジュ・バ タイユに絶賛され、新たな文学運動<ヌーヴォー・ロマン>の旗手とし て一躍人気作家になると、続けざまに『覗く人』(55、※2)、『嫉妬』(56)、『迷路の中で』(59、※3)を発表。60年、アラン・レネ監督の勧めで『去年マリエンバートで』オリジナル脚本を執筆、前衛映画の金字塔として今なお高い評価を得る。そのとき採用されなかった脚 本をもとに、63年『不滅の女』を自ら制作、映画監督としてもデビューする。同年、過去の小説を痛烈に批判した批評集『新しい小説のために』を発表、理論的にも<ヌー ヴォー・ロマン>の代表格となり、その後も精力的に、執筆・映画製作を行う。1961年には、大映製作、市川崑監督の日仏合作映画『涙なきフランス人』の脚本のオファー を受け執筆、来日するも製作は頓挫し、幻の映画となった。2004年、アカデミー・フランセーズの会員に選出される。2008年2月18日、心臓発作で死去。享年85。

※1)『消しゴム』...光文社古典新訳文庫より発売中。中条省平訳、2013年刊。 ※2)『覗く人』...講談社文芸文庫より発売中。望月芳郎訳、1999年刊。※3)『迷路の中で』...講談社文芸文庫より発売中。平岡篤頼訳、1999年刊。

フランスの名俳優たち総出演の場面写真が解禁

『快楽の漸進的横滑り』より、『フレンズ~ポールとミシェル』(71)のヒロイン役で一躍日本でも人気となったアニセー・アルヴィナ、1972年の映画デビューからまだ間もない当時20歳前後のイザベル・ユペール、そして数ある出演作の中でも最高傑作との呼び声高い『ヨーロッパ横断特急』からジャン=ルイ・トランティニャン、同じく『ヨーロッパ横断特急』から 『アントワーヌとコレット/二十歳の恋』(フランソワ・トリュフォー監督)、『さよならの微笑』のマリー=フランス・ピジェなど、フランスを 代表する俳優たちが出演した作品の場面写真が解禁しました。

『不滅の女』(63)
*日本劇場初公開

イスタンブールに休暇でやってきた男は、白い車を乗り回す謎の美女と出会う。“夢の国”トルコでのアバンチュールを楽しむが...。従来の「劇映画」 の概念を大きく逸脱した過激な語り口が世の驚愕と憤怒を同時に招来した、いまだ「新しさ」に満ちた記念すべき監督デビュー作。

出演:フランソワーズ・ブリオン、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ、カトリーヌ・ロブ=グリエ
1963年/フランス=イタリア=トルコ/モノクロ/スタンダード/101分
原題:L’IMMORTELLE
(c)1963 IMEC

画像: (c)1963 IMEC

(c)1963 IMEC

『ヨーロッパ横断特急』(66)
*日本劇場初公開

パリからアントワープへと麻薬を運ぶ男の波乱万丈な道中を多重なメタで構築し、“ヨーロピアン・アバンギャルドの最重要作品”と絶賛され、公開時 ヒットを記録。スリラー映画の枠組みを借りてシリアスとコミカル、嘘と真実、合理と非合理の境界を軽やかに行き来する快作。

出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、マリー=フランス・ピジェ、クリスチャン・バルビエール
1966年/フランス=ベルギー/モノクロ/ヴィスタ/95分
原題:TRANS-EUROP-EXPRESS (c)1966 IMEC

画像: (c)1966 IMEC

(c)1966 IMEC

『嘘をつく男』(68)
*日本劇場初公開

ナチス傀儡政権下のスロバキア共和国。戦乱にあけくれる小さな村に、レジスタンスの英雄ジャンの親友だと名乗る男が現れる...。ボルヘスの短編「裏 切り者と英雄のテーマ」を下敷きに、L・ピランデッロへのオマージュを込めつつ、「物語」の地平のかなたへ観るもの全てを誘う。

出演:ジャン=ルイ・トランティニヤン
1968年/フランス=イタリア=チェコスロバキア/モノクロ/スタンダード/95分
原題:L’HOMME QUI MENT
(c)1968 IMEC

画像: (c)1968 IMEC

(c)1968 IMEC

『エデン、その後』(70)
*日本劇場初公開

カフェ・エデンにたむろするパリの学生たち。倦怠と退廃、リビドーが充満するコミュニティに、突如現れた男が話す、知らない遠い国の話...。豪奢に 浪費される極彩色、儀式のような SM 遊戯。“『不思議の国のアリス』と『O 嬢の物語』の恐るべき邂逅“と評された初のカラー作品。

出演:カトリーヌ・ジュールダン(『あの胸にもう一度』)、ピエール・ジメール、リシャール・ルドウィック
1970年/フランス=チェコスロヴァキア=チュニジア/カラー/ヴィスタ/98分
原題:L'EDEN ET APRES (c)1970 IMEC

画像: (c)1970 IMEC

(c)1970 IMEC

『快楽の漸進的横滑り』(74)
*日本劇場初公開

ルームメイト殺しの容疑で逮捕された美しい女アリス。心臓にハサミが突き刺さっている被害者の体には、書きかけの聖女の殉教の絵。一体なにが...? モラルも常識も超越したセンセーショナルな内容により、各国で上映禁止、フィルムが焼かれる事件まで発生した問題作。

出演:アニセ―・アルヴィナ、ジャン=ルイ・トランティニヤン、マイケル・ロンズダール、イザベル・ユペール
1974年/フランス/カラー/ヴィスタ/106分
原題:GLISSEMENTS PROGRESSIFS DU PLAISIR (c)1974 IMEC

画像: (c)1974 IMEC

(c)1974 IMEC

『囚われの美女』(83)

場末のナイト・クラブ。なまめかしく踊るブロンドの美女を、男が見つめている。男の名はヴァルテル。地下組織で情報の運び屋をしている。シュルレ アリスム画家ルネ・マグリットの多数の絵画をモチーフに、幻想と官能が交錯する不条理サスペンス。日本で唯一の劇場公開作。

出演:ダニエル・メグイシュ、ガブリエル・ラズール、シリエル・クレール(『婚約者の友人』)、ダニエル・エミリフォーク
1983年/フランス/カラー/ヴィスタ/85分原題:LA BELLE CAPTIVE (c)1983 ARGOS FILMS

画像: (c)1983 ARGOS FILMS

(c)1983 ARGOS FILMS

そして公開記念として、11 月 21 日(水)20 時より本屋B&Bでのトークイベントも決定。ゲストには、菊地成孔(音楽家/著述家/映 画評論)と滝本誠(美術・映画・ミステリ評論家)が登壇します。
チケットは B&B の公式サイト(http://bookandbeer.com/event/20181121/)で好評発売中。

「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」予告

画像: 蓮實重彦氏のコメント入り「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」予告 youtu.be

蓮實重彦氏のコメント入り「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」予告

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11月23日(金・祝)よりシアタ ー・イメージフォーラム他全国順次開催

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